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【絶命】
3.飛花落葉
しおりを挟む音楽室の倉庫で子どもが新たな発見に気持ちが高ぶるように歓喜しているリュウキとアイナ、良好な人間関係とは言えない二人が気持ちを通わせている。
その最中、外の雲行きは怪しくなり深く灰色に濁った雲が空を覆っていた。雨が次第に降り出し段々と強く降り音も激しくなっている。
「雨が降っちゃったね~、明日の帰る時間になる迄には止んでくれたらいいんだけど~予報では来週辺りまで晴れだったのに~~。りゅーきたん?」
雨音で我に返ったのかリュウキは、またアイナと距離を置き一人で新たな発見をと倉庫の棚に戻り資料を調べだした。
「も~~でも、やっぱ好き…//」
倉庫の中の古びた蛍光灯が点滅を始める。
それに気づいたリュウキは蛍光灯を見上げたままフリーズした、アイナも「やだぁ」と声に出してリュウキの傍に近寄る。
次第に点滅だけではなくパチ・パチと音を鳴らし始めた。
「古いから中が焦げて来てるんだろ…ほっとくと火事の元になるかもだし消すか」
「でも、外の雨のせいで消しちゃったら割とこの部屋暗くなっちゃうかも」
「懐中電灯があんだろ?」
「あっ、そっか!でも、こ、/ リュウキが速やかに蛍光灯を消した。辺りは一瞬にして真っ暗になるが速やかにリュウキが懐中電灯の明かりを付けた。
バリンッ!
だが、その束の間に懐中電灯の集光レンズが割れ中のLEDも支障をきたしたのか懐中電灯が使い物にならなくなる。
「な、なに?なんなの」
「……ぇ、??」
アイナが頬に両手を当て怯え、リュウキはぽかーんとした顔で停止してしまった。初めて体験した生の怪奇現象に拍子抜けたのである。
「と、取り敢えずで、電気!」
「ぇ、ぁ、、ぁ、、あ゛あ゛あ゛」
リュウキは、突然腰を抜かして座り込みアイナを指さす。
「な、なんなのよ!!」
リュウキは、想像を超えて全身が震えまともに声を出すこともできなかった。何かがおかしいと思ったアイナはそっと背後を振り向いてみる。すると、そこには頭部の一部が砕けている白い肌の少年の霊が居た。一人だけではないその少年の霊の背後には片目の潰れた少女の霊もいる。
「……ァァ、、、」
アイナは悲鳴をあげることができない。イメージをしていた霊と全く反したもので驚きに身体が追いついていないのだ。また、アイナは脚がすくみ動かない。
「に、にににに、逃げないと!おい!」
「だ、、、だめ、動かないよ」
アイナは金縛りを受けていた。少年の殺意の籠った瞳の力で硬直しているのである。
リュウキは、何とか立ち上がると恐怖と葛藤しながらもアイナを連れて逃げる事を選択した。
「逃げるぞ!アイナ!」
そう言ってアイナの腕を掴み引こうとした時、リュウキは何も無いところから強い衝撃を喰らい部屋の片隅へと弾かれた。「うっ!」と声を漏らしその場で横たわる。
「リュ……ぅぅき……く、ん。」
アイナは何とか少年の霊の瞳から目を逸らし首だけをリュウキに向けた。その目からは涙が一粒ぽろりと零れておりその表情は助けを求めていることがよく伝わってくる。
リュウキは、痛みに耐えながらも四つん這いになって体を起こした。何故、嫌いな人間をここまで助けたいと思っているのか不思議で仕方がないが、これが危機的状況に陥った時に起こる吊り橋効果なのか否か、。
「アイナ!!」と、彼が声を上げた瞬間である。
片目の潰れた少女の霊が腕でアイナの肉体を貫通し心臓をも貫いた。
「え?」
アイナは何が起きているか分からない。
また、リュウキも目の前で起きていることが現実だと分かってはいるが信じられなかった。
アイナは、目を自分の胸の方にやる。確かに自身の身体の中に少女の霊が腕が埋まっている事が分かった。ズン・ズン・とゆっくりと痛みが伝わってくる。「ンッ、グポ」体内から血が逆流し吐血する。
「…あいな?」
アイナの意識はもう遠のいていた。
目に瞳がなく沈んでいる。すると、少女の霊が【次はお前だ】と言わんばかりにアイナの身体に腕を入れたままじーーっとリュウキの方に顔を向けた。
「う、、うわぁぁぁァっ!」
リュウキは音楽室の倉庫から飛び出す。だが、音楽室の出入口の扉は何故か鍵が掛かってるのか開かない。
【ふふふ】と笑い声がした。
リュウキは恐る恐るピアノの方に目をやるとまた違う女性の教師らしき霊が居た。
もしかして、、
リュウキの脳内にある考察が過ぎる。
ここに居る少年少女、女性教師の霊ってさっき資料で見た、、あの事件の被害者……?
「お、俺は……か、関係ないだろ…。」
リュウキは、開かない扉を無謀に拳でノックするように何度も叩く。霊が近づいてきてないかと確認を試みるとさっきの少年の霊の顔が目の間近にあった。
「うわァァァっ、アアッ…!」
リュウキは咄嗟に横に離れるようにして逃げ、しりをついた形で後退りをする。背に壁がつき逃れられるところを遂には無くしてしまった。
三人の例が壁に張り付くリュウキを囲うようにして立ったまま見下している。
「なぁ、、何で、俺なんだよ…。」
息を荒くし声を震わせて弱音を吐いた。泣きたくても目から涙が出てこない。霊は感情がないのか表情を一つも変えることはなかった。
そして、少女の霊が一歩また近づいて来た時に彼は【死】を覚悟した。
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