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これから貴方と過ごす場所
なぜ貴方がここにいる?
しおりを挟むロイドと付き合う前まで泊まっていた宿を出て、少し大きな部屋がある宿の一室を借りてロイドと2人での生活が始まってからそろそろ1年というところ。
ロイドは相変わらず手を出してくるような様子はないけれど、貴族関係の心配事が無くなったからなのか、前よりも遠慮が無くなったような気がする。それに、手を出してこないけれど、こちらから手を出す分には前のように拒絶というか嫌がるような反応はしなくなった。
そんな感じに、なかなかにいい雰囲気の充実した日々を過ごしていた。
しかしそんなさなか、傭兵ギルドに私宛の手紙が届いた。
内容は、まあ簡潔に言えば、国に戻ってこい的なやつだった。
もう少し詳しく言うと、国のある領地にて突発的モンスター群衆パニック現象、要するにスタンピードの予兆が確認された。なのでそれに対処するために私の力が必要だから戻って来てくれ、って感じね。
たぶんだけど、このスタンピードは国軍だけで対処できるのだと思う。出来ないならもっと切羽詰まった感じの手紙になるだろうし、手紙の文の中には至急戻れみたいな文言もなかったから。
だから、おそらく私に貴族籍を与えるための功績を与えようとしているのだと思う。
確かに何も功績がないまま貴族籍を与えれば、他の貴族から不平不満の声が出て来るだろうし貴族になった後でもいろいろと言われるのが容易に想像できる。そういった面倒を回避するためには、こういった功績はあった方が良いのはわかる。
それは私も十分に理解しているし、今後のためには必要なことだから願ってもいない。なので頑なに拒否する理由もないんですよね。
そういうわけで、今日を以てこの国での生活を終えることになった。
もうこれで完全に自由な生活を送ることが出来なくなるけれど、今後のことを考えればそう悪くない選択だと思う。少なくとも王子と婚約していた頃みたいに完全に束縛された生活ではないのだし、ロイドが一緒なのだからどこでだってやっていける。
「ロイド、準備は出来たかしら?」
「ああ、大体は済んでいる。元々そんなに物は持って来ていないから」
ロイドはそう言って少し大きめの鞄を示した。まあ、どんなに荷物があったとしても私が空間魔法で収納するから運ぶのに苦労はかからない。
ロイドの準備が済んだところで、宿を出る。
宿の方は週単位で借りていたから数日分過剰に代金を払ってしまっているけれど、早く出て行くからといって差額分を返しては貰えない。まあ、ちょうどいい時期に出ていけるなんて最初から考えていなかったから、その辺りは割り切る。
ギルドの方には昨日の段階で国を出ることを言ってあるし、ロイドの家の方は直接言ったわけではないけれど、ロイドが手紙を出していたので問題はないはずだ。
そうして私たちは街を出て、隣国、と言うか私が元々居た国に向かった。
足早に国境に向かうこと半日。街道に出た段階で移動速度を上げるための魔法を使っていたから、本来数日掛かる国境の関所までの距離を既に踏破している。まあ、私が国を出た時も同じことをしたのだけどね。馬車も出ていたけど、無駄にお金をかけたくはなかったし。
そして、印章を出して国境の関所をさっさと通過して、目的地に向かおうとしたところで後ろから声を掛けられた。
「ああ、ようやく来たか。もう少し早く来られなかったのか?」
声がした方を振り向く。聞き覚えのある声だったのでその声の主が誰だったのかは見当がついだけど、まさかここに来ているとは思っていなかったからその姿を見て少し驚いた。
「何で貴方がここに居るのですか? 国王」
いや、本当に何でここに居るの? もしかして暇なのか国王って。いえ、むしろ暇じゃないから、私を急かすためにここに来ているのかも?
「呼び出しておいてなんだが、国に帰って来てもお前がすぐに俺の所に来るとは思えなかったからな」
「ああ、そうですか」
一応国に着いて直ぐに王へ連絡するつもりだったのよ? まあ王の言う通り、多少連絡するのに何だかんだ時間が掛かったかもしれないけれど。
「それで、そいつが候補か?」
今まで話の蚊帳の外に居たロイドに国王が視線を向ける。それに気づいたロイドは少し身を固め、背筋を伸ばした。
「いえ、候補ではなく確定です!」
そう言ってロイドの手を握る。それを見た国王は少し安心したような表情になった。
「まあ、その方が良かろう。今日の段階で候補も居ないようだったらこちらで用意することも考えていたからな」
おい国王。なに勝手に私の結婚相手を探そうとしているのよ。貴方、人を見る目があまりないのだから止めてくれないかしら。
「要らないです」
「ああ、その辺りはもう必要ないことだな。決まった相手がいるのならこちらも手間がかからず助かる。それで、ここで立ち話をするわけにはいかんから関所の一室で話をする。着いて来い」
「わかりました」
そうして国王の言葉に従い、私たちは国王の後を着いて行った。
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