迷子猫(2)

kotori

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第1章

8.

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「……の、」
「………」
「あの、すみません」

重い瞼を持ちあげると目の前に見知らぬ男の顔があって、ぎょっとして飛び起きた。

「?!あっ…、あんた誰だよっ?!」
「勝手にお邪魔して申し訳ない。こちらは三宅くんのお宅…で間違いないでしょうか?」
「はぁ?」
「ええと、私は彼の同僚の華原といいます。実は…」

いまいち状況が掴めずにいると、おい起きろ三宅とスーツ姿の男は言った。

「ほら、家に着いたぞ」
「ミケ?!」

彼は背中で眠りこけているミケをゆっくりとソファーに降ろす。
するとミケは真っ赤な顔で、うぅん…と小さく唸った。

「てかおま、酔って…飲めねぇくせに、なんで」

慌てて今にも倒れてきそうなミケを支える。

「いや、どうもウチの連中が無理に勧めたようで」

ミケの鞄と鍵をテーブルに置いて、カハラと名乗った男は言った。

「本当に申し訳ない」
「……いえっ、こちらこそご迷惑をお掛けして」

様子と見た目からしてたぶん上司かなんかだろうと思い、慌てて謝る。

「あ、あの、こいつ何かやらかしませんでした?」
「いや、特には…。でもまさか、ここまでとは思わなかったというか…」

話を聞くところによると、ミケはジョッキ半分のビールで熟睡していたらしい。

「すみません、ほんとに」
「いやいや。あとは君に任せて大丈夫かな」
「あ、はい」

じゃあ下でタクシーを待たせてるから、と言って華原は帰っていった。



「……ったく、何やってんだよ」

取り敢えずコートとスーツの上着を脱がせると、呑気に眠っているミケの額にデコピンする。
するとうぅ…、と呻き声が聞こえた。

「……痛い…」
「起きたか?」
「……海斗?」

ほら、とペットボトルの水を差し出したけど、ミケはそれを受け取らず俺の首に腕を絡める。

「………」

そしてキスをしながら膝の上に乗っかってきた。

「……おいこら、まだ酔ってんのか」
「……キス、」

そう潤んだ瞳で促され、また唇を重ねる。

「んっ…、ふ」

誘われるがままに舌を絡めると、甘い吐息が漏れた。
アルコールの所為なのか、ミケの頬は僅かに紅く染まっている。
けれシャツの中に入ってきた手は、やはり氷のように冷たかった。

「……ちょ、おい」
「………」

そのまま服を脱がせようとしてくるミケの手を掴む。
そしてもう片方の手で、彼の頬を軽く抓った。

「いいから水を飲めって、酔っぱらい」
「やだ。したい」
「おまえなぁ…」

経験上ミケがこうなると厄介だと知ってる俺は、小さな溜め息を吐いた。


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