66 / 79
ハブられ勇者の付き人やってます 別の場所に旅立った屑王子の体が、いつの間にか魔王に乗っ取られているんだが、どう言うことなんだ?
聖女
しおりを挟む「何故…そうだと?」
「さてね。それよりも、確認は後にして早くした方が良いと思うよ?」
待て勇者。確かに確認している時間が惜しいのは理解できる。しかし、何でお前はシアが聖女であることを知っている? これは教会にすら知らせていないことなのだけど?
今、勇者がシアのことを本物の聖女だと言ったが、それは本当のことだ。
じゃあ、今まで聖女として扱っていたフィアは何なのだと言うと、別に聖女ではないと言うことでは無い。しっかりと聖女の資格を有しているし、先ほど浄化魔法を使った通り聖魔法を扱うこともできる。ただ、聖女としての能力が圧倒的にシアに劣ると言うだけだ。いや、別の要素もあるのだが。
だったらシアが聖女をやればいいだろうと思うかもしれないが、シアの性格では聖女の役職に就くことはあまり良いとは思えない。基本的に動くことが好きだし、じっとしているのは苦手。ついでに守られるのではなく守る方が好きだ。要するに根本的に聖女と言う役職に向いていない。そもそも、最初に王都へ来た理由が騎士になるためだしな。
妹であるフィアが聖女に就いた理由は、単に俺とシアが王都に働きに出た際に一緒に付いて来て偶々聖女の資格があるとして、教会に聖女認定させた結果だ。
教会としては年々下がり続けている影響力を少しでも上げようと、聖女を探していた所だったらしく、そんな時にフィアが来たから祭り上げるように聖女の位置に付かせた。あくまで教会が認定しただけで神から聖女と認められたという訳ではないので、聖女の資格はあるものの本物とは言えない。そもそも聖女にあるべき聖痕が無いのだから。
まあ、そんなこんなで今に至る訳だが、勇者はいつそのことを知ったのかがわからない。俺は勇者に聖女に関わる話はしたことは無いし、勇者からそれに関する話を聞いたこともない。
「確かにそうだな。かの者に聖なる祝福を!」
「どうもー」
いや雑! 与える側のシアもそうだが、受け取る側の勇者も対応が雑過ぎるだろう!? 仮にも聖女の祝福だぞ。何であんなに投げやりな感じで受け渡しをしたんだよ。
「まさか、奴が本当の聖女とは。しかし、この場から排除できたのは良しとするか」
いや、魔王。お前もそのやり取り無視するのかよ! 少しは変だと思えよ!
「大丈夫か!?」
シアがそう言いながら駆けつける。その際に聖騎士たちに足止めされていた国王と大臣のゾンビがシアに両断された。
「俺たちは問題ない。しかし、聖騎士の二人がちょっとまずいな。フィアの浄化だけでは足りていない感じだ」
「そのようだな」
シアは聖騎士たちの顔色を確認してから、浄化の魔法を掛けた。そして、それから少し遅れて王の間にゾンビたちがなだれ込んで来た。
「想像以上に数が多いな。仕方ない。聖魔結界!」
俺たちの周りにシアが張った結界が覆う。これでゾンビが俺たちを害することは出来なくなったが、同時に勇者の援護に行けなくなった訳だ。
まあ、勇者の様子を見るに焦った感じは無いので問題は無いのだろう。さっきも何か秘策があると言っていたしな。
「これで準備は整ったな」
「何の準備だ?」
「お前を倒す準備だよ。魔王」
今まで旅をしてきた中でも見たことが無い挑発的な表情で勇者は魔王にそう言う。しかし、魔王はその発言に対して馬鹿にしたような表情をした。
まあ、今まで魔王に碌な攻撃を与えていないから仕方がない事だろうけど、さすがに勇者があんな表情をしていることに疑問を持つべきだろう。どうあっても勇者何だぞ? いや、俺でも何をしようとしているかはわからないけど。
「はっ! 俺に対して有効な攻撃方法を持っていない奴がよく言えたものだな」
「ははは、手加減してやっていただけだよ。下手に倒してしまうと厄介なことになりそうだったからね」
手加減。まあ、確かにそんな感じだったけどさ、魔王相手に余裕を見せるのはどうかと思うぞ勇者。何か理由があるみたいだけどさ。
「ふん。強がりは見苦しいぞ勇者。なに、俺が一思いにやぐぇべっ!?」
「嘘は言っていないのだけどなぁ。まあ、信じてもらう必要もないしここで死ぬのだからどっちでも同じだよね」
勇者が投げた剣が魔王を玉座に縛り付ける。いや、今まで碌に切れていなかった剣でどうして魔王のことを刺せるんだ? 手加減していたにしても可笑しくないか? もしかして祝福関係だったりする?
「ぐっ、何故俺にこの剣が刺さる? あれの持っている聖剣ならまだしもどう見ても普通の剣ではないか」
「だから手加減していたんだよ。今までも斬ろうと思っていれば斬れた。それだけだ」
「ぐっ。何故抜けないのだ?」
魔王が剣を抜こうと藻掻くが剣は玉座に深く刺さり動くことは無かった。玉座の強度を考えれば抜けてもおかしくはないはずなのだが、勇者が何かをしたのか?
「さて、終わりにしよう。と言うか、さっさと終わらせたいから巻きで行くな」
いや、勇者。お前何かキャラ変わった? と言うか巻きって何だよ。
「俺の動きを止めた程度で勝った気になり負って、ただでは…」
「あ、そう言うのは要らないです」
本当にお前は勇者か? 今までの印象と違う……いや、そうでもないな。結構今みたいに投げやりな感じの対応をしていた時もあったな。
「な…なにを」
「目覚めよ我が剣! 魔を祓いし聖なる剣よ!」
え? 何事? 床が、いや王城全体が揺れているんだけど。それと勇者が今までにないくらい真剣な表情をしている。お前そんな表情も出来たのか? と言うか、我が剣?
と言うか、勇者のキャラがブレまくっているのだが、どれが素なんだよ。もしかして、今までが演技だったと言うことは無いよな?
「何だ…これは? こいつの記憶にもこのような物は無いぞ!?」
魔王が狼狽えている。おそらく王子の体を乗っ取ったからか、王子の記憶も見ることが出来るようだがあの王子が、真面な情報を持っているとは思えないから、乗っ取るなら国王の方尾が良かったのではないか? さすがに年齢が高すぎるか。
「はあぁあぁあ!」
あ、何か勇者が溜めモーションに入った。何をするつもりなのかは本当にわからないけど、何かわくわくする感じの雰囲気だ。
「何を…ぬ!? まさか下に!? 何故このような力が眠っていた!?」
ん? 魔王が何か慌てている? と言うことは魔王にとってあまりよろしくない物が下にあると。それと、この揺れの原因は下にあったのか。
「上がれ! 目覚めし聖剣!」
「待て! 止めろぉ!」
魔王が必死に玉座から離れようと藻掻く。しかし、やはり剣は抜けず玉座もそのままだった。
あ、玉座の下が少しずつ膨らんできている? いやいや、王城の床ってかなり強固に作ってあるよな? え? あんな感じに変形する物なのか?
「はああぁあぁああ!!」
さらに溜めるのか。お? 床が割れて下から光が漏れて来た。んん?! その光に当たったゾンビが一瞬で消し飛んだのだけど!? え、これって聖剣から漏れ出ている光なの!?
「止め、止め」
「貫け!! エクスカリバァーー!!!」
勇者そう叫ぶとともに腕を振り上げる。それに合わせたように床が崩壊し、光が溢れ出る。そして光は一筋となり、空に向かって天井を破壊しながら魔王を包み込んだ。
「ぎゃあああああ!!!!」
光が室内を埋め尽くす中、魔王の悲鳴と王城の崩壊の音が周囲に響く。そして、暫く立っていた光の筋は徐々に細くなり、やがて無くなった。
23
あなたにおすすめの小説
没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます
六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。
彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。
優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。
それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。
その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。
しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。
※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。
詳細は近況ボードをご覧ください。
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
荷物持ちを追放したら、酷い目にあった件について。
しばたろう
ファンタジー
無能だと思い込み、荷物持ちのレンジャーを追放した戦士アレクス。
しかし――
彼が切り捨てた仲間こそが、
実はパーティを陰で支えていたレアスキル持ちだった。
事実に気づいた時にはもう遅い。
道に迷い、魔獣に襲われ、些細な任務すらまともにこなせない。
“荷物持ちがいなくなった瞬間”から、
アレクスの日常は静かに崩壊していく。
短絡的な判断で、かけがえのない存在を手放した戦士。
そんな彼と再び肩を並べることになったのは――
美しいのに中二が暴走する魔法使い
ノー天気で鈍感な僧侶
そして天性の才を秘めた愛くるしい弟子レンジャー
かつての仲間たちと共に、アレクスはもう一度歩き出す。
自らの愚かさと向き合い、後悔し、懺悔し、それでも進むために。
これは、
“間違いを犯した男が、仲間と共に再び立ち上がる”
再生の物語である。
《小説家になろうにも投稿しています》
エクセプション
黒蓮
ファンタジー
血筋と才能に縛られた世界で【速度】という、それ単体では役に立たないと言われている〈その他〉に分類される才能を授かったダリア。その才能を伯爵位の貴族である両親は恥ずべき事とし、ダリアの弟が才能を授かったと同時に彼を捨てた。それはダリアが11歳の事だった。
雨の中打ちひしがれて佇んでいたダリアはある師に拾われる。自分を拾った師の最初の言葉は『生きたいか、死にたいか選べ』という言葉だった。それまでの人生を振り返ったダリアの選択肢は生きて復讐したいということだった。彼の選択を受け入れた師は彼にあらゆることを教えていく。
やがて師の元を離れる際にダリアはある紙を受け取り、それと同時に再度の選択肢を投げ掛けられる。彼が選ぶ復讐とは・・・彼が世界に及ぼす影響とは・・・
異世界に転生した社畜は調合師としてのんびりと生きていく。~ただの生産職だと思っていたら、結構ヤバい職でした~
夢宮
ファンタジー
台風が接近していて避難勧告が出されているにも関わらず出勤させられていた社畜──渡部与一《わたべよいち》。
雨で視界が悪いなか、信号無視をした車との接触事故で命を落としてしまう。
女神に即断即決で異世界転生を決められ、パパっと送り出されてしまうのだが、幸いなことに女神の気遣いによって職業とスキルを手に入れる──生産職の『調合師』という職業とそのスキルを。
異世界に転生してからふたりの少女に助けられ、港町へと向かい、物語は動き始める。
調合師としての立場を知り、それを利用しようとする者に悩まされながらも生きていく。
そんな与一ののんびりしたくてものんびりできない異世界生活が今、始まる。
※2話から登場人物の描写に入りますので、のんびりと読んでいただけたらなと思います。
※サブタイトル追加しました。
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~
志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」
この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。
父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。
ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。
今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。
その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。
究極妹属性のぼっち少女が神さまから授かった胸キュンアニマルズが最強だった
盛平
ファンタジー
パティは教会に捨てられた少女。パティは村では珍しい黒い髪と黒い瞳だったため、村人からは忌子といわれ、孤独な生活をおくっていた。この世界では十歳になると、神さまから一つだけ魔法を授かる事ができる。パティは神さまに願った。ずっと側にいてくれる友達をくださいと。
神さまが与えてくれた友達は、犬、猫、インコ、カメだった。友達は魔法でパティのお願いを何でも叶えてくれた。
パティは友達と一緒に冒険の旅に出た。パティの生活環境は激変した。パティは究極の妹属性だったのだ。冒険者協会の美人受付嬢と美女の女剣士が、どっちがパティの姉にふさわしいかケンカするし、永遠の美少女にも気に入られてしまう。
ぼっち少女の愛されまくりな旅が始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる