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水面下のバトル
しおりを挟むある日の学食にて。
「なー、教えろって」
「何を?」
「浩介の彼女」
「……さぁ―?」
梨香はサバをつつきながら明後日の方向を見る。
「なんで俺だけ仲間はずれ?!」
「あんた口軽いもん」
「んなッ」
失礼な!
「……あ」
「……あ」
振り返るとそこには那波が立っていた。
「おう」
「……こんにちはー」
「……こんにちはー」
にこにこ笑いあう梨香と那波。
「あれ、おまえら知り合い?」
別に?と二人は同時に答える。
「ほらー、瀬田くんかっこよくてチャラいって有名だからー」
「いやいや村上さんこそ、美人で酒癖悪いって評判だしー」
「……おまえら…なんか怖いんだけど…」
会話もだけど、その笑顔が。
「えー?なにがー?」
「………」
また同時だし。謎のシンクロ率。
本能的に何かを察知した俺は、話題を変えることにした。
「あ、そうだ那波、おまえ浩介のさー…っでえぇぇ!!」
「浩介が何?」
「なんでもないー」
「いやおまえヒールはねえよ!ありえねーよ!」
踏みつけられて喜ぶ趣味もないしな!
かわいそう、俺の足!
「そういえば今朝、こうちゃんすっごい寝不足って顔してたんだけどー、それで今も教室で寝てるんだけどー、瀬田くんなんか知らないー?」
「さあー?遅くまで勉強でもしてたんじゃねー?ところであいつ歌ヘタくそなのに、最近ちょくちょくカラオケ連れてかれてるみたいなんだけどー、村上さんなんか知らねー?」
「さあー?一人で練習でもしてるんじゃなーい?」
「………」
「………」
「……てかさ、そんなん本人に訊いたら?」
ぼそりと言うと、二人は揃って俺を見た。
思わずびくっとする俺。
「そうね」
「そうだな」
じゃあ俺行くわ、と那波。
うんまたねー、と手を振る梨香。
「………」
「………」
「………おまえらマジ、なんなの?」
「………別にー?」
梨香は笑顔で言うと、トレイを持って立ちあがった。
end.
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