5 / 16
キス
しおりを挟む>>本編おまけの続き(皐月side)
「待てって、」
「………」
「ただの冗談だから」
「………」
祐希は足をとめない。
「……だいたい、デコちゅーくらいで」
「………」
小さく溜め息を吐いて、その細い腕を捕まえる。
「……悪かっ」
「……いいよ」
ぽつりと呟く声。
「え?」
「いいよ、誰とキスしても。……浮気、しても」
「………」
祐希は顔をあげないまま、俺のシャツの裾を握った。
「……しても、いいから…」
「………」
無理して背伸びして、意地はって。
子どもだって思われたくなくて、なんでも平気なフリして。
目の前にいる祐希が、いつかの自分と重なる。
……バカだな
ぶに、と鼻をつまむ。
「ちょ、なにすっ」
「……するなって言えよ」
そう言ってキスをした。
目を見開いた祐希の小さな顎を捕まえて、もう一度唇を重ねる。
それはもう誰にも言い訳が出来ないような、濃厚なキスだった。
「……あとで、もっといっぱいしような」
そう耳元で囁くと、祐希はぴくっと震える。
俺は笑ってその柔らかい髪を撫でた。
「じゃあな」
……店の近所でベロちゅーはまずかったか…
店に戻る途中そんな事を思いながら振り返ると、祐希はまださっきの場所に突っ立っていた。
思わず吹きだしてばいばいと手をふると、それに気づいた祐希がはっとした顔をする。
途端に紅く染まる頬。
……かわいー…
帰ったら嫌というほど甘やかして、思う存分苛めてやろう。
そう決めて、俺は店の方へと歩きだした。
end.
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
8
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる