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後編
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しおりを挟む日曜日。
どこに連れて行かれるのかと思いきや、動物園だった。
「……ガキかよ…」
「そんなこと言わずに!楽しいっすよ?それに、初デートといえば動物園…ってどこ行くんっすか!!」
「帰る」
「先輩待って!わかった、デートじゃないから!」
当たり前だ。
てゆうか声でけえんだよっ。
渋々中に入ると、園内は案外広いようだった。
動物園なんて来たのは、どれくらいぶりだろう。
確か、幼稚園の時の遠足で…。
「先輩っ、見て見て!」
あいつは子どものようにはしゃいでいる。
……ついてけねーよ
動物なんか見て、何が楽しいんだよ…。
「超やる気ねーのあのゴリラ」
あいつが指さした方を見ると、ゴリラが遊具のタイヤの上でおっさんみたく寝っ転がっている。
そのあまりの人間臭さについ吹き出した。
「サチコだって。しかもメスかよ!」
「すげえな」
「…たまにフンを投げてきます…ってなんでだよ投げんなよ」
そんな事を言ってたら、ほんとにフンを投げつけてきた。
マジで投げやがったと二人でゲラゲラ笑いながら、今度はゾウを見に行く。
「ハナコでかいな」
「フンの量もハンパねえ!!」
「それもういいって。てか、ゾウって割と剛毛?」
「なんかつぶらな瞳…っ、なんかかかった!!」
「……鼻水?」
「……なに、俺今日なんか憑いてんの?」
次はパンダ。
パンダといえば動物園の人気者、なのですごい人だかり。
「見えにくいな」
「先輩、俺肩車しましょうか?」
「いらん」
「じゃあ抱っこ…んん?」
見れば小さな女の子が吉河のデニムを引っ張っている。
「………」
「………」
よっこいしょ、と女の子を肩車する吉河。
きゃーっと歓声をあげる女の子。
「見えたかー?」
「パンダさん、いたーっ」
「笹食ってるかー?」
「ううん、だっこしてるーっ。パンダさんたちなかよしだねーっ」
「……だっこって」
「交尾じゃねぇよな?」
「コウビ?」
「なんでもねーよ?そっかー、パンダさんたちは仲良しかー」
笑いながら女の子と話している吉河を見てると、なんだか微笑ましかった。
そしてしばらくすると女の子の両親がやってきて、ありがとうございましたとお礼を言われた。
「ばいばーい!」
父親に抱っこされて、笑顔で手を振る女の子。
「ねー先輩、なんか食わない?」
売店で、フランクフルトとソフトクリームを買う。
「……お前ほんと甘いもん好きだな」
「先輩その顔で甘いもの嫌いって、反則」
「どーゆー意味だ」
行儀が悪く食べながら歩いてまわる。
間近でみるライオンとトラに、二人してちょっと興奮する。
爬虫類は、吉河は興味津々だけど俺は苦手。
ふれあいランドで白いウサギを抱っこすると、吉河はなぜか悶絶して勝手に写真を撮りまくっていた(後で全部削除させたけど)。
「あっそうだ、ナミエさんにおみやげ買おうよ」
「……いやだ」
「いーじゃん、弁当のお礼ってことで」
「おまえが買えばいいだろ」
「もー、素直じゃないんだからー」
「………」
そしてあっという間に時間は過ぎ、閉園時間になった。
帰りの電車の中では、二人ともぐったりしていた。
「なんか、疲れた…」
「先輩、はしゃぎすぎ」
「はしゃいでねーし」
……ほとんど休憩しないでまわったもんな…
「でも先輩、まだ今日は終わってないよ?」
「……は?もう帰るし」
「ダメだって。あとゲーセンとカラオケと映画…」
「無理!どんだけ欲張りなんだよ。いいだろ、動物園行ったんだし」
「……だって」
「……また今度、行けばいいだろ」
「………。また今度、誘っていいの?」
……しまった…
と思った時にはもう遅い。
吉河は期待のこもった目で俺を見ている。
「……そのうちな」
「やっり!デートじゃん?!」
「……やっぱやめた」
「なんで?!!」
そしてその日も、ごく自然にあいつは俺の家に来た。
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