俺は何処にでもいる冒険者なのだが、転生者と名乗る馬鹿に遭遇した。俺は最強だ? その程度で最強は無いだろうよ などのファンタジー短編集

にがりの少なかった豆腐

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俺は何処にでもいる冒険者なのだが、転生者と名乗る馬鹿と遭遇した

転生者、イキる

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 俺の名前は、アース。何処にでもいる、冒険者だ。

 俺の仕事は、まあ、基本的に魔物退治とかの一般人が出来ないような危険なことを担当している。別に冒険者全てが俺のように危険な仕事をしている訳じゃない。
 冒険者の中には10歳くらいの子供もいる。そう言う、危険な仕事が出来ない、やらせるべきでは無い奴らは、ちょっと体力を使うような雑用や厄介ごとの手伝いを主にしている。
 まあ、手に職が無い様なやつがなるのが冒険者だ。中には俺のように魔物を倒すような、手に職を持っていると言えるやつも居るがそれは少数だな。

 そして俺は、半月ほど前に受けた依頼のAランクの魔物の討伐を今日終えて、その報告にギルドのある町へと向かっている。
 いやぁ、魔物を倒すのは問題なかったのだけど、探し出すまでが大変だったな。農村に被害が出ているとの事だったが、それが本当だったのかはわからん。と言うか十中八九嘘だろう。
 魔物はかなり山奥に居たし、農村の方に被害らしき跡もなかった。村人は跡は消したと言っていたがさてはて。まあ、依頼は完了したから良しとしよう。


 ああ、久しぶりの人里だ。
 長く町から離れて依頼を進めていたから、そもそも人に会うのも久しぶりかもしれない。
 一応依頼中に元が人類のゾンビに遭遇したから、人と会うのが久しぶりと言う感覚は無いのだけどな。

 町に入る……前に、体を洗った方が良いか。さすがに臭いだろうしな。色々魔物なんかの体液が掛かったままになっているし、依頼中は碌に水浴びもしなかったからな。

 近くの川辺に移動して、服をぬぐ…………いや、面倒だからこのまま川に入ればいいか。

 そして、全身を川で洗い流した後、魔法で一気に服もろとも体を乾かす。多少髪がごわついているが、ギルドに依頼達成の報告をした後に宿でもう一度しっかり洗い直せばいいよな。

 さて、これで臭いを気にせず町の中に入れる。


 町の中に入ってどこにもよることなく真直ぐギルドに向かう。勝手知ったると言う程ではないけど、この町は何度も来ているし、何処にどの様な店があるのかも把握している。
 そして俺は迷うことなく町の中心近くにある冒険者ギルドに到着した。

「俺は転生者なんだぞ? 最強の冒険者だ! だから俺を敬え! 言うことを聞け!」

 何やらギルドの中からとち狂った発言が聞こえてくるが、何があったんだ? さすがに最強、と名乗るにしては声に覇気が無さすぎるのだが。
 ……ギルドの外で気にしても何もわからないな。さっさと中に入るか。

「俺は何れSランクになる男だ。今のうちに俺の元に来いよ。なってからじゃあ、お前なんて相手にできなくなっているだろうからなぁ?」

 口説き文句としては0点だな。
 受付嬢を口説いている奴の装備を見る限り、新人だろう。そもそも何で上から目線で物を言っているんだ? そんなことを言ってついてくるような女は碌なやつじゃあないと思うが。

「すまないが、用が無いなら退いてくれないか? 依頼の報告がしたいのだが」

 小さな町の冒険者ギルドだから受付の窓口は2つしかない。しかも時間の関係か、この口説いている新人の所為か、もう1つの受付は閉まっている。

「あ゛? 俺の邪魔をすんじゃねぇよ! 雑魚が!」

 しっかり見ても、魔力量、筋肉量ともにそこらに居る冒険者の半分もない。良くこれで喧嘩を売れるな? いや、単に相手の力量を見ることすら出来ない程度の実力なのか。

「もう少し見る目を養った方が良い。君は新人だろう? むやみやたらに喧嘩を売るのは良くないぞ」
「俺は転生者だ! だから最強なんだよ!」

 理解できん。何故、転生者だから最強なんだ? 確かに転生者と名乗る奴らは強い奴が多いのは事実だが、絶対に最強と言う訳ではなかったはずだ。

「転生者だから、という理由はよくわからないな。とりあえず君は俺より弱いことは事実だが」
「嘘つけ! 俺は最強なんだよ!」

 気が短いな。これじゃあ、冒険者をするにも適性が無いと言わざるを得ないな。冒険者は基本的に地位は低いから、よく貴族などの権力者に馬鹿にされがちだ。それを受け流せないようなら、冒険者としては長生きできないだろう。
 権力という物は、腕っぷしだけではどうにかなるものではないからな。
 それに転生者、転移者だからと権力者に媚びを売る奴らもいるようだが、転生者、転移者であることを明確にする方法は無い。結局のところ、権力者の大半には相手にされないし、良くていいように使われるだけなんだよな。

「ここは室内です! 武器を抜くのは止めてください!」

 俺の言葉が余程気に食わなかったのか新人が腰にぶら下げていた武器を抜いた。それを見た受付嬢が言葉で制止する。しかし、新人はその言葉を完全に無視し俺に向かって武器を振り上げた。

「危ないな。それに受付の子も言っているが、ギルド内では武器を抜くことは禁止されている。それは規約違反だ」

 碌に腰の入っていない剣だな。線も早くないしこれなら素手で受け止めても大丈夫だったな。普通に掴み取れる範囲だ。

「知るかよ! ああ、最初からこうすればよかったんだ! 切りつけられたくなかったら俺の言うことを聞け!」
「お断りします」

 剣を抜いたことで狼狽えていた受付嬢に新人は脅しをかける。しかし、受付嬢は直ぐに拒否し、受付から離れた。

「君は本当に呆れるな。何も見えていない」
「は?」
「武器を抜いた段階でギルドからの追放。そして受付の子に向かって脅しをしたことによる恐喝で、数日は牢屋の中に入る事になるだろう」
「俺は転生者なんだよ! 何をしても許されるはずだ!」
「そんな訳ないだろう。馬鹿か?」

 何故こうも転生者であるから、と言う思考になるのか。もしかして元の世界ではそうなのか? さすがに犯罪まで許容するのは問題しかないと思うのだが。

「死ねぇ!!」

 こいつの考えは一切理解できないが、とりあえず拘束はしておこう。さすがにさっきの受付の子が上役を呼んでいるだろうしな。

 いつの間にか居なくなっていた受付嬢が上の職員を呼んで来るだろうと判断し、向かって来る新人の攻撃を受け流す。

「うおぁっ!?」

 全力で振り下ろしていた剣の軌道を横にずらされたことで新人はバランスを崩し、床に転がった。

「ぐっ!」
「少しじっとしていろよ」
「ぐぅっ、ふざけんな! 離せ!」

 そうして自称転生者の新人は、後から出て来たギルド長に追放を言い渡され、さらに後から来た警備員によって恐喝の罪で3日間牢屋に入れられた。


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