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第5章
12.
しおりを挟む夢を見た。
夜の砂漠を照らす月。
その柔らかな光は漂う雲に色をつけ、どこまでも続く地表を白く照らした。
時折吹く風に流される砂はきらきらと輝き、時が止まったような無音の世界に僅かな変化を見せた。
「………」
「………」
まだ、夢の続きを見ているのかと思った。
「……た、ただいま、ハニー」
いつの間に戻ってきたのか、俺の髪に触れながらそんなことを言ったあいつに無言で枕を投げつけた。
「ぶっ、」
「しねよ」
そのまま布団に潜り込んで丸くなる。
……何がハニーだ、バカ
「………」
「……ミケ、」
俺を呼ぶその声に、心臓がどくんと音をたてた。
「遅くなって、ごめん」
「………」
ふわりと布団を捲られ、急に視界が明るくなる。
「……見るなよ」
顔を見られたくなくて背を向けたまま呟くと、後ろから抱きしめられた。
「……ミケ、」
その腕に包まれると、胸がいっぱいになって。
その声を聞くともう全部、どうでもいいような気がした。
「……遅ぇよ、バカ…」
「うん」
「ずっと、待ってたのに」
「うん」
「連絡、くれないし…」
「うん、ごめん」
とうとう涙が溢れてきて、ぎゅっとその腕を抱きしめかえした。
「嘘つき」
わかってる。
いろんな事情があったってことも。
あんたは優しいから、放っておけなかったってことも。
わかってるけど。
「嘘つきっ…」
でもあんた言ったじゃん、ずっと傍にいるって。
もう俺は一人じゃないって。
「……ごめんな、」
不安だったよな、と海斗は俺の耳元で言った。
「もう、どこにもいかないから」
約束するから、と首筋に優しいキスが落ちてくる。
「……ただいま、ミケ」
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