現実逃避のために逃げ込んだVRMMOの世界で、私はかわいいテイムモンスターたちに囲まれてゲームの世界を堪能する

にがりの少なかった豆腐

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現実逃避にゲームは最適

情報提供

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「それで話を聞きたいのじゃが、いいじゃろうか?」
「っ、ま…まあ、少しだけならいいです」

 笑うのを我慢するために了承してしまったけど、嫌になったら逃げればいいよね。たぶん、逃げても追いかけて来るようなタイプではなさそうだし。それに情報系クランを作るのであれば情報提供をすること自体はやぶさかではないよ。

「それは良かったですぞ。しかし、ここで話すのは邪魔になる故、端の方へ移動しますぞ」
「え? ああ、そっか。そうだね」

 そういえば、まだギルドの前だった。他にも同じようにギルド前に留まっているプレイヤーはいるけど、ギルドに入ろうとしているプレイヤーにとっては邪魔な存在になってしまっている。

 フルダイブ型のゲームだから、他のVRゲームとは違ってプレイヤー同士のアバターが重なったりはしない。まあ、フルダイブ型じゃなくても重ならないように設定されているゲームはあるけども。

 ギルド前に居るプレイヤーの大半は私を含めてチュートリアルを終えた人ばかりだろうから、チュートリアルを終えてギルドの外に転移される場所は変えた方が良いと思う。さすがに重なるように転移はしてこないだろうけど、人が増えると身動きができなくなるからね。

「こちらですぞ」

 今いる位置からそう離れていない場所へ、イケシルバーによって誘導される。

「では、貴方の種族について聞きたいのじゃが、その前にフレンド登録お願いできますかな?」
「…どうして、フレンド登録する必要が?」

 あれ? もしかしてこれが目的だった? 真っ先にフレンド登録を求めるのはなんか不自然じゃ?

「あっと、説明を先にすべきでしたな。簡単に言うと、現在種族関係の話は荒れている故、なるべく他のプレイヤーに聞こえる状態で話すのは危険なのじゃよ」
「あー、確かにそうかも」

 私もさっき絡まれたからねぇ。あの時より時間が経っているならもっと荒れていても不思議じゃない。
 という事は、フレンド登録自体は互いのためでもあるのか。どちらかと言うと私のためかも? 最初に絡んで来た男みたいな遠慮どころか相手のことを一切考えていないプレイヤーが寄って来るのを防ぐために、ってことだろうし。

「どうじゃ?」
「うん。理由に納得できたからいいよ。フレンドの申請はどっちから?」

 他のゲームでもそうだけど、フレンド申請はどちらからでも送ることができる。送られてきた側が許可をすれば晴れてフレンドとして登録される。
 中には誰彼問わずフレンド申請を投げる人もいるみたいだけど、そういうのって嫌われるからね。拒否された場合は二度とそのプレイヤー相手にフレンド申請できなくから、あまりメリットのない行為なんだけどやる人はいるんだよねぇ。そこまでしてフレンドが欲しいのだろうか。

「良かったですぞ。それと、儂が言い出したのだから申請はこちらから送るぞい。ああ、話が終わったらフレンド一覧から儂のネームを消しても構わぬからの。これはあくまでここで話をするためにした事じゃからな。まあ、消すならこの場で消してくれるとありがたいがの」
「どうして?」
「…消しても構わないとは言ったけど、フレンド欄からいつの間にか名前が消えていることに気付いた時、とても悲しかったから」
「え?」

 あれ何か今、似非イケオジ口調じゃなかったのだけど、もしかして素の口調? こんな口調のおじいちゃんなんて普通居ないだろうから、ロールプレイかキャラ作りに一環なのだろうとは思ってはいたけど。

「ふほほ、何でもないですぞ。ほれ、申請を送りましたぞい」

 まあいいか。既に目の前に申請に対して許可するかどうかのウィンドウが出ているので『許可する』のボタンを押してフレンド登録を済ます。するとフレンドの欄の一番上にイケシルバーのネームが表示された。

 ……こう思うのは悪いと思うんだけど、最初にフレンド登録した相手のネームがイケシルバーってなんかちょっとね。まあ、他に登録するような人は居ないし、今後どうするかはわからないけど。

「了承ありがとうですぞい。では、会話の方はフレンドチャットの方で行うつもりじゃが、よろしいですかの?」
「うん、大丈夫」
「では、フレンドチャットを開きますぞい」

 イケシルバーがそう言うと同時にフレンドチャット用のウィンドウが表示された。

 
 イケシルバー:ではでは、ミヨさんの種族について教えて欲しいですぞ
 ミヨ:種族名はドラゴンレイスですね
 イケシルバー:ほう、やはりそうでしたか。属性は何ですかな
 ミヨ:光属性
 イケシルバー:なるほどのう。だから白に近い色合いじゃったのか。という事は、強制取得スキルの魔術は光魔術かの?
 ミヨ:そうだね。強制取得は光魔術と竜体。もしかして他にもドラゴンレイスのプレイヤーがいる感じ?
 イケシルバー:いますぞい。こちらで把握しているのは2人だけじゃがの。ああ、ミヨさんを入れて3人じゃな
 ミヨ:はえー。属性は?
 イケシルバー:火と風じゃな。それで種族の特性は確認しましたかな? その辺りも知りたいのじゃが
 ミヨ:そういえばその辺りはまだ確認してなかった。今から確認する
 イケシルバー:ありがたいのう


 種族特性はステータスボードの種族欄から見られたよね?

 ん~、ドラゴンレイス(光)の特性は光属性の攻撃が強化されて、闇属性の攻撃に弱くなるんだね。ダメージの変化量もしっかり書いてある。後は寒冷地みたいな寒いエリアでの行動の阻害やダメージね。って、ドラゴンレイスは変温動物なの!? いやいや待って、FSOではドラゴンは爬虫類扱い? それともドラゴンレイスだけがこの特性を持っているかな。

 腑に落ちないところはあるけど、とりあえず種族特性はこんな感じか。……これを全部チャットに書き込むのは面倒。SSでも良いかなぁ? いや、情報収集目的ならSSの方が良いんのでは?

 ミヨ:確認した。ただ、これを書くのが面倒だからSSでいい? それとも、ステータスボードを直接見せた方がいいのかな?
 イケシルバー:他のプレイヤーのステータスボードは見ることが出来んのじゃ。すまんのじゃが、SSを頼んでもいいかの?
 ミヨ:そうなんだ、じゃあSS送りますね
 イケシルバー:助かるのぅ
 ミヨ:送りましたが見れてます?
 イケシルバー:確認できたぞい。協力感謝じゃて
 ミヨ:他に何か用事はあるの?
 イケシルバー:他にはないぞい。ああ、じゃが、何か珍しいと思える情報があったら教えて欲しいところじゃな

 珍しい情報かぁ。何かあったかだろうか。そう思いながら腕の中に居るシュラを見つめる。そう言えばシュラの情報も珍しいと言えば珍しいかもしれない。

 ミヨ:この子は珍しいに入る?
 イケシルバー:スライム? 珍しい…ああ、レアスライムですな
 ミヨ:うん、そう。だけどその感じだと、そこまで珍しい訳じゃないみたいだね
 イケシルバー:既に、というのとは少し違うのじゃが発見例はあるのぅ。しかし、ミヨさんは既に2匹目をテイムしたのですかな?
 ミヨ:? 1匹目だけど?
 イケシルバー:はて、どう言うことですかな? そのレアスライムは何処でテイムしたのかのぅ。あの位置に居たところからしてチュートリアルを完了して直ぐだったと思っていたのじゃが
 ミヨ:テイムしたのはチュートリアルの平原。あとこれに関しては別にチャットで話す必要は無いのでは?
 イケシルバー:ふほほ、確かにそうじゃの。しかし、チュートリアル平原にレアスライムが出るとは知らなかったのぅ。あそこに出るのはスライムとウサギのみだと思っておったのじゃが

 やっぱりチャットで話す必要は無いよね。思考入力といっても結構面倒なんだよね。それにこんな近距離でチャット会話しているのって、周りから見たら変な2人組でしかないんだよね。しかも女性アバターとイケオジアバターの2人組って何か怪しい感じがするし。

「もうこっちで話すけどいいかな」
「よいぞい」
「この子はテイマーの職業チュートリアルの平原でテイムした。見つけたのはたまたまだね。少しでも強い個体をテイムしようと看破している最中に見つけてテイムしたんだ」
「なるほどのぉ。確かにチュートリアルフィールドを隈なく探すようなことは普通はせんわな。その所為で見つかることが無かったと。今後同じように見つけるプレイヤーは居るかもしれぬが、ちと検証が難しいのぉ」

 まあそうだろうね。チュートリアルで行くフィールドはあくまでチュートリアルのために存在しているから、それが終わったら行けないだろうし、チュートリアルに時間をかけようとする人ってそんなにいない気がする。

「いやしかし、当分の間検証は出来ぬが、儂らが知らなかった情報だの」
「なら良かったよ」
「本当なら何か礼を渡すべきなのじゃが、残念ながら今は渡せるような物が何もないのじゃ。礼は次に会った時にでも大丈夫かの?」
「え、別にそういうのはいらないんだけど」

 見返りを求めていったわけじゃないからね。多少、情報屋に知っていることを話せば、種族のやっかみが減るかもと思ったのはあったけど。
 
「他のプレイヤーとの兼ね合いと今後のことを考えると、それは受け入れづらいのぅ」

 ああ、そっか。今後情報を扱うクランを作るとなると、情報の扱い方に一貫性が無いと問題が出ちゃうのか。

「わかった。次に会った時に覚えていたら何か言うよ」
「ふほほ、了解じゃて」
「それで、話は終わりで良いのかな?」
「そうですな。他に聞くことも今のところ浮かばぬし、これ以上ミヨさんの時間を奪うのもよろしくはなかろうの」
「それじゃあ、私は出るね」
「ふほほ、改めてご協力感謝じゃ」

 そうして私はイケシルバーと別れて、当初の目的通りフィールドに向かった。

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