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ハブられ勇者の付き人やってます 別の場所に旅立った屑王子の体が、いつの間にか魔王に乗っ取られているんだが、どう言うことなんだ?
助け出す
しおりを挟む現在、盗賊の根城の中に居ます。
引っ切り無しに盗賊が俺たちを排除しようと向かって来ているのだが、そのほとんどは勇者によって地面に倒れ込んでいる。それ以外は俺が後から処理しているが、それらは武器を持っていない下っ端中の下っ端と言った感じの奴らだけだ。
その残っている下っ端に蹴りを入れながら勇者を追う。勇者は倒している数が明らかに多いにもかかわらず俺をどんどん突き放して先に進んで行く。
ある意味、残りの盗賊を倒すには楽ではあるのだけど、この根城が一本道じゃなかったらはぐれそうだ。
必死に勇者から引き離されないように急いでいたのだが、少し先に言ったところに勇者が止まっている。そこは道が2手に分かれているようだが、迷っているのか? 常に真直ぐにしか進まない、あの勇者が?
勇者に追いついたのだが、そこは道が2手に分かれている訳ではなく、一方はどうやら物置場と牢屋のようになっているようだ。
「あ、ここに攫われた人が居るのでしょうか」
「居るだろうねっと」
勇者は何処からともなく結構大きなカバンを取り出した。いつも思うが、これはどうなっているんだ? 勇者の特殊技能とは聞いているけど、明らかに何もない所から取り出して。空間魔法とか言うやつだろうか。それって伝説級の魔法なんだけど。
「さ、書記官君。これをもって」
「え? 何ですこれ? 何が入って」
渡された鞄は大きい割にそこまで重くは無いのだけど、これは何が入っているんだ?
「タオルとかだねぇ」
「何故?」
「まあ、女性は色々されているだろうからね。たぶん必要だと思うよ」
「あぁ」
勇者に言われてその可能性に気付いた。正直、胸糞悪いことだが盗賊が女性を攫うのは売るか、あれやそれやをするためだ。ここに残っているのなら、おそらくそう言うことだろう。
「わかりました。さて、本当はこちら側に女性がいればよかったんだけど、そうも言っていられないね。あちら側から入っただろう人も居るから手早くやらないと」
「ええ」
そうして勇者と俺は牢屋の方に向かった。
牢屋の中を確認すると勇者の予想は間違っていなかった。それを見て嫌な気持ちになりながらも勇者が気で出来た牢屋の格子を破壊して、中に居た人たちを助け出す。
中には長期間ここに居たのか、栄養状態が芳しくない人も居た。その人たちには横に在った物置にあった食料を拝借し与える。おそらく馬車を襲った際に奪った食料だろうがどの道、ここに居る盗賊は全滅するだろうから腐りやすい食べ物はこの人たちに与えても問題は無いだろう。
牢屋にとらわれていた人たちにタオルや食料を配った後は少しその場で待機していて欲しいと言ってから、勇者の方に向かう。
「さて後は頭を潰すだけなのだけど、どうしようか」
「え? 冒険者の方と協力して倒すのではないのですか?」
「うーん。たぶん手助けは要らないと思うのだよねぇ。見た感じ私よりも強そうだったから」
「はい?」
え? 勇者よりも強い存在が居るのか? そもそもそんな奴が居るなんて聞いたことは無いのだけど。
「勘だからなぁ。絶対じゃないよ」
「行かなくてもいいとしても、行った方が良いのでは? 協力を申し出て勇者が参加しないなんて外聞が悪すぎます」
「だよねぇ」
何か凄くめんどくさそうなんだけど。どう言うことだ? 今までこんな感じの勇者はみたことがなかったんだけど。
「さっさと終わらせればいいか」
「そうですよ。それに勇者は盗賊くらい一捻りでしょう?」
「だねぇ、さっさと行こうか」
そうして勇者はさらに奥に進んで行く。既に盗賊は殆ど倒していたのか、道中殆ど出て来ることは無く順調に奥に向かう。そして当たり前のように勇者との距離が開く。
そしてようやく勇者がおそらく最奥の空間に入ったのを確認した瞬間、その空間の出入り口が地面から競り上がってきた岩によって塞がり始めた。
「すまない。書記官君」
「ちょっと待てって! は? 嘘だろう」
俺の声の半ばあたりで先に在った空間の出入り口は完全に岩によって塞がれる。
「おい! ちょっと開けろ!」
出入り口をふさぐ岩を叩くも蹴るもビクリともしない。先から音が聞こえない所からも、おそらくこちら側からの音も聞こえていないだろう。
「マジかよ? どうすればいいんだ」
俺の仕事は勇者の付き人だ。こういう状況は多少、想定はされていたが、今まで勇者とこうなった場合の打ち合わせはしてない。そもそも勇者が全て解決してしまうので、話し合う必要が無いからだが。
「どうす…とりあえず、捕まっていた人たちを外に出すか。どうせ勇者が負けることは無いだろうし、その後のことをスムーズに進めるにはそうした方が良いよな」
そうして俺は勇者が奥の空間から出て来るまでに捕まっていた人たちと、盗品を根城の外に運び出した。
「勇者! やっと出て来た…ましたね」
暫くして勇者が盗賊の根城から出て来た。そこには根城に入る前に話していた冒険者の人も居たので、咄嗟に言葉を正す。あまり意味はないかもしれないが、付き人である以上他者が居る場ではそう振舞わなければだめだろう。
商人の方から依頼を受けていたらしい冒険者に盗品の扱いについて尋ねる。それと同時に掴まっていた人たちについても対応を聞く。
「それで、助け出した人たちと金品なのですが、どうしましょうか」
「私たちは旅の途中なのでね、さすがにこれ以上時間は使えないのだけど」
ん? 勇者が攫われた人たちをあの町に届けるのではないのか? お願いとして聞いているのだからそうだと思っていたのだが。
「ああ、わかりました。これについても俺が処理しておきますよ。おそらく金品については被害届が出されている物もあるでしょうし」
冒険者の人が対応してくれるならありがたいが、どうして勇者は自分でやらないのだろうか。
「すまないなぁ」
「ありがとうございます」
そうして俺たちはその冒険者の元を離れる。いつもよりも遅いが当然走っている。そして、暫く離れたところで俺は勇者に先ほど気になったことを聞いてみた。
「何故勇者は攫われた人たちを自ら町へ届けなかったんだ」
「ちょっと時間がなさそうだからね。届ければ感謝で持て成してくれるだろうけど、その時間も惜しい感じだ」
「どう言う事です?」
「国の方で嫌な予感がする。それも急いだほうがいい感じのやつだ」
「勘ですか?」
「勘だ」
「そうですか。なら急ぎましょう」
勇者の勘はすこぶる当たる。と言うか今までの行動のほとんどが勘だと言っていたくらいだ。何か第6感的なものでもあるのか勇者の勘はほぼ外れない。
故に勇者がかなりヤバイと言っている以上、それはかなりヤバイと言うことだ。正直、俺は国に対して何の感情も持っていないが、妹が国の教会で聖女をやっている以上、無関係ではいられない。
そうして勇者と俺は全速力で国に戻ることになった。
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