(完結)婚約破棄ですか…いいでしょう!! おい国王! 聞いていましたね! 契約通り自由にさせてもらいます!!

にがりの少なかった豆腐

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これから貴方と過ごす場所

辺境伯領

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 国王の指示から、5日後。私とロイドはようやく辺境伯領のスタンピードの被害を受けている地域に到着した。

 すぐに行くよう言われていたにも拘らず5日ほどの時間がかかったのは、辺境伯領が私たちが通った国境門から遠く、ほぼ国の端から端への移動だったことと、スタンピードの被害を受けている現地で物資の調達が上手くいくのかがわからなかったため、移動の途中に少し別の街に寄って必要になりそうな物を買いこんで来たからだ。

 辺境伯領は他の領地と比べて比較的肥沃な大地が広がっている。それは領地に隣接する魔の森と呼ばれる魔物が多く住まう場所があり、そこから流れる魔力の影響によるものだとされている。

 ただ、魔物が多く住まう場所に隣接しているため、そこに住まう人はそれほど多くはない。何故なら、たまにではあるが森から魔物が出て来てそれによる被害が発生しているため、普通の人が住まうには少々危険が伴うから。
 今回のスタンピードのように大規模な物ではないものの、魔物が住まう森に接している以上、普段から一切被害が無いというわけではないのだ。

 大抵の場合は現地の傭兵に討伐依頼が出て討伐されているけれど、そもそも依頼を出すタイミングは被害が発生してからなので、討伐されているからといって被害が減ることはない。
 そのため、いくら肥大な土地を有しているにも拘らず、領地に住まう人間が少ないのだ。

 って、まあ、色々と辺境伯領の多少の知識はあるのだけど、実際に訪れたのは今回が初めてなのよね。

「ねえ、ロイド」
「ん? 何だ?」

 目の前に出て来た魔物を魔法で攻撃しながらロイドに話しかける。

 ここに到着するまでにそれなりの時間が掛かったからなのか、それとも元からこの状態なのか被害状況を詳しく説明してくれる人にまだ会えていないので、その辺はよくわからないけれど、たいして魔の森に近付いていないにも関わらず、魔物の襲撃というか遭遇することが頻繁に起こっている状態だ。

「あっちの国でもこういった場所ってあるのかしら?」
「うーん、まあ、あるにはあるけど、ここまでじゃあないな」
「じゃあこれは異常ってことかしら? 元の状態がわからないから、今の状態でどのくらい魔物が増えているかわからないのよね」
「いや、スタンピードが起きているから確実に増えているんじゃないか? さすがにこんなに出て来るようだと、人が住めるような土地ではないし」

 まあ、ロイドの言う通りか。さすがにこれだとまともな生活は送れないわよね。

 まだ魔の森がはっきり見えるような場所でもないのに既に50匹以上の魔物を倒している。これでもスタンピードというには少ない方だけれど、これでまだ本格的にスタンピードが起こっていないと言うのなら、これからさらに酷いことになりそうだ。

 なら、これは既に予兆の範囲を超えているんじゃないかしら。予兆って普通は本来の生息地から出てくる魔物がちらほら見つかるようになったくらいのはずなのよね。となれば、もう殆どスタンピードは本格的に始まっている、もしく始まりかけている、といったところなのかもしれない。

 でもこのスタンピードは何かがおかしい。
 そもそも普通だったら今みたいに少しずつ魔物が出て来ているのがおかしい。スタンピードは突発的パニック現象と言われるくらいだから、本来であれば一気に本来の住処から魔物があふれ出していくもののはず。でも今回は見る限りそうじゃない。

 となれば、やっぱり今回のスタンピードは人為的に引き起こされたものなのかもしれない。

「とりあえず、これが終わったら一旦近くの街に行って情報収集かしらね」

 そう言いつつ目の前に来ていた犬型の魔物を倒す。強さ的にはそんなに強くはないのだけれど、如何せん数が多い。犬型の魔物は群れを作ることが多いので厄介よね。

「そうだな。このまま倒していても原因が無くなるわけではないし、他の所でも同じように対処しているのなら、そことの連携も必要だ。下手なことをすると却って被害を大きくするかもしれない」
「確かにそうね」

 今更な気もするのだけど、ロイドの言うことはもっともね。
 そんなことを考えている内に、近くに居た魔物を全て倒し、その亡骸を空間魔法で収納した。下手に死体を残してこの場を離れると疫病や、さらに厄介な魔物を呼び寄せかねないからちゃんとしておかないとね。

 これは後で傭兵ギルドなりに運んで換金した方が良いかしら? いえ、もしかしたら同じように考えて既に持って行っている人もいるかも? そうなると引き取ってくれない可能性もあるわね。
 いくらギルドが魔物の素材を買い取ってくれるからといって、買い取れない、受け取れない程の量があると、拒否されることもあるのよね。

 まあ、その辺りは町に着いてから考えればいいかしら。それに今日泊まる宿も探さないといけないし、早めに町に向かいましょうか。

「ロイド。こっちは全部しまったわよ。そっちはどう?」
「こっちも問題はないな」

 さすがに攻撃した際に魔物から出て来た汚物、というか、まあその色々を持っていく気は無いので、その処理をロイドに頼んでいたのだけれど、何事もなくそれの処理は終わったようだ。まあ、近くに魔法で穴を掘って埋めただけだから手間以外の問題は起きないと思うけれど。

 そうして私たちは足早にその場を離れ、この場から一番近い町へと向かった。

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