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第1章
17.海斗side
しおりを挟む「海斗」
昼休み、廊下を歩いていると裕太に引き留められた。
「なんだよ」
「……昨日おまえんちから電話あったけど。来てねぇかって」
……そういや連絡するの、忘れてた
「一応いるって言っといたけど…」
「マジで?助かったわ」
「おまえ、どこいたんだよ。電話でねーし」
「悪い。今ちょっとゴタゴタしててさ」
……取り敢えず今日は家に帰るか…
「……おまえ最近、変じゃねぇ?」
「……何が、」
「なんとなく。遅刻ばっかだし、来てもすぐ帰るし」
「……あぁ、なんかダルくて」
本当は毎日バイトしてるんだけど。
「……なあ、口止めされてたんだけどさ、やっぱ言うわ。気持ちわりぃし、こういうの」
「……は?」
振り向くと、裕太はいつになく真面目な表情をしていた。
「……この間、泣いてたぜ?美咲ちゃん」
「………」
「おまえ、どうして先帰ったんだよ」
怒りを滲ませた声。
「美咲ちゃんに訊いてもなんにも話してくれないし、ただおまえは悪くないからって、そればっかで…」
「………」
黙っていると、裕太が詰め寄ってくる。
「……答えろよ、」
……言えるわけねぇだろ
「……おまえには、関係ねぇよ」
「関係なくねえ!!」
ガッ、と襟を掴まれる。
「……っ、おまえあいつの友達と、仲良くやってたじゃねーか」
「それは美咲ちゃんがおまえと話したそうにしてたからで、」
「余計な世話なんだよっ!」
乱暴に腕を振り払った。
……何も知らないくせに
それがどんなに理不尽な怒りだとわかっていても。
……俺が、どんな思いで
とめられない。
悪いのは自分なのに。
裕太の声を無視して屋上に向かう。
階段を上がりドアを開ければ、今にも雨が降りだしそうなどんよりとした曇り空。
生ぬるい風が肌を撫でる。
「………」
ミケに、会いたい。
ミケの身体には至る所に内出血の痕が残っていて、うっすらと血が滲んでいるところもあった。
――……ッ
傷口を舐めると沁みるのか、ピクッと反応した。
なんだかやりきれない気持ちになりながら、その一つ一つに口づけていく。
――……ガッコ、行かなくて、いいのかよ…
身を捩らせながらミケが言う。
――……んなの、もうどうでもいい
なんて冷たい身体なんだろう。
なぁどうしたら、おまえを暖めてあげられる?
――……ミケ、
どうしたら、その眼に俺を映してくれるんだろう。
――……好きだ
どうしたら、その心に俺の言葉が届くんだろう。
――……あ…っ!
太腿に舌を這わせると、また身体が震えた。
そのまま、もっと内側にある彼のペニスに触れる。
少しずつ荒くなっていく息遣い。
――……もっと、
不意にミケが言った。
――……え?
――……もっと乱暴に、していいから
少し苛立った声。
――……嫌だ
……てゆうか、
――そんなこと、したくない
そう言うと、ミケはなぜか泣きそうな顔をした。
俺はミケを犯していた。
前みたいに強制的にそうさせられたのではなく、自分の意志で。
できるだけ負担がないようにという思いに矛盾して、苦痛と快楽に顔を歪ませて喘ぎ声を漏らしている彼に俺は欲情した。
ゆっくりと愛撫を施しながら、彼が緩やかに壊れていく様をもっと見たいと望んだ。
傷をつけたいんじゃない。
刻みつけたい。
そう思った。
イク、と呟いた彼を強く抱きしめた。
腰を激しく動かしながら好きだと耳元で囁くと、バカじゃんと切れ切れにミケは言い、しがみついてくる。
――あ、あっ!いや……あ!
びくん、と身体が跳ねると同時に、きゅうっと結合部が締まる。
――……っ!
重なる鼓動と、混じり合う体温と。
それでもまだ、遠くかけ離れたところにある、互いの心。
目が覚めると、腕のなかにいた筈のミケはいなくなっていた。
どこに行ったのか見当もつかないし、携帯の番号もわからない。
一人で焦ってたら、テーブルの上にカギが置いてあるのを見つけた。
でも帰る気にはならなくて、朝まで待った。
だけどミケは戻ってこなかった。
あれからずっと、学校にも来てない。
「海斗、」
背中を叩かれて、目が覚めた。
「おまえどんだけ寝れば、気ぃ済むんだよ」
「……移動?」
「アホか、放課後だって」
「……マジで?!」
ガバッと起き上がる。
「おまえどんなに起こしても、全然起きねーんだもん。担任も呆れてたし」
良平がげらげら笑いながら言う。
「おまえ、最近なんか疲れてねえ?大丈夫か?」
「……平気」
「今からみんなでカラオケ行くけど、どうする?」
「ごめん、パス」
そっかわかった、と良平。
「……ところでさあ、おまえ裕太と揉めてんの?」
「………」
こいつはそういう空気に敏感だ。
「あいつまた、なんかしたの?」
俺が説教しとこうか?と冗談っぽく笑う。
「……いや、俺が悪い」
「へえ、珍しい。早く仲直りしろよ?」
ぽんと肩を叩くと、じゃあなと言って良平は教室を出ていった。
「………」
何も話さない俺のことを、心配してくれる友達。
たまにウザいと思うこともあるけど、俺を大切に育ててくれている両親。
そういう人たちに囲まれて生きている俺は、きっと幸せなんだろう。
ぼんやりとそんなことを思っていると、教室のドアが開いた。
「お、まだいた」
「……先生、」
顔だけ覗かせた河西は、ちょっといいかと手招きした。
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