俺は何処にでもいる冒険者なのだが、転生者と名乗る馬鹿に遭遇した。俺は最強だ? その程度で最強は無いだろうよ などのファンタジー短編集

にがりの少なかった豆腐

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ハブられ勇者の付き人やってます 別の場所に旅立った屑王子の体が、いつの間にか魔王に乗っ取られているんだが、どう言うことなんだ?

転移   (完)

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 光が収まりそこに残っていたのは勇者と床に開いた大穴だけだった。
 シアが周囲に張った結界に張り付いていたゾンビは全て光によって消滅し、周りに立ち込めていた黒い靄も完全に晴れている。

「まさか、あの剣が王城の地下にあるとは」
「さっき上に飛んでいった奴か?」
「ああ、聖剣エクスカリバーだ。一応私も神託で聞いていたけど、何処にあるかまでは知らなかった。何故王城の地下にあったのかはわからないけどね」

 聖剣エクスカリバー。確か過去の勇者が魔王を倒した時に使っていたとされている伝説の剣だったか。と言うことはこの国を作った人物は勇者だったのか? 建国神話に載っていたが眉唾物だと思っていたのだけど。

「建国の話に出て来る剣の事ですね」
「ああ、確かに。なるほど、そう言われれば納得できるところはあるな」

 周囲を確認して安全だと判断したシアが周りに貼っていた結界を解く。
 そう言えば上に飛んで行った聖剣はどうなったんだ? まさか、魔王と一緒に消滅したのか?

「勇者」
「ん? 何だい書記官君?」

 キャラが戻っているな。やはりこっちが素か? 
 勇者に話しかけると、先ほど魔王と対峙して剣を飛ばした時とは大分雰囲気が違っていた。

「さっきのやつは何なんだ? エクスカリバーらしいけど、どうしてある場所を知っていた? お前碌に王城に入ったことは無いだろう?」
「ははは、確かに王城の中はあまり知らないね。まあ、あれが下にあったことは元から知ってはいたけど、理由は教えられないかな。大した理由じゃあないけどさ」
「そうか」

 大した理由が無いのなら教えてくれてもいい気はするんだけど。まあ、それ以外で教えたくない理由があるのだろうな。

「おっと、ちょっと危ないからまだ近付かないでくれ」
「ん? ああ」

 勇者の制止に近付こうとしていた俺は足を止める。それと同時に上から何かが高速で落下してきて穴の下へと落ちていき王城を少しだけ揺らした。

 おい、まさか今のはさっき上に飛んで行った聖剣か? 上に上がってそのまま落ちてきてって感じなのだろうけど、あれだけ高速で落ちてきたら壊れたりするんじゃないか?

「今のは聖剣? 大丈夫なのか?」
「はは、曲がりなりにも聖剣だよ? あれくらいなら問題ないはずさ。…多分」

 多分っておい。勇者ですら大丈夫かどうか、正確に判断できないのかよ。

「いやぁ、でも。こっちに被害なく魔王も倒せてよかったよ。これでも3回目だからね。多少は分かってはいたけど、イレギュラーはどうすることも出来ないし」
「3回目?」
「あーいや、気にしないで」

 何かこうなることがわかっていた風の話し方なんだけど、どうしたんだ勇者。この後何かがあるのか?
 あ、そう言えば、王族が壊滅状態だから褒賞とかはどうなるんだ? 王都がヤバイ状況で言うのもなんだけど、これからこの国はどうなるのだろうか。他国に行った元王族を呼び戻すのかな?

「さて、私もそろそろ時間だ」
「時間?」

 いや、本当にさっきから何なんだ勇者。何かしんみりした表情をしているのだけど。

「時間か」
「え、ちょっ!?」

 勇者の体が光る。いや、これは透けて来ているのか? とりあえず勇者の体に異変が生じ始めた。

「えぇ? 何これ。どうなっているんだ勇者」
「まあ、元の世界に戻るためのやつかな」
「はい?」

 元の世界に戻る? どう言う…、え。まさか、この勇者って転生者だったのか? ちょくちょく変なことを言っていたりもしたけど、それなら納得出来るような、出来ないような。

「まあ、私の役目は終えたから居なくなっても問題は無いはずだ」
「いやいや、他の奴らに説明する必要はあるだろう!?」
「それは聖女がいればどうにかなるよ」
「まあ、そうか。じゃなくて! え? こうもあっさり居なくなるものなのか?」
「さぁね、って、ああもう時間が無いな。仕方ない。書記官君、いやラン君。道中はすまなかったね。何かとタイムアタックしてしまった所為で苦労を掛けてしまった。まあ、あれが最善手だったから仕方のない事なのだけどさ。君からしたら言いたいことは色々あるだろうけどとりあえず、すまなかった」

 勇者の体がより薄くなる。本当に転移するのか。と言うか、転移する瞬間とかを見られるってかなり貴重だな。勇者が話しかけてきているからその感動は薄まっているけど。
 と言うか、すまないとは思っていたのかよ。だったら、少しは手加減…したら、間に合わなかった事件とかもあったから、仕方ないのか。フィアの救助にもそれで間に合ったし、そこまで恨んではいないぞ。

「ああ、それと聖女様とは幸せにね。妹の方ではないぞ?」
「え、ああ。ん?」
「それじゃあ、さらばだ!」

 最後の一言を残し勇者が完全に消えた。元の世界に戻ったのか、と思う前に何で勇者は俺とシアが付き合っていることを知っているんだ? 一度も話したことは無いし、旅をする前にも仕事場で言ったこともないのだけど? マジで何なんだったんだ、あの勇者は。


 そうして、魔王討伐の旅は終わりを迎えた。色々腑に落ちない所はあるけどな!

 その後、近隣の村に逃げていた住民やそれを守っていた騎士。その中に紛れ込んでいた第2王子が王都に戻り復興を進めている。

 そんな中俺らは王都を離れていた。旅に出たとかではなく、完全な帰省だ。いや、一時的に戻る訳でもないから出戻りか? 言い方がわからないがそう言うことだ。

 第2王子から褒賞の話が出たが、大半は断った。王都の状況を見るに多額の褒賞などを貰うと厄介ごとが付いて来そうな気配がしたので、多少の金品を貰ってさっさとその場を離れたのだ。
 あれは確実に居なくなった貴族の後釜に添えようとしていた。しかもフィアのことを娶ろうともしていたから、結局はあの王や王子の関係者だと強く感じた。なので、今後とも関わらないようにと王都から離れた実家がある村へと戻ることにしたのだ。

 まあ、俺たち兄妹の親は既に他界しているから当分の間はシアの家に厄介になるだろうけど。少なくとも王都で過ごすよりは確実にいいはずだ。

 序でに王との教会は関係者がフィア以外全滅したので、フィアの立場に関しては自然消滅してしまっている。どうもフィアの聖女認定は王都の教会の独断によるものだったようで、他の場所の教会はそれに従っていただけらしい。まあ、それは旅の途中で知ったことなのだけど。

 という訳で、聖女が居なくなったことでシアの役職は普通の騎士に戻り、事のごたごたに乗じて辞めてきた感じだ。
 俺に関しては、部署どころか王城内がほぼ空っぽの状態になってしまったので、辞める辞めないの話ではない。一応、残ってくれたら好待遇で持て成すとは言ってくれたが、あの状態の好待遇って良いイメージが湧かなかったので速攻で断った。どう考えてもデスマーチ一直線な気がしてならない。

 そんなこんなで、これからは村に戻ってしばらくは静かに暮らすことになりそうだ。

 あの勇者が結局どこから来たのか、どうしてあんな感じだったのかは最後までわからなかったけど、とりあえず魔王を倒したことは事実であり、偶然だろうがフィアの救助に間に合ったのは勇者のおかげだ。おそらくあの場に間に合っていなかったらフィアは魔王に殺されていただろう。もしかしたらシアもただでは済んでいなかったかもしれない。

 俺を振り回していたのは事実だし腹も立つが、一応最後に謝ってくれたからな。そこは気にしないようにしよう。

 俺たちに被害なく魔王を倒せたのは勇者のおかげだ。だから感謝しているぞ。



 まあ、最後までよくわからない奴ではあったけどな。

 今は何処で何をしているのだろうか。まさか、どこかでまた魔王と戦っている訳ではないよな?

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