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しおりを挟む心臓が壊れるかと思うくらい、ばくばくしていた。
グラウンドは白く、眩しくて。
陽炎がゆらゆら揺れて。
――浩介、
打席に向かう俺の元に走ってきたのは、キャプテンの竹本くんだった。
――あいつだけじゃないよ
――……え?
――俺たちは全員、おまえの味方だから
竹本くんは言った。
――もし失敗しても、誰もおまえを責めたりしねーよ
ほら、とベンチの方を見る。
――……!
今まで緊張していたからか、全然聞こえてなかった。
俺を応援してくれる、みんなの声。
――みんな知ってっから、おまえが一生懸命練習してたこと
俺は、怖かったんだ。
試合に負けることよりも、みんなに失望されるのが。
やっぱりあいつダメじゃんって思われるのが。
――だから、頑張れ
竹本くんにそう言われてまた泣きそうになりながらも、俺は力強く頷いた。
「那波?最近来てないけど…」
「……そうですか…」
古いビルの地下にあるこのクラブに、那波は昔よく遊びに来ていたらしい。
那波の友達が教えてくれた。
「何あいつ、どうかしたの?」
金髪のお兄さんが、テーブルを拭きながら言う。
「いえ…ちょっと行方不明で」
「そーなの?うーん…でもあいつ、いっつもフラフラしてたからなぁ…」
そのうち帰ってくんじゃね?と言って、お兄さんは笑った。
――昔よく一緒に、ナンパしまくってさぁ
――ああっ、俺あいつに金貸してんだよ!
――またどっかの女の家に、転がりこんでんじゃん?
那波の友達は変わった人が多かったけどみんないい人たちで、那波はなんだかんだ言われながらも慕われてたみたいだった。
――もし見つけたら、また一緒に飲もうって言っといて
――あいついると、なんか盛りあがんだよね
――たまには連絡しろって、伝えて
なぁ、那波。
おまえ前に、自分のことがあんまり好きじゃないって言ってたけど。
おまえは結構、好かれてるよ?
その日も結局、那波は見つからなくて。
俺は一人、夕暮れの街を歩いていた。
……どこに行ったんだよ…
溜息を吐く。
最後に会ってから、もう一カ月が経っていた。
クリスマスどころか正月まで過ぎてしまった。
「………」
こんなに長いこと那波の顔を見ないなんて、今までになかったような気がする。
駅前の交差点で信号待ちをしていると、携帯が鳴った。
皐月さんからだった。
『――浩介?』
「はい、」
その時、隣りをサッカーボールが転がっていった。
『よかった繋がって。実はさ、那波が……』
ランドセルをからった男の子が、慌ててそれを追いかける。
「……!おいっ」
咄嗟に手を伸ばしたと同時に、男の子が顔をあげた。
急ブレーキの音と、悲鳴が辺りに響きわたる。
ぐるりと反転する景色。
携帯の向こうから聞こえた、皐月さんの声。
なあ、那波。
この時は自分でもびっくりしたんだ。
だってほら、俺反射神経鈍いじゃん?
だからさ……、
……ああ、そういえば
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