(完結)婚約破棄ですか…いいでしょう!! おい国王! 聞いていましたね! 契約通り自由にさせてもらいます!!

にがりの少なかった豆腐

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貴方が欲しい

閑話 ギルド長

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「やあ、子爵殿」
「何用ですかな? 日中に頂いた物の返答は済んでいるはずですがね」

 レイアが傭兵ギルドに本登録をした日の夜。とある子爵家の応接間に小太りの子爵と呼ばれた男と、傭兵ギルドの長がいた。

「ああ、それについては関係ない。いや、そうだな、この家の者だと騙った者がこちらに来たと思うのだがそれの対処はどうしたかまでは聞いておこう」
「いえ、そのような者は一切我が家には来ていませんね。もしかして、そちらが逃がしたのではないですかな?」

 子爵と呼ばれた男はそう言うと汚い笑みを浮かべた。

「なるほど、そう言う対処をしたと言うことか」
「はて、何を言っているのでしょう。私が来ていないと言う以上、来てはいないのですよ。それより、その騙りを逃がしたことに対する謝罪などはないのですかな。傭兵ギルドの長よ」
「ない。何故私がそのような事をしなければならないのかが理解できませんな。そもそも、こちらには子爵からの紹介状が残っていることを理解していないのかね? さすがにそれを偽造などとは言いますまい?」
「はて、そんな物をあなた宛てに送った記憶はありませんな」

 あくまでもあの元受付嬢とは関係ないと言い張るつもりなのか、子爵は当然と言わんばかりにしらを切った。

「ふっ、まあ、貴方がそのような対応をすることはわかっていたので、それに関してはこれ以上の追及はしない。そもそも、それは今回の本題ではないからな」
「そうですか。しかし、本題とは?」
「私の家である侯爵家が傭兵ギルドを経営していることは知っているよな?」
「ええ、存じていますとも」
「では、それが副業であると言うのは知っているか?」
「は? 副業ですと?」

 全く知らなかった情報に子爵は驚きを隠せない様子でギルド長を見た。

「ああ、それで本業の方は何だと思うかね? 子爵殿?」
「いやぁ、さすがにわかりかねますな。そういう言い方をするということは領地経営は違うのでしょうね」
「ははは、我が家は領地を持っていない貴族だ。それはないと断言しておこう」
「では何だと?」
「我が家は、この国の諜報の一部を担っている。さて、子爵殿。何故私がこのようなことを話したか、理解できるかな?」

 そうギルド長が語り掛けると子爵の表情が固まった。

「い、いや、理解できませんな」
「そうか」

 ギルド長の言い聞かせるようなゆっくりとした口調を受け、子爵の表情から次第に焦りが見え出す。

「ふっ…まあ、子爵殿が理解できようができまいが関係はないのだ。既に結論も証拠も出ている故、それは些細なことだ」
「何が言いたい」

 ギルド長の子爵を小馬鹿にした態度に子爵の声が怒気を含む。

「子爵殿、貴方が裏でやっていることについてだ。ここまで言えばわかるだろう? さすがにこれはしらを切ったところで言い逃れをさせることは無い」
「知りませんな」
「いや、知っているはずだ。それに私は情報を持っていると言ったはずだが、それでもそう言うのか?」
「そんなことは一切知らん!」
「本当にそうか?」
「……ああ!」

 子爵はそう言うと今まで座っていた椅子から勢いよく立ち上がり、近くに置いてあった長細い何かを掴んだ。

「言い逃れが出来ないと判断したら直ぐに武力行使か。何て短絡的な、やはりこう言うところは親子は似る物だな」

 そう言ってギルド長は子爵が振りかぶって来た細剣を懐から出した少し特殊な形をしたナイフで受け止めた。

「ぐっ」
「武器の使い方がなっていない。やはり、所詮は子爵……いや子爵は関係ないな。単にこいつが腑抜けなだけだ」
「ぐぶおっ!?」

 そう言ってギルド長は近くに置いてあった椅子を蹴飛ばして子爵にぶつけた。そして何か合図をするように指を鳴らす。すると、外で待機していたと思われる人間が数人、応接間に入って来た。

「子爵……いや、この段階で貴方の爵位は剥奪される。故に元子爵殿だな。貴方がやっていた人身売買はこの国のみならず、周辺国では禁止されている行為だ。それは理解しているな」

 元子爵は先ほど入って来た人たちによって縛られ取り押さえられた。

「禁止されていない国に流しているだけだ。それならば問題ないであろう!」
「理解が出来ていなかったようだ。この国に所属している以上、どのような形、国に対してもその行為は禁止されている。禁止されていない場所に売れば問題はないという訳ではない」
「だから何だ! そもそもそこら中に居る平民を売って何が悪い。むしろ貴族に売ってやっているのだから感謝して欲しいくらいだ!」

 明らかに貴族第一主義者による発言にギルド長は深く息をついた。
 そもそもこの国は十数年前から貴族第一主義の考えを王族が撤廃している。

 ただ、さすがに貴族第一主義が貴族間で無くなった訳ではなく、こう言った輩はまだ少なからず居る。そもそも、こう言ったことをしていた貴族は元々それなりに居た。しかし、これを王族が主導しているため、逆らった場合のペナルティが大きく大半はおとなしくしているのだ。

「貴方の意見は聞いていない。それに今の王宮の方針は魔力主義だ」
「ああ、そうかい!」

 一切の反省を見せない子爵に対してギルド長はまた大きく息をついた。

「王宮からの通達だ。我が国に王からの指示を無視するような貴族は必要ない。故に爵位を剥奪し、その罪にあった刑罰を与える」
「はっ!」
「そして、貴方に与えられる刑罰は死刑。それも公開処刑でだ」
「は?」

 さすがにそこまでの罰が来るとは想定していなかったのか子爵は惚けた表情で声を漏らした。

「人身売買の時点で死刑だったが、被害数を鑑みて公開処刑になったようだな」
「くっ、離せっ。どけっ!!」
 
 今更逃げようと藻掻く子爵をギルド長と取り押さえている人たちは呆れた表情で見つめる。そもそも、手足が縛られているのだから藻掻いたところで逃げられるわけもないのだが。

「もういい。連れていきなさい」
「はいっ」

 無様に床の上で暴れている子爵を見下ろしているギルド長の指示で、子爵が引きずられるように運ばれていった。

「さて、後は屋内の捜索か。他はどうなっている?」

 先程入って来た人の中でまだ残っていた人員にギルド長が声を掛ける。

「家の構造的にどうやら地下に空間があるようなので、おそらくそこに被害者が居ると思われます」
「なるほど。では先にそこに向かうか」

 ギルド長はそう言って応接間から足早に出て行った。

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