迷子猫(BL)

kotori

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第1章

3.ミケside

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「あっ…」

狭いトイレの中は、熱気帯びていた。
刺激を与えられる度に震える身体、荒くなる呼吸。

「……やらしいな、」

耳元で囁かれる声。
それにすら反応してしまうんだから、確かに俺はやらしいんだろう。
動きが激しくなると共に、声を漏らさないよう必死で歯を食いしばった。
壁に手をつけたまま、自分を貫くソレを全身で受けとめる。
苦痛さえも薄れさせ、快楽に歪む俺の表情を見て彼は笑った。

「……おまえのそんな顔が好きだ」

このど変態がと相手を睨みつつ、抑えきれない欲望に身を任せて自ら腰を振り続ける。
下の方から聞こえてくる、ぐちゅぐちゅという卑猥な音。
こっちの都合などまったく気にするつもりはないらしい相手への、せめてもの抵抗として下半身に力をいれた。

「……うッ、」

呻き声と同時に、じんと身体の奥が痺れた。

「は…ぁッ!」

口の中に指を突っ込まれ、それを夢中でしゃぶる。

「んんっ…!」

腰を掴まれ更に激しく突かれると、もう限界だった。
身体の中心に集まっていた熱が、いっきに外へと放出される。



「……とんでもねぇ奴だな、おまえ」
「さっさと服着ないと授業始まりますよ、先輩」
「ンだよ、冷てぇなあ」

再び下半身に伸びてくる手を払いのけて、笑顔を向ける。

「こっから先は、別料金です」

先輩は苦笑いしながら手を引っ込めた。

「ハイハイ。……次は、いつ会える?」
「先輩となら、いつでも」

上目使いでそう言うと、彼は小さな溜め息をついた。



先輩がトイレを出ていった後、周囲になんの痕跡も残ってないかチェックする。
そして一応、隣の個室も覗く。
この間は本当に迂闊だった。
行為に没頭してたとはいえ、誰かが入ってきたことに気づかないなんて。

最後に入念に手を洗う。
冷たい水が心地よくて、目を閉じた。
始業のチャイムが聞こえたけど、別に構わない。
どうせ次の授業は河西だ。

……俺がいないことに気づいたら、どうするかな

きっと夜にでも、連絡してくるだろう。



しばらくぼーっとしていると扉が開く音がして、振り向くとそこにはあいつが立っていた。
名前は確か…寺嶋だ。

「……残念だけど、今日はもう店終いだよ?」

冗談めかして言ってみたけど、あいつは笑わなかった。



前に河川敷で話した時から、こいつがどうも苦手だった。

……興味ナイとか言ってたくせに、

寺嶋が自分を見てることには、すぐに気づいた。
教室で、廊下で、グラウンドで…妙な視線を感じて振り向くと、そこには決まってこいつがいた。

他の連中のような、下心や好奇ではない視線。
だからといって、敵意や悪意を感じるわけでもない。
ただ見ているという感じ。
なんなんだよと思いつつ、じっと彼を見る。
すると寺嶋は、ぼそっと言った。

「……ここでするの、やめろって」
「………。なに、あんた風紀委員かなんか?」

ほっとけよと呟いて、トイレを出る。

「どっかヨソでやればいいだろ。なんでわざわざ、こんなとこで…」
「時間を有効活用してるだけ、」

人気(ひとけ)のない廊下は静かだ。

「大体、どこでヤったって同じじゃん」

今更教室に戻るのはめんどくさい。

……どうしよっかなぁ

両腕を伸ばしてノビをした。
狭いとこでするのは嫌いじゃないけど肩が凝る。
身体のあちこちが壁にぶつかって、痛いし。

……てかこいつ、なんでここにいんの?

「………」

……まぁいっか、どうでも

俺は考えるのをやめて、さっさとその場を離れた。


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