(完結)婚約破棄ですか…いいでしょう!! おい国王! 聞いていましたね! 契約通り自由にさせてもらいます!!

にがりの少なかった豆腐

文字の大きさ
44 / 66
これから貴方と過ごす場所

馬鹿と話すのは疲れる

しおりを挟む
 
 魔物が次々と堀に落ちていく。中には堀を飛び越えようとしている魔物も居るけれど、後続で渋滞が起きている所為で碌に助走も出来ないため、こちら側まで飛び越えられそうな魔物は今のところ居ない。

 堀の底に魔物が溜まっていく。中にはまだ生きている魔物も居るけど後から落ちて来た魔物に押しつぶされているのも居る様子。
 あの子はもう見えなくなっている。さすがにもう駄目なのはわかっているのだけれど、この後、ことが終わったら引き上げてあげるべきかしらね。さすがにこのまま埋め立てるのは可哀そうすぎるし。


 魔物が暴走し始めて30分程が経った。堀に落ちた魔物の数は優に千は超えており、目の前の堀は底が見えなくなるほどの魔物で埋め尽くされている。
 ただ、魔物の森側に居る魔物の数が少しずつだけど減り始めているらしく、堀に向かって来る魔物の数も減っているように感じる。

 さすがに後から落ちていった魔物の一部は、既に落ちていた魔物がクッションの役割をしたらしく、大してダメージを負っていない個体もいる。まあ、そういった奴は上から私が魔法で倒すのだけど。

 辺りを見渡す。見る限りこの堀を越えた魔物は見られない。さすがに堀全体を一度に見張ることは出来ないので、定期的に別の場所で魔物が堀を越えていないか目視で確認しているのだ。
 ついでにそろそろ戻って来るだろうけど、ロイドも見回りに出ている。

「あ、ロイド。見回りは終わったの?」
「ああ、見た限り堀を越えた魔物は居ないと思う」
「そう、それは良かったわ」

 魔物が堀を越えられないのであれば、このまま放置しても大丈夫かしらね。

「何やら魔物が森から離れるのが遅いと見に来てみれば、何だこれは?」

 ロイドと状況の確認をしていると、また堀の向こう側から声が聞こえた。アイリの時と同じパターンね。と言うことはこの人が現辺境伯かしら?

 声がした方を確認すると初老の男ともう一人、初老の男の影に入ってしまっているので確認は出来ないけれど背丈的におそらく男が立っていた。その近くにはこれまで出て来た魔物の中でも大きい物と比べても数倍は大きいオオカミ系の魔物が静かに立っている。

 今までとは明らかに違う魔物に警戒を強める。
 あれは普通に堀を超えて来るわね。正面から戦えばおそらく勝つことは出来るでしょうけど、逃げに徹されたら追いつけないでしょうね。

「む? おい! そこのお前! これは何だ!」

 え? 今気付いたの? アイリの時もそうだったけど、注意力が散漫すぎると思うのだけど。

「堀以外の何に見えるのですか?」

 初老の男の問いに返すならこれ以外ないと思う。まあ、何が聞きたいのかはわかっているのだけどね。

「そんなことを聞いているのではないわ! 何故ここにこれがあるのかを聞いているのだ!」
「あぁ、それなら魔物の侵攻を食い止める以外に理由はないじゃないですか。貴方は他に思い当たる理由でもあるのですか?」

 あからさまに相手を馬鹿にするような口調で言葉を返す。アイリと同じようなタイプなら、煽って怒らせれば多少口が滑ると思うのよね。
 たぶん居なくなっている辺境伯が今回のスタンピードの大元だろうし、出来るだけ情報というか証拠が欲しい。ついでに捕まえられれば良いのだけれど、さっきのアイリみたいに自滅しそうなのよね。

「辺境伯である私を馬鹿にしているのか!?」
「少し考えればわかることを聞いて来ているのですから、多少は馬鹿にしますよ」

 私の言葉を聞いて初老の男は怒りで顔を赤くしている。いや、煽り耐性無さすぎじゃないかしら。と言うか、勝手に自分が辺境伯であることを話したのだけど。
 初めて見たのだけど、現辺境伯ってこんな人だったのね。もうちょっと落ち着いた感じの人だと思っていたのだけど。

 それにしても煽り耐性が無いのも口が軽いのも、貴族としては致命的じゃないかしらね。これでよく国王の補佐的なことが出来ていたわね。

「ちょっと待て! 何でお前がここに居るんだよ!」

 辺境伯が私に向けて怒りを顕にしていると、その後ろから2人目の男が出て来て私に向かってそう言い放った。

「おや、元王子ではないですか。もしかして辺境伯の手伝いでもしていたのですか?」

 何となくアイリが居たからもしかしてとは思っていたけれど、やっぱり辺境伯の後ろに居たのは、アイリと一緒に追放されたはずの元婚約者の元王子だった。

「だから何でお前がここにるんだよ!」

 あーうん。2度目ね。アイリも同じことを聞いて来たし、2度も同じことを言いたくはないから適当に無視でもしましょうか。あ、でも、この手の輩って無視すると却ってうるさくなるのよね。面倒だわ。

「あー、まあ、貴方が気にすることではないわ」
「何でだよ!」

 面倒だわ。本当に。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました

しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、 「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。 ――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。 試験会場を間違え、隣の建物で行われていた 特級厨師試験に合格してしまったのだ。 気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの “超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。 一方、学院首席で一級魔法使いとなった ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに―― 「なんで料理で一番になってるのよ!?  あの女、魔法より料理の方が強くない!?」 すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、 天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。 そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、 少しずつ距離を縮めていく。 魔法で国を守る最強魔術師。 料理で国を救う特級厨師。 ――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、 ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。 すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚! 笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。

婚約破棄をされ、父に追放まで言われた私は、むしろ喜んで出て行きます! ~家を出る時に一緒に来てくれた執事の溺愛が始まりました~

ゆうき
恋愛
男爵家の次女として生まれたシエルは、姉と妹に比べて平凡だからという理由で、父親や姉妹からバカにされ、虐げられる生活を送っていた。 そんな生活に嫌気がさしたシエルは、とある計画を考えつく。それは、婚約者に社交界で婚約を破棄してもらい、その責任を取って家を出て、自由を手に入れるというものだった。 シエルの専属の執事であるラルフや、幼い頃から実の兄のように親しくしてくれていた婚約者の協力の元、シエルは無事に婚約を破棄され、父親に見捨てられて家を出ることになった。 ラルフも一緒に来てくれることとなり、これで念願の自由を手に入れたシエル。しかし、シエルにはどこにも行くあてはなかった。 それをラルフに伝えると、隣の国にあるラルフの故郷に行こうと提案される。 それを承諾したシエルは、これからの自由で幸せな日々を手に入れられると胸を躍らせていたが、その幸せは家族によって邪魔をされてしまう。 なんと、家族はシエルとラルフを広大な湖に捨て、自らの手を汚さずに二人を亡き者にしようとしていた―― ☆誤字脱字が多いですが、見つけ次第直しますのでご了承ください☆ ☆全文字はだいたい14万文字になっています☆ ☆完結まで予約済みなので、エタることはありません!☆

『婚約破棄ありがとうございます。自由を求めて隣国へ行ったら、有能すぎて溺愛されました』

鷹 綾
恋愛
内容紹介 王太子に「可愛げがない」という理不尽な理由で婚約破棄された公爵令嬢エヴァントラ。 涙を流して見せた彼女だったが── 内心では「これで自由よ!」と小さくガッツポーズ。 実は王国の政務の大半を支えていたのは彼女だった。 エヴァントラが去った途端、王宮は大混乱に陥り、元婚約者とその恋人は国中から総スカンに。 そんな彼女を拾ったのは、隣国の宰相補佐アイオン。 彼はエヴァントラの安全と立場を守るため、 **「恋愛感情を持たない白い結婚」**を提案する。 「干渉しない? 恋愛不要? 最高ですわ」 利害一致の契約婚が始まった……はずが、 有能すぎるエヴァントラは隣国で一気に評価され、 気づけば彼女を庇い、支え、惹かれていく男がひとり。 ――白い結婚、どこへ? 「君が笑ってくれるなら、それでいい」 不器用な宰相補佐の溺愛が、静かに始まっていた。 一方、王国では元婚約者が転落し、真実が暴かれていく――。 婚約破棄ざまぁから始まる、 天才令嬢の自由と恋と大逆転のラブストーリー! ---

【完結】 笑わない、かわいげがない、胸がないの『ないないない令嬢』、国外追放を言い渡される~私を追い出せば国が大変なことになりますよ?~

夏芽空
恋愛
「笑わない! かわいげがない! 胸がない! 三つのないを持つ、『ないないない令嬢』のオフェリア! 君との婚約を破棄する!」 婚約者の第一王子はオフェリアに婚約破棄を言い渡した上に、さらには国外追放するとまで言ってきた。 「私は構いませんが、この国が困ることになりますよ?」 オフェリアは国で唯一の特別な力を持っている。 傷を癒したり、作物を実らせたり、邪悪な心を持つ魔物から国を守ったりと、力には様々な種類がある。 オフェリアがいなくなれば、その力も消えてしまう。 国は困ることになるだろう。 だから親切心で言ってあげたのだが、第一王子は聞く耳を持たなかった。 警告を無視して、オフェリアを国外追放した。 国を出たオフェリアは、隣国で魔術師団の団長と出会う。 ひょんなことから彼の下で働くことになり、絆を深めていく。 一方、オフェリアを追放した国は、第一王子の愚かな選択のせいで崩壊していくのだった……。

【完結】 私を忌み嫌って義妹を贔屓したいのなら、家を出て行くのでお好きにしてください

ゆうき
恋愛
苦しむ民を救う使命を持つ、国のお抱えの聖女でありながら、悪魔の子と呼ばれて忌み嫌われている者が持つ、赤い目を持っているせいで、民に恐れられ、陰口を叩かれ、家族には忌み嫌われて劣悪な環境に置かれている少女、サーシャはある日、義妹が屋敷にやってきたことをきっかけに、聖女の座と婚約者を義妹に奪われてしまった。 義父は義妹を贔屓し、なにを言っても聞き入れてもらえない。これでは聖女としての使命も、幼い頃にとある男の子と交わした誓いも果たせない……そう思ったサーシャは、誰にも言わずに外の世界に飛び出した。 外の世界に出てから間もなく、サーシャも知っている、とある家からの捜索願が出されていたことを知ったサーシャは、急いでその家に向かうと、その家のご子息様に迎えられた。 彼とは何度か社交界で顔を合わせていたが、なぜかサーシャにだけは冷たかった。なのに、出会うなりサーシャのことを抱きしめて、衝撃の一言を口にする。 「おお、サーシャ! 我が愛しの人よ!」 ――これは一人の少女が、溺愛されながらも、聖女の使命と大切な人との誓いを果たすために奮闘しながら、愛を育む物語。 ⭐︎小説家になろう様にも投稿されています⭐︎

プリン食べたい!婚約者が王女殿下に夢中でまったく相手にされない伯爵令嬢ベアトリス!前世を思いだした。え?乙女ゲームの世界、わたしは悪役令嬢!

山田 バルス
恋愛
 王都の中央にそびえる黄金の魔塔――その頂には、選ばれし者のみが入ることを許された「王都学院」が存在する。魔法と剣の才を持つ貴族の子弟たちが集い、王国の未来を担う人材が育つこの学院に、一人の少女が通っていた。  名はベアトリス=ローデリア。金糸を編んだような髪と、透き通るような青い瞳を持つ、美しき伯爵令嬢。気品と誇りを備えた彼女は、その立ち居振る舞いひとつで周囲の目を奪う、まさに「王都の金の薔薇」と謳われる存在であった。 だが、彼女には胸に秘めた切ない想いがあった。 ――婚約者、シャルル=フォンティーヌ。  同じ伯爵家の息子であり、王都学院でも才気あふれる青年として知られる彼は、ベアトリスの幼馴染であり、未来を誓い合った相手でもある。だが、学院に入ってからというもの、シャルルは王女殿下と共に生徒会での活動に没頭するようになり、ベアトリスの前に姿を見せることすら稀になっていった。  そんなある日、ベアトリスは前世を思い出した。この世界はかつて病院に入院していた時の乙女ゲームの世界だと。  そして、自分は悪役令嬢だと。ゲームのシナリオをぶち壊すために、ベアトリスは立ち上がった。  レベルを上げに励み、頂点を極めた。これでゲームシナリオはぶち壊せる。  そう思ったベアトリスに真の目的が見つかった。前世では病院食ばかりだった。好きなものを食べられずに死んでしまった。だから、この世界では美味しいものを食べたい。ベアトリスの食への欲求を満たす旅が始まろうとしていた。

【完結】悪役令嬢はご病弱!溺愛されても断罪後は引き篭もりますわよ?

鏑木 うりこ
恋愛
アリシアは6歳でどハマりした乙女ゲームの悪役令嬢になったことに気がついた。 楽しみながらゆるっと断罪、ゆるっと領地で引き篭もりを目標に邁進するも一家揃って病弱設定だった。  皆、寝込んでるから入学式も来れなかったんだー納得!  ゲームの裏設定に一々納得しながら進んで行くも攻略対象者が仲間になりたそうにこちらを見ている……。  聖女はあちらでしてよ!皆様!

【完結済】どうして無能な私を愛してくれるの?~双子の妹に全て劣り、婚約者を奪われた男爵令嬢は、侯爵子息様に溺愛される~

ゆうき
恋愛
優秀な双子の妹の足元にも及ばない男爵令嬢のアメリアは、屋敷ではいない者として扱われ、話しかけてくる数少ない人間である妹には馬鹿にされ、母には早く出て行けと怒鳴られ、学園ではいじめられて生活していた。 長年に渡って酷い仕打ちを受けていたアメリアには、侯爵子息の婚約者がいたが、妹に奪われて婚約破棄をされてしまい、一人ぼっちになってしまっていた。 心が冷え切ったアメリアは、今の生活を受け入れてしまっていた。 そんな彼女には魔法薬師になりたいという目標があり、虐げられながらも勉強を頑張る毎日を送っていた。 そんな彼女のクラスに、一人の侯爵子息が転校してきた。 レオと名乗った男子生徒は、何故かアメリアを気にかけて、アメリアに積極的に話しかけてくるようになった。 毎日のように話しかけられるようになるアメリア。その溺愛っぷりにアメリアは戸惑い、少々困っていたが、段々と自分で気づかないうちに、彼の優しさに惹かれていく。 レオと一緒にいるようになり、次第に打ち解けて心を許すアメリアは、レオと親密な関係になっていくが、アメリアを馬鹿にしている妹と、その友人がそれを許すはずもなく―― これは男爵令嬢であるアメリアが、とある秘密を抱える侯爵子息と幸せになるまでの物語。 ※こちらの作品はなろう様にも投稿しております!3/8に女性ホットランキング二位になりました。読んでくださった方々、ありがとうございます!

処理中です...