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第3章
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しおりを挟む「あれ、林は?」
チェックした書類を返そうとして、彼がいつもの席にいないことに気づいた。
「さっきまでそこにいたと思いますけど…」
「ふーん…三宅は?」
「あ、資料室です。たぶん」
呼んできましょうか、と言う女子社員の肩をぽんと叩く。
「いいよ、自分で行くから。おまえたちも今日は早く帰れよ」
「はーい」
「室長も、たまには早く帰ってくださいねー」
「俺はいいんだよ、どうせ帰っても寂しい一人酒だから」
「えーっ、またまたぁ」
「もー室長、そういう時には俺を呼んで下さいよ~」
明るい笑い声がフロアに響いた。
女子社員が元気なのは、うちの部署のいいところだと思う。
以前林にそんな話をしたら、彼は顔をしかめて言った。
ーーやかましいだけじゃないですか
林は仕事が速くミスも少ない、優秀な部下だ。
ただ、性格的なところで少々誤解を受けやすい。
……口下手というか、不器用というか…
その所為か、社内には彼の事を良く思わない人間もいる。
だけど俺は彼の他人にも自分にも厳しく、仕事には一切妥協しないところがいいと思っていた。
まぁ、新人の教育係には向いてなかったかもしれないが。
さてどうしたもんかなと思いながら、俺は階段を降りた。
地下にある資料室は、普段から殆ど人けがない。
「三宅ー、いるのかー?」
ドアを開けながら言う。
とその時、中から出てきた人間と勢いよくぶつかった。
「!うわ」
「……っ、」
「……林?」
おい、と引き留めるのを無視して林はそのまま走り去る。
「なんなんだ一体…」
ぶつぶつ言いながら室内に入ると、壁に凭れるようにして座り込んでいる彼の姿が目に入った。
「おい…三宅?!」
慌てて駆け寄ると、彼は顔を上げた。
「……しつ、ちょう」
「どうした?!大丈夫か」
「……はい…」
三宅は顔面蒼白で、小さく震えていた。
「林と何かあったのか?」
その言葉に三宅はびくりと反応する。
「……なんでも、ないです」
「そんなわけないだろ…取り敢えず、立てるか?」
「っ!」
俺の手を振り払った三宅は、はっとした顔をした。
「……っすみません、大丈夫です」
「三宅、おまえ…」
その細い手首にはくっきりと痣が残っている。
それによく見ると、衣服もかなり乱れていた。
「………」
自分の身体を抱きしめるようにして震える彼に、着ていた上着をばさりと掛ける。
「……荷物を持ってくるから、待ってろ」
そう言って立ち上がった時にふと、床に落ちていたそれに気づいた。
三宅に気づかれないようにそれを拾うと、足早に部屋を出た。
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