33 / 44
え? あの殿下、それは私ではないのですが
夜会の後の話し合い
殿下が突然ローズお姉さまと間違えて私へ求婚してきた夜会の翌々日。
いつもよりも早い時間に起きてしまった私は、少しぼやけた頭を少しでもはっきりさせるために部屋の窓を開け、外の空気を部屋の中に取り込むことにしました。
あの時の殿下の態度に関して、まだ王宮からの対応はありません。いえ、別まだ2日前のことですから対応が遅いわけではないですし、なかったことにしていただいてもいいのですが、状況的にそうも言っていられませんよね。
ローズお姉さま。お姉さまは未だ体調が悪いからと部屋から出てくる様子はありません。できれば殿下との間に何があったのか、説明してもらいたいところなのですが、出てこない以上話を聞くこともできません。
しかし、頑なに部屋から出てこないところからして、何かしらあの殿下の行動に心当たりはありそうな気はします。
最悪、明日も部屋から出てこないようでしたらお父様、いえ、お母様の方がいいですね。無理やり部屋の入る許可をもらうことにしましょう。
さて、そこそこ思考がはっきりしてきましたので、メイドを呼んで今日の支度でもすることにしましょう。
部屋を出る支度も済んだので少し早いですが部屋を出ました。朝食の時間もまだなので、庭に出て時間をつぶしましょうか。
朝のやや冷えた空気を感じながら庭の花などを眺めているところで、近くに存在している我が家の馬車庫が目に入りました。
「そいう言えばリリ」
「なんでございましょう?」
「あそこに馬車が置かれているということは、お父様は帰ってきているのかしら」
私や付き添いでその場にいた執事から夜会の話を聞いたお父様は部屋から出てこないローズお姉さまに2、3言葉をかけた後、早急にどこかへ出かけていきました。
そして、その日から昨日の夜まで帰ってくることはありませんでした。おそらく王城の方へ出向いて対応をしているのでしょうけど。
それと、お父様の言葉に対してローズお姉さまからの短い返事しかありませんでしたが、今まで部屋から出てこない姉に対して何もすることがなかったので、もしかしたら姉から何かしらの話なり相談を受けていたのかもしれません。
「昨日の夜中にご帰宅なされました。お嬢様はすでに就寝された後だったので、気づかれなかったようですが」
「あら、そうだったの」
「はい」
それでしたら朝食の際に、軽く聞いてみるのもいいかもしれませんね。
朝食を終え、お父様と王宮での対応のあれこれを聞いた後、私とお父様は姉の部屋の前に来ていました。
あの夜会で起きたことに関して王宮で話し合いをして来たお父様でしたが、王宮側がなるべく事を大きくしたくないと提案して来たらしく、ローズお姉さまへフロイデン殿下から婚約の打診が行われたそうです。
まぁ、こちらに関してはすでにお父様は断ってきたようですけれど、ローズお姉さまへ婚約の打診があったということは、フロイデン殿下とデリエント様の婚約はあの夜会の後に破棄されたということですよね。
王子とは言え王族の発言ですし、人の多い夜会の場で堂々と婚約破棄の宣言をしてしまった以上、デリエント様との婚約破棄はなかったことにできないのでしょう。
それにお父様も濁していましたが、デリエント様の家であるオリシュ公爵家からも破棄の申し出があったようですし、何をしても避けることが出来なかった結果ですね。
しかし、この動きからして、もしかしたらフロイデン殿下は結構危ない状況なのかもしれません。
公爵家と言えば、現王政の後ろ盾のような存在ですし、その家の者と王族の婚約は今後の政治を万全にするための物。
それなのに勝手に婚約を破棄してしまい、その上相手の公爵家からも申し出があったということは、捉え方によりますが今後現王政の後ろ盾にはならないともとれるんです。
殿下に関してはあの時の様子からこのあたりのことまで考えていなかったのでしょうけれど、殿下のお付きの方々は相当頭を抱えているでしょうね。
「ローズ。少し聞きたいことがある。ドアを開けてもいいかな」
「お父様、ごめんなさい。開けられませんわ」
どうやら私たちが部屋の前に来ていることを把握していたのか、そう間を開けず部屋の中からローズお姉さまはそう答えました。
「どうして開けられないのか聞いていいかな」
「…言えませんわ」
ローズお姉さまは昔から気が弱い人でしたが、その分勘が鋭いと言いますか、自分にとって不利益になりそうなことから逃げるのが早かったんですよね。
この騒動もその結果起きたことなのですが、今回はずっと逃げ続けるというわけにはいかないのです。
「ローズ。すまないが部屋の中に入らせてもらう」
「駄目です!」
部屋の中に入ろうとお父様がドアノブを回すと部屋の中からローズお姉さまの大きな拒否が聞こえました。
「すまないが、そうも言ってられないんだ。ドアを開けてくれないか」
「無理です!」
ローズお姉さまはお父様の問いかけにも即答でそう返してきました。
これまでの反応を返してくるとなれば、さすがにフロイデン殿下との間に何があったのか聞かなければならないでしょうね。気弱なローズお姉さまがここまで強く拒否を伝えてくるのも今までありませんでしたし。
「どうしてもか?」
「だって、ここから出たら私をあの殿下のところへ連れて行くのでしょう!」
なるほど、そういうことですか。
相手は王族ですし、親が殿下の要求に応えてしまえば娘であるローズお姉さまに拒否権はありません。お父様が殿下から直接言われたくらいでは許可するとは思えませんが、この国に属する貴族である以上、殿下より上の方から命令されてしまえば拒否することは難しいですからね。
昨日の夜会を欠席したのもこれが理由だったのでしょう。
「そんなことはしない。ローズと殿下の間にどのようなやり取りがあったのかを聞きたいだけなんだ」
「……本当、ですか…?」
「ああ。この状況でウソを言うようなことはしない。今までもそうだっただろう」
「…………はい。わかりました」
必死に部屋の中に入らせないように抵抗していたローズお姉さまでしたが、お父様から否定の言葉を聞くとあっさり抵抗をやめ、私たちを部屋の中に招き入れました。
そうして私たちを部屋に招き入れてからしばらく、最初は警戒していたのか少し落ち着かない様子だったローズお姉さまが落ち着いたところで、お父様が話を切り出しました。
「仮病を使ってまで部屋にこもっていた理由はわかったが、殿下との間で何があったのか教えてくれないか?」
「その、えっと……――」
お父様の言葉に恐る恐るといった感じに殿下との間にあったことを説明し始めました。
フロイデン殿下と直接面識のなかったローズお姉さまが初めて接触したのは学園の中。
いつものように図書館で読書をしているとお姉さまのところへフロイデン殿下がやってきたようです。その時フロイデン殿下は少し視線を向けてきただけで、特に何か声をかけてきたわけではなかったと。
それでその数日後、同じように図書館で本を読んでいると殿下がやってきて話しかけてきたらしいです。話の内容としてはどこの家の者なのか、どのような本を読んでいるのか、といった他愛のない内容。
この時のローズお姉さまとしては、あまりかかわりたくない殿下の相手を何とか凌いだくらいの認識だったようですね。
しかし、その対応がフロイデン殿下の琴線に触れたのか、その日からちょくちょくフロイデン殿下はローズお姉さまの元へ訪れるようになっていったと。
学園内では私とローズお姉さまは一緒に行動することが多いですが、お姉さまが図書館へ行っている間は別行動をとっているので、その間に遭遇したのでしょうね。
それが今からおよそ1月前の話。
そして3日ほど前。夜会の2日前に学園で例によってローズお姉さまの元へ来たフロイデン殿下が、お姉さまに対し次の夜会に参加するのかと確認をしてきて、その場では参加すると返事をしたものの嫌な予感を察したローズは仮病を使って夜会を欠席したという流れのようです。
結果として参加していた私がフロイデン殿下にローズお姉さまと勘違いされ、あの状況が発生したということのようですね。
…………そのようなことがあったのなら隠さずしっかり報告してください! ローズ姉さま!
最初の接触ならともかく2度目の時点で報告してくれていれば、今回の事態は回避できていたでしょうし、夜会の前日だったとしても私が急遽欠席する形をとることで回避が可能でした。
私としてもあのような場面に遭遇することはなかったでしょうし、フロイデン殿下とデリエント様の婚約が白紙になることもなかったでしょう。
今更のことではではありますが、本当に報告・連絡・相談はしっかりしてくださいませローズお姉さま。
あなたにおすすめの小説
「小賢しい」と離婚された私。国王に娶られ国を救う。
百谷シカ
恋愛
「貴様のような小賢しい女は出て行け!!」
バッケル伯爵リシャルト・ファン・デル・ヘーストは私を叩き出した。
妻である私を。
「あっそう! でも空気税なんて取るべきじゃないわ!!」
そんな事をしたら、領民が死んでしまう。
夫の悪政をなんとかしようと口を出すのが小賢しいなら、小賢しくて結構。
実家のフェルフーフェン伯爵家で英気を養った私は、すぐ宮廷に向かった。
国王陛下に謁見を申し込み、元夫の悪政を訴えるために。
すると……
「ああ、エーディット! 一目見た時からずっとあなたを愛していた!」
「は、はい?」
「ついに独身に戻ったのだね。ぜひ、僕の妻になってください!!」
そう。
童顔のコルネリウス1世陛下に、求婚されたのだ。
国王陛下は私に夢中。
私は元夫への復讐と、バッケル伯領に暮らす人たちの救済を始めた。
そしてちょっとした一言が、いずれ国を救う事になる……
========================================
(他「エブリスタ」様に投稿)
私を棄てて選んだその妹ですが、継母の私生児なので持参金ないんです。今更ぐだぐだ言われても、私、他人なので。
百谷シカ
恋愛
「やったわ! 私がお姉様に勝てるなんて奇跡よ!!」
妹のパンジーに悪気はない。この子は継母の連れ子。父親が誰かはわからない。
でも、父はそれでいいと思っていた。
母は早くに病死してしまったし、今ここに愛があれば、パンジーの出自は問わないと。
同等の教育、平等の愛。私たちは、血は繋がらずとも、まあ悪くない姉妹だった。
この日までは。
「すまないね、ラモーナ。僕はパンジーを愛してしまったんだ」
婚約者ジェフリーに棄てられた。
父はパンジーの結婚を許した。但し、心を凍らせて。
「どういう事だい!? なぜ持参金が出ないんだよ!!」
「その子はお父様の実子ではないと、あなたも承知の上でしょう?」
「なんて無礼なんだ! 君たち親子は破滅だ!!」
2ヶ月後、私は王立図書館でひとりの男性と出会った。
王様より科学の研究を任された侯爵令息シオドリック・ダッシュウッド博士。
「ラモーナ・スコールズ。私の妻になってほしい」
運命の恋だった。
=================================
(他エブリスタ様に投稿・エブリスタ様にて佳作受賞作品)
役立たずと追放された令嬢ですが、極寒の森で【伝説の聖獣】になつかれました〜モフモフの獣人姿になった聖獣に、毎日甘く愛されています〜
腐ったバナナ
恋愛
「魔力なしの役立たず」と家族と婚約者に見捨てられ、極寒の魔獣の森に追放された公爵令嬢アリア。
絶望の淵で彼女が出会ったのは、致命傷を負った伝説の聖獣だった。アリアは、微弱な生命力操作の能力と薬学知識で彼を救い、その巨大な銀色のモフモフに癒やしを見いだす。
しかし、銀狼は夜になると冷酷無比な辺境領主シルヴァンへと変身!
「俺の命を救ったのだから、君は俺の永遠の所有物だ」
シルヴァンとの契約結婚を受け入れたアリアは、彼の強大な力を後ろ盾に、冷徹な知性で王都の裏切り者たちを周到に追い詰めていく。
妹は私から奪った気でいますが、墓穴を掘っただけでした。私は溺愛されました。どっちがバカかなぁ~?
百谷シカ
恋愛
「お姉様はバカよ! 女なら愛される努力をしなくちゃ♪」
妹のアラベラが私を高らかに嘲笑った。
私はカーニー伯爵令嬢ヒラリー・コンシダイン。
「殿方に口答えするなんて言語道断! ただ可愛く笑っていればいいの!!」
ぶりっ子の妹は、実はこんな女。
私は口答えを理由に婚約を破棄されて、妹が私の元婚約者と結婚する。
「本当は悔しいくせに! 素直に泣いたらぁ~?」
「いえ。そんなくだらない理由で乗り換える殿方なんて願い下げよ」
「はあっ!? そういうところが淑女失格なのよ? バーカ」
淑女失格の烙印を捺された私は、寄宿学校へとぶち込まれた。
そこで出会った哲学の教授アルジャノン・クロフト氏。
彼は婚約者に裏切られ学問一筋の人生を選んだドウェイン伯爵その人だった。
「ヒラリー……君こそが人生の答えだ!!」
「えっ?」
で、惚れられてしまったのですが。
その頃、既に転落し始めていた妹の噂が届く。
あー、ほら。言わんこっちゃない。
「前世の記憶がある!」と言い張る女が、私の夫を狙ってる。
百谷シカ
恋愛
「彼を返して! その方は私の夫なのよ!!」
「ちょっと意味がわかりませんけど……あの、どちら様?」
私はメランデル伯爵夫人ヴェロニカ・フェーリーン。
夫のパールとは幼馴染で、現在はおしどり夫婦。
社交界でも幼い頃から公然の仲だった私たちにとって、真面目にありえない事件。
「フレイヤよ。私、前世の記憶があるの。彼と結婚していたのよ! 彼を返してッ!!」
その女の名はフレイヤ・ハリアン。
数ヶ月前に亡くなったパルムクランツ伯爵の令嬢とのこと。
「パルムクランツ卿と言えば……ほら」
「あ」
パールに言われて思い出した。
中年に差し掛かったアルメアン侯爵令嬢を娶り、その私生児まで引き取ったお爺ちゃん……
「えっ!? じゃあフレイヤって侯爵家の血筋なの!?」
どうしよう。もし秘密の父親まで超高貴な方だったりしたらもう太刀打ちできない。
ところが……。
「妹が御迷惑をおかけし申し訳ありません」
パルムクランツ伯爵令嬢、の、オリガ。高貴な血筋かもしれない例の連れ子が現れた。
「妹は、養父が晩年になって引き取った孤児なのです」
「……ぇえ!?」
ちょっと待ってよ。
じゃあ、いろいろ謎すぎる女が私の夫を狙ってるって事!? 恐すぎるんですけど!!
=================
(他「エブリスタ」様に投稿)
政略結婚で「新興国の王女のくせに」と馬鹿にされたので反撃します
nanahi
恋愛
政略結婚により新興国クリューガーから因習漂う隣国に嫁いだ王女イーリス。王宮に上がったその日から「子爵上がりの王が作った新興国風情が」と揶揄される。さらに側妃の陰謀で王との夜も邪魔され続け、次第に身の危険を感じるようになる。
イーリスが邪険にされる理由は父が王と交わした婚姻の条件にあった。財政難で困窮している隣国の王は巨万の富を得たイーリスの父の財に目をつけ、婚姻を打診してきたのだ。資金援助と引き換えに父が提示した条件がこれだ。
「娘イーリスが王子を産んだ場合、その子を王太子とすること」
すでに二人の側妃の間にそれぞれ王子がいるにも関わらずだ。こうしてイーリスの輿入れは王宮に波乱をもたらすことになる。
妹が私の婚約者と結婚しちゃったもんだから、懲らしめたいの。いいでしょ?
百谷シカ
恋愛
「すまない、シビル。お前が目覚めるとは思わなかったんだ」
あのあと私は、一命を取り留めてから3週間寝ていたらしいのよ。
で、起きたらびっくり。妹のマーシアが私の婚約者と結婚してたの。
そんな話ある?
「我がフォレット家はもう結婚しかないんだ。わかってくれ、シビル」
たしかにうちは没落間近の田舎貴族よ。
あなたもウェイン伯爵令嬢だって打ち明けたら微妙な顔したわよね?
でも、だからって、国のために頑張った私を死んだ事にして結婚する?
「君の妹と、君の婚約者がね」
「そう。薄情でしょう?」
「ああ、由々しき事態だ。私になにをしてほしい?」
「ソーンダイク伯領を落として欲しいの」
イヴォン伯爵令息モーリス・ヨーク。
あのとき私が助けてあげたその命、ぜひ私のために燃やしてちょうだい。
====================
(他「エブリスタ」様に投稿)
私と婚約破棄して妹と婚約!? ……そうですか。やって御覧なさい。後悔しても遅いわよ?
百谷シカ
恋愛
地味顔の私じゃなくて、可愛い顔の妹を選んだ伯爵。
だけど私は知っている。妹と結婚したって、不幸になるしかないって事を……