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さてさて、一度は諦めかけたローズガーデン計画。再始動です! 目指せイングリッシュガーデン!
結局無理やり納得して、バラが咲いた事に素直に喜ぶことにした。
「よ~し。まずはアーチよね。ローズアーチって素敵よね~」
鼻歌を歌いながら森へ入り、アーチの材料となりそうな枝や蔓を拾いアイテムボックスへどんどん入れていく。そして、持ち帰った枝と蔓でアーチ状になるように編んでいく。
「本当は金属で出来たアーチがあれば楽なんだけど、しょうがないよね」
何とか不恰好ながらもアーチが完成した。所々枝がピョンピョン飛び跳ねているが、ここにツル性のバラを這わせれば隠れるだろう。
「ふふふっ、手作り感満載! あとはバラを這わせるだけね」
蒔いたローズガーデンの種セットの苗の中からツル性のバラをチョイスする。
「もう花を付けてる苗がある。迷うな~、やっぱピンクかな~、このオレンジも綺麗ね~」
散々悩んだ結果、鮮やかなピンクのバラにした。
バラをアーチの根元に植えて、あとは成長を見ながらアーチに誘引していく。
バラはアサガオのように自分で巻きついてくれないから成長を見ながらアーチに這わせてあげなければならない。
今日はここまで、と茜色に染まった西の空に気付き、ヒリヒリした感覚に両手を見ると手のひらが傷だらけになっていた。
硬い枝を曲げたりしたからその時に傷が付いたのだろう。「軍手とか園芸用手袋があれば良かったな」なんて考えながらアイテムボックスからアロエ軟膏を取り出し塗りこんだ。今度村に行った時に手袋がないかソニアさんに相談してみよ。
「あなた達も明日植えてあげるからね」
ほかの苗にも声をかけ家へ戻ったのだった。
翌朝、朝食を済ませ外へ出てみると衝撃の景色が。
「あなた達空気読みすぎでしょ」
ローズアーチのバラ達は自らアーチに巻き付き綺麗な花を咲かせていた。感激の前に呆れてしまう。ちなみに他のバラはまだ苗の状態。
今日は他の苗を植える予定なので、家へ戻り準備をしようとして、ふと忘れかけていた両手の傷を見ると……
「治ってるし。どんだけ優秀よこのアロエ軟膏」
まぁ、綺麗さっぱり傷が消えていたわけで。
これは量産決定ね。期待以上のアロエ軟膏の効果に胸をふくらませた。
「きっと村のみんなが喜ぶ」
そして、今度こそ準備をして外へ出た。
さて、どんな配置にしようかとバラの苗を前にして想像をふくらませた。ここにあるバラは色も形も様々で、「赤」、「黄色」、「ピンク」、「白」、「オレンジ」、「紫」、そして、「青」。単色だけではなく、ピンクグラデーションや青と白のツートンカラーや絞り染めのようなタイダイ柄など見たことがない色柄も沢山あった。
配置を考えながらバラの苗を持ち地面に置いていく。
頭を悩ませながら、時折配置換えをし思い描いた通りの配置にすることが出来た。
「よしっ。こんな感じでいいんじゃないかな?」
地面に据え置いたバラたちを眺め、満足に頷いた。
あとはひたすら植えていくだけだ。
黙々とバラを植える事約二時間。夢中になって植えたおかげでほぼ全てのバラを植えることが出来た。
只今、カバードポーチでティータイム中。今日はミントティーを楽しむ。
ミントティーを飲みながら植えたばかりのバラ達を遠目に眺め「明日の朝が怖いわね」と、苦笑いした。
ローズアーチの朝の状態を考えると、きっと明日の朝には急成長を遂げたバラ達が私を迎えてくれるだろう。
「あとの問題はあなたよね」
ため息を吐きながらティーセットのとなりに置いたバラの苗を見る。何度見てもおかしな苗、何がおかしいかと言うと。
ウニョン、ウニョン。ウネウネウネ。
目の錯覚ではなく、本当に動いているのだ。左右に体を揺らしたり、枝から生える葉をヒラヒラ動かしたりと、やりたい放題。
「どうしよう、これ」
私は頭を悩ませる。
「あなたどうして欲しい?」
思わず苦笑いしながらバラに話しかけてしまうほど悩んでいた。すると、バラは体を大きく反らしてどこかへ行きたい様子。
「うそ~? 言ってる事分かるの? 意思があるって事?」
そう言うと、バラは全身の葉をザワザワと動かし肯定しているようだった。
……ま、いっか。ここまで来ると何も驚きませんよ。
バラの苗を持って、体を伸ばしている方へ向かう。すると、そこは風通しが良く日当たり良好な家の前。
「ここがいいの?」
そう聞くと、バラはまた葉をザワザワと動かした。
言われるがままに、土を耕し森から採ってきた腐葉土を混ぜフカフカにし、バラの苗を植えた。
植えられたバラは地面に根を下ろした事で落ち着いたのか、
「あれ? 動かなくなった。」
ツンツンと優しく突ついてみても動かない。なんだったんだろう? と首を傾げるも、分かる訳が無いのですぐさま諦めた。
「綺麗な花を咲かせてね」
そう言い、水魔法でバラに水やりをし、
「みんなまた明日ね」と庭に声をかけ、今日の作業を終えた。
朝、心地よい日差しと小鳥のさえずりで目覚め、体を起こす。
「あぁ、体がミシミシする」
昨日張り切ってバラを植え、本日筋肉痛です。
「シ、シップ欲しいわ~。今度作っておこう。取り敢えず鎮痛効果のあるハーブを湯船に入れて入浴しよう」
一階へ降り、クローブ、エルダーフラワーを乾燥させた物を布で包んで軽く閉じ、バスタブに浮かべる。入浴剤としては良い香りではないが、筋肉痛には効きそうだ。
ゆっくりと体を沈め、長い吐息を吐く。
「あ~気持ちいい~」
筋肉痛が少しでもマシになるようにゆっくりと入浴し、体を温めた。
お風呂から上がり、体は随分と良くなっていた。
「良かった。今日は村へ行く予定だったから筋肉痛のまま一時間半は辛いもんね」
そう、今日はあの日から一週間。そろそろ村へ行き、食料調達へ行く日である。
と、その前に外の様子を窺う。
「鮮やか~!」
窓の外から見ただけで分かる。外は色とりどりのバラで彩られていた。案の定、バラ達は満開になったようだ。
村へ出かける支度をすると、外へ出てバラ達の元へ。
まずは、昨日ウネウネ動いていたあのバラだ。恐る恐るバラの元へ向かうと、そこには真紅の真っ赤なバラが咲いていた。
「うわ~!! 綺麗に咲いたのね。あなたとても綺麗よ!」
そう声をかけると、バラは優雅にゆらりと揺れる。やっぱり動くのね。香りは強くないが、その色彩の鮮やかさが見事なバラだ。何でこのバラだけが意志を持っているかは謎だが、綺麗だから良しとしよう。
次にローズガーデンに向かい、ローズアーチをくぐると色とりどりに咲き誇るバラ達に迎えられた。
「いい香り!!」
こちらのバラ達は香り豊かなバラが多いようだ。
ローズガーデンの中央は広く場所を取ってある。
「ここに東屋建てれたら素敵だろうな」
と、いつか神様の元でお茶をした東屋を思い浮かべる。いつかあんな東屋を建てれたら……と思い描く。きっといつか素敵な東屋を建てようと心に決めたのであった。
「さて、出発しますか」
家を振り向くと、真紅のバラが枝をゆらゆら振っているように見え可笑しかったが、私も手を振り返し家を出発した。
一度来た道なので、迷いもせずあっという間に村へと着いた。
村の入口には門番の男性がいて、こちらに気が付くと手顔で手を振ってきた。
「お久しぶりです。あの後大丈夫でしたか?」
「やあ、お嬢さん。この間はみっともない所を見せてしまったね。門番の名が泣くよ。言いそびれてたけど、助けてくれてありがとうな!」
「いえ、無事で良かったです。あの、これからこの村に時々お邪魔させてもらうことにしたので私の事はリリーとお呼びください」
「村長から聞いてるよ。よろしくな、リリー。俺の事はバルテロと呼んでくれ」
「はい。こちらこそよろしくお願いします。バルテロさん」
簡単に挨拶を済ませ村へ入り、まずはソニアさんの【木漏れ日亭】へ向かう。
「ソニアさ~ん、いますか~?」
そう声をかけると、奥から「リリーかい!? ちょっ待ってな!」と声がした。
しばらくフロントで待っていると、ふわりとラベンダーの香りが。よく見ると、フロントにはラベンダーのポプリが置いてあった。
こうして自分の手作りの物を使って貰えてると嬉しくなる。
「おまたせ。一週間ぶりだねリリー。そろそろ来る頃だと思っていたよ」
「はい。お久しぶりですソニアさん」
にこやかに迎えてくれるソニアさんに顔が綻ぶ。
「食堂でお茶を飲みながら話をしよう」
ソニアさんはティーセットを持ち食堂へ向かう。
「あ、ソニアさん。お茶にするならこっちの新しいハーブティー試してみませんか?」
アイテムボックスから新作の【ワイルドストロベリーティー】を取り出しソニアさんに渡す。
「新作かい? 今度はどんなお茶だろうね」
「今日はワイルドストロベリーティーとブレンドティーの二種類です。ブレンドティーは、ワイルドストロベリーとカモミールをブレンドしたものです。ちなみにこれがワイルドストロベリーです」
アイテムボックスからワイルドストロベリーを植えた小さな鉢植えを取り出す。
「野いちごのようだね。このいちごの実をハーブティーに入れたのかい?」
「えぇ。ブレンドティーの方に乾燥させた実を入れました。それと、こっちの茶葉はリーフだけを使ったリーフティーです。これ、意外な味がするんですよ。私が入れてみますね」
ソニアさんからティーセットを借りて二種類のハーブティーを入れる。
「まずはこっちのリーフティーをどうぞ」
ソニアさんは匂いをかいでから一口飲んだ。
「これ、カモミールティーとは違う香ばしい香りがするね。食事の時に出してもいいかもしれないね」
そう。これ、なんの味に似てるかと言うと、日本の番茶。深入りすればほうじ茶のような味わいになる。
「でしょう? 私はこのほっとする味が好きです。次は、カモミールティーにワイルドストロベリーの実を入れたブレンドティーですね。これもジャムにしようかと思ったんですが、数が取れなかったのでカモミールティーにブレンドしてみたんです」
そう言って、新しいお茶を入れて蒸らす。
「どうぞ。フルーティーな香りを楽しんでください」
ソニアさんはまた匂いをかいで一口飲む。
「本当にフルーティーな香りがするね。ただのカモミールティーとは一味違った美味しさだよ」
「気に入ってもらえてよかったです。このワイルドストロベリー、幸運のワイルドストロベリーと呼ばれていて縁起のいいものなんですよ」
「何だかいい事が起こりそうだね。あんたのハーブティー、村のみんなにも旅人にも大好評でね、どこで仕入れたのかって殺到したんだよ。村のみんなにはリリーの手作りだと教えたけど、旅人には秘密さ」
いたずらっぽくウインクをする。
「ふふっ。喜んでもらえて嬉しいです。あ、そうだ。ソニアさんに渡すものが。貰ってください」
アイテムボックスからバラの花を取り出す。
「これ、うちの庭で咲いた新作の花です。宿に飾ってください」
バラの花束を贈るなんて意味深だけど、今回は何も考えず二十本ほど持ってきた。
「ポプリとも違ういい香りだね。生花でここまで香りが強いとは。それにこの色、こんな綺麗な花見たことないよ。ホントに貰っていいのかい」
「ええ。この間の魔女疑惑のお礼です」
そう言うと、ソニアさんは「あっ!」と何かを思い出したようだった。
「リリー、その事なんだけどね。実は……」
ソニアさんがそう言葉を続けようとした時、宿の扉が開いた。
「魔女さま~!」
「魔女さまこんにちは~!」
元気な声と共に五人の女の子たちが入ってきた。村長の孫ちゃんズだ。
「……は? ……魔女様?」
どうも私を見て言っているようだった。
結局無理やり納得して、バラが咲いた事に素直に喜ぶことにした。
「よ~し。まずはアーチよね。ローズアーチって素敵よね~」
鼻歌を歌いながら森へ入り、アーチの材料となりそうな枝や蔓を拾いアイテムボックスへどんどん入れていく。そして、持ち帰った枝と蔓でアーチ状になるように編んでいく。
「本当は金属で出来たアーチがあれば楽なんだけど、しょうがないよね」
何とか不恰好ながらもアーチが完成した。所々枝がピョンピョン飛び跳ねているが、ここにツル性のバラを這わせれば隠れるだろう。
「ふふふっ、手作り感満載! あとはバラを這わせるだけね」
蒔いたローズガーデンの種セットの苗の中からツル性のバラをチョイスする。
「もう花を付けてる苗がある。迷うな~、やっぱピンクかな~、このオレンジも綺麗ね~」
散々悩んだ結果、鮮やかなピンクのバラにした。
バラをアーチの根元に植えて、あとは成長を見ながらアーチに誘引していく。
バラはアサガオのように自分で巻きついてくれないから成長を見ながらアーチに這わせてあげなければならない。
今日はここまで、と茜色に染まった西の空に気付き、ヒリヒリした感覚に両手を見ると手のひらが傷だらけになっていた。
硬い枝を曲げたりしたからその時に傷が付いたのだろう。「軍手とか園芸用手袋があれば良かったな」なんて考えながらアイテムボックスからアロエ軟膏を取り出し塗りこんだ。今度村に行った時に手袋がないかソニアさんに相談してみよ。
「あなた達も明日植えてあげるからね」
ほかの苗にも声をかけ家へ戻ったのだった。
翌朝、朝食を済ませ外へ出てみると衝撃の景色が。
「あなた達空気読みすぎでしょ」
ローズアーチのバラ達は自らアーチに巻き付き綺麗な花を咲かせていた。感激の前に呆れてしまう。ちなみに他のバラはまだ苗の状態。
今日は他の苗を植える予定なので、家へ戻り準備をしようとして、ふと忘れかけていた両手の傷を見ると……
「治ってるし。どんだけ優秀よこのアロエ軟膏」
まぁ、綺麗さっぱり傷が消えていたわけで。
これは量産決定ね。期待以上のアロエ軟膏の効果に胸をふくらませた。
「きっと村のみんなが喜ぶ」
そして、今度こそ準備をして外へ出た。
さて、どんな配置にしようかとバラの苗を前にして想像をふくらませた。ここにあるバラは色も形も様々で、「赤」、「黄色」、「ピンク」、「白」、「オレンジ」、「紫」、そして、「青」。単色だけではなく、ピンクグラデーションや青と白のツートンカラーや絞り染めのようなタイダイ柄など見たことがない色柄も沢山あった。
配置を考えながらバラの苗を持ち地面に置いていく。
頭を悩ませながら、時折配置換えをし思い描いた通りの配置にすることが出来た。
「よしっ。こんな感じでいいんじゃないかな?」
地面に据え置いたバラたちを眺め、満足に頷いた。
あとはひたすら植えていくだけだ。
黙々とバラを植える事約二時間。夢中になって植えたおかげでほぼ全てのバラを植えることが出来た。
只今、カバードポーチでティータイム中。今日はミントティーを楽しむ。
ミントティーを飲みながら植えたばかりのバラ達を遠目に眺め「明日の朝が怖いわね」と、苦笑いした。
ローズアーチの朝の状態を考えると、きっと明日の朝には急成長を遂げたバラ達が私を迎えてくれるだろう。
「あとの問題はあなたよね」
ため息を吐きながらティーセットのとなりに置いたバラの苗を見る。何度見てもおかしな苗、何がおかしいかと言うと。
ウニョン、ウニョン。ウネウネウネ。
目の錯覚ではなく、本当に動いているのだ。左右に体を揺らしたり、枝から生える葉をヒラヒラ動かしたりと、やりたい放題。
「どうしよう、これ」
私は頭を悩ませる。
「あなたどうして欲しい?」
思わず苦笑いしながらバラに話しかけてしまうほど悩んでいた。すると、バラは体を大きく反らしてどこかへ行きたい様子。
「うそ~? 言ってる事分かるの? 意思があるって事?」
そう言うと、バラは全身の葉をザワザワと動かし肯定しているようだった。
……ま、いっか。ここまで来ると何も驚きませんよ。
バラの苗を持って、体を伸ばしている方へ向かう。すると、そこは風通しが良く日当たり良好な家の前。
「ここがいいの?」
そう聞くと、バラはまた葉をザワザワと動かした。
言われるがままに、土を耕し森から採ってきた腐葉土を混ぜフカフカにし、バラの苗を植えた。
植えられたバラは地面に根を下ろした事で落ち着いたのか、
「あれ? 動かなくなった。」
ツンツンと優しく突ついてみても動かない。なんだったんだろう? と首を傾げるも、分かる訳が無いのですぐさま諦めた。
「綺麗な花を咲かせてね」
そう言い、水魔法でバラに水やりをし、
「みんなまた明日ね」と庭に声をかけ、今日の作業を終えた。
朝、心地よい日差しと小鳥のさえずりで目覚め、体を起こす。
「あぁ、体がミシミシする」
昨日張り切ってバラを植え、本日筋肉痛です。
「シ、シップ欲しいわ~。今度作っておこう。取り敢えず鎮痛効果のあるハーブを湯船に入れて入浴しよう」
一階へ降り、クローブ、エルダーフラワーを乾燥させた物を布で包んで軽く閉じ、バスタブに浮かべる。入浴剤としては良い香りではないが、筋肉痛には効きそうだ。
ゆっくりと体を沈め、長い吐息を吐く。
「あ~気持ちいい~」
筋肉痛が少しでもマシになるようにゆっくりと入浴し、体を温めた。
お風呂から上がり、体は随分と良くなっていた。
「良かった。今日は村へ行く予定だったから筋肉痛のまま一時間半は辛いもんね」
そう、今日はあの日から一週間。そろそろ村へ行き、食料調達へ行く日である。
と、その前に外の様子を窺う。
「鮮やか~!」
窓の外から見ただけで分かる。外は色とりどりのバラで彩られていた。案の定、バラ達は満開になったようだ。
村へ出かける支度をすると、外へ出てバラ達の元へ。
まずは、昨日ウネウネ動いていたあのバラだ。恐る恐るバラの元へ向かうと、そこには真紅の真っ赤なバラが咲いていた。
「うわ~!! 綺麗に咲いたのね。あなたとても綺麗よ!」
そう声をかけると、バラは優雅にゆらりと揺れる。やっぱり動くのね。香りは強くないが、その色彩の鮮やかさが見事なバラだ。何でこのバラだけが意志を持っているかは謎だが、綺麗だから良しとしよう。
次にローズガーデンに向かい、ローズアーチをくぐると色とりどりに咲き誇るバラ達に迎えられた。
「いい香り!!」
こちらのバラ達は香り豊かなバラが多いようだ。
ローズガーデンの中央は広く場所を取ってある。
「ここに東屋建てれたら素敵だろうな」
と、いつか神様の元でお茶をした東屋を思い浮かべる。いつかあんな東屋を建てれたら……と思い描く。きっといつか素敵な東屋を建てようと心に決めたのであった。
「さて、出発しますか」
家を振り向くと、真紅のバラが枝をゆらゆら振っているように見え可笑しかったが、私も手を振り返し家を出発した。
一度来た道なので、迷いもせずあっという間に村へと着いた。
村の入口には門番の男性がいて、こちらに気が付くと手顔で手を振ってきた。
「お久しぶりです。あの後大丈夫でしたか?」
「やあ、お嬢さん。この間はみっともない所を見せてしまったね。門番の名が泣くよ。言いそびれてたけど、助けてくれてありがとうな!」
「いえ、無事で良かったです。あの、これからこの村に時々お邪魔させてもらうことにしたので私の事はリリーとお呼びください」
「村長から聞いてるよ。よろしくな、リリー。俺の事はバルテロと呼んでくれ」
「はい。こちらこそよろしくお願いします。バルテロさん」
簡単に挨拶を済ませ村へ入り、まずはソニアさんの【木漏れ日亭】へ向かう。
「ソニアさ~ん、いますか~?」
そう声をかけると、奥から「リリーかい!? ちょっ待ってな!」と声がした。
しばらくフロントで待っていると、ふわりとラベンダーの香りが。よく見ると、フロントにはラベンダーのポプリが置いてあった。
こうして自分の手作りの物を使って貰えてると嬉しくなる。
「おまたせ。一週間ぶりだねリリー。そろそろ来る頃だと思っていたよ」
「はい。お久しぶりですソニアさん」
にこやかに迎えてくれるソニアさんに顔が綻ぶ。
「食堂でお茶を飲みながら話をしよう」
ソニアさんはティーセットを持ち食堂へ向かう。
「あ、ソニアさん。お茶にするならこっちの新しいハーブティー試してみませんか?」
アイテムボックスから新作の【ワイルドストロベリーティー】を取り出しソニアさんに渡す。
「新作かい? 今度はどんなお茶だろうね」
「今日はワイルドストロベリーティーとブレンドティーの二種類です。ブレンドティーは、ワイルドストロベリーとカモミールをブレンドしたものです。ちなみにこれがワイルドストロベリーです」
アイテムボックスからワイルドストロベリーを植えた小さな鉢植えを取り出す。
「野いちごのようだね。このいちごの実をハーブティーに入れたのかい?」
「えぇ。ブレンドティーの方に乾燥させた実を入れました。それと、こっちの茶葉はリーフだけを使ったリーフティーです。これ、意外な味がするんですよ。私が入れてみますね」
ソニアさんからティーセットを借りて二種類のハーブティーを入れる。
「まずはこっちのリーフティーをどうぞ」
ソニアさんは匂いをかいでから一口飲んだ。
「これ、カモミールティーとは違う香ばしい香りがするね。食事の時に出してもいいかもしれないね」
そう。これ、なんの味に似てるかと言うと、日本の番茶。深入りすればほうじ茶のような味わいになる。
「でしょう? 私はこのほっとする味が好きです。次は、カモミールティーにワイルドストロベリーの実を入れたブレンドティーですね。これもジャムにしようかと思ったんですが、数が取れなかったのでカモミールティーにブレンドしてみたんです」
そう言って、新しいお茶を入れて蒸らす。
「どうぞ。フルーティーな香りを楽しんでください」
ソニアさんはまた匂いをかいで一口飲む。
「本当にフルーティーな香りがするね。ただのカモミールティーとは一味違った美味しさだよ」
「気に入ってもらえてよかったです。このワイルドストロベリー、幸運のワイルドストロベリーと呼ばれていて縁起のいいものなんですよ」
「何だかいい事が起こりそうだね。あんたのハーブティー、村のみんなにも旅人にも大好評でね、どこで仕入れたのかって殺到したんだよ。村のみんなにはリリーの手作りだと教えたけど、旅人には秘密さ」
いたずらっぽくウインクをする。
「ふふっ。喜んでもらえて嬉しいです。あ、そうだ。ソニアさんに渡すものが。貰ってください」
アイテムボックスからバラの花を取り出す。
「これ、うちの庭で咲いた新作の花です。宿に飾ってください」
バラの花束を贈るなんて意味深だけど、今回は何も考えず二十本ほど持ってきた。
「ポプリとも違ういい香りだね。生花でここまで香りが強いとは。それにこの色、こんな綺麗な花見たことないよ。ホントに貰っていいのかい」
「ええ。この間の魔女疑惑のお礼です」
そう言うと、ソニアさんは「あっ!」と何かを思い出したようだった。
「リリー、その事なんだけどね。実は……」
ソニアさんがそう言葉を続けようとした時、宿の扉が開いた。
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