俺はただ怪しい商人でいたかっただけ

みるこ

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プロローグ

どうしてこうなった

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「フフフ……いらっしゃァい」
 表通りから少し外れた裏路地、人里離れた山の中、数多の夢見る冒険者が儚く散ったダンジョンにまで。
 例えどんなに険しい場所でも望まれればふらりと現れ、その時その場所でしか手に入らない品物を提供する。その品揃えは多種多様で、街では手に入らない、古い文献でしか目にすることができないようなモノまで取り揃えている幻の商店。

 それが、俺、いや、俺達家族の生業だ。

「フフ、こいつァつい最近手に入った代物でなァ……」
「なあ聞いてくれよぉ商人さぁん!!」
「いやいや、だから俺はお前さんの話相手じゃなくてだなぁ!」
「だって商人さんにしか話せないんだよ~! こないだあそこのダンジョン潜ったらさぁ……」

 俺は幻の商店を営む怪しい商人、だったはずなんだがなぁ……。
 いつからか俺があくせく集めた商品ではなく、世間話や相談を目的に訪れるようになった常連客の話を適当に流しながら、俺はこっそりため息を吐いた。
 全くどうしてこうもうまくいかないのだろうか……。俺はただ神出鬼没な怪しい商人として珍しい商品を提供したいだけなのに……!
「(ごめんよぉ母さん父さん、それにご先祖様……。今日も商品は売れなさそうです!)」
「ねえちゃんと聞いてる? てか世界樹の葉があるってことはまたあいつ等の村に行ったわけ?」
「フフフ、流石お目が高いねェ。こいつァ世界樹の葉の中でも特に質の良いモンで……」
「ねえなんでそんな危ないとこばっか行くわけ? アンタが死んだら俺の話し相手いなくなっちゃうんだけど?」
 そう言いながら謎の迫力を漂わせてじりじりこちらに寄って来る客に何故か肌が粟立つのを感じ、俺はすぐさま商品を片付け転移した。後から聞こえてきた「またかよ~」という声を聞かなかったことにしながら、俺は数ある拠点の一つである深い森に建てた家に逃げ込み、ロッキングチェアにどかっと腰かけた。

「いやまじで、なんでこうなったんだ!?」
 座り心地の良い椅子にゆらゆら揺られながら、俺はこれまでのことを考えて頭を抱えるのだった。
「頼むから俺に構わないでくれよ……! 怪しい商人でいたいだけなんだよぉ!」

 これは、ゲームやファンタジー小説において目立たないがなんか凄いと言われるような、怪しい商品を扱う怪しい商人が、自分の仕事を全うするためになんやかんや頑張るお話である。
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