along-side 番外編

kotori

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旅行(3)

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夕食後。

「なぁ、機嫌なおせってば」
「………」
「……いーじゃん別に、バレたって」

……よくない!!仲居さん、笑顔で完全にスルーだったしっ

恥ずかしさのあまり布団に突っ伏していた俺は、ふらふらと立ち上がった。

「どこ行くんだよ」
「……風呂」
「あ、俺も一緒に入る」

那波はそう言うと、俺の手を引っ張った。

「ちょ…、だから風呂に行くって」
「なんとここ、部屋風呂付き」



その時までまったく気づかなかったけど、この部屋の外には見事な露天風呂がついていた。

「……那波」
「なに?」
「これはさすがに、あの料金じゃ無理だよな?」
「うん、まぁ」
「……っ、一体いくらしたんだよ、この部屋」
「そんなん別にどうでもいいじゃん、バイト代も入った事だし」
「~~っおまえなぁっ」

そうだった、こいつは遊ぶ事となると…。
でもバイト代は、学費にあてるって言ってたのに。
その為に毎日遅くまで働いて…そんな大切なお金を…。

「ムダ遣い、すんなよ…」
「……ムダじゃねえよ」

那波は俺を抱きしめながら言った。

「おまえといる時間は、一秒だってムダじゃないよ。俺にとっては」
「……な、なみ」

そのまっすぐな言葉に、胸を打たれた。

「それにしばらく…こんなふうに二人で、旅行なんてできないだろうし」
「………」
「だからいいじゃん、たまには贅沢しても。ほら、せっかくだから入ろうぜ?」

那波は笑って言った。
最近那波は少し変わったと思う。
なんか落ち着いたってゆうか、前より大人っぽくなった気がする。



「すごい…真っ暗」

人里離れ山に囲まれてるからか、露天風呂から見える景色は吸い込まれるような深い闇だった。
雨はいつの間にかやんでいて、聞こえるのは静かに流れる湯の音と山間を吹き抜ける風の音だけ。

「……なんか、怖い」

なんだか心細くなって呟くと、那波は笑った。

「子どもみたいなこと言うなよ」
「………。那波、」
「ん?」
「さっきはごめん」
「何が?」
「……俺も、那波と一緒にいる時間が大切だよ」

だから、おんなじ事を考えてくれていたことがすごく嬉しかった。

これから忙しくなって、会える時間が少なくなって。
自分の事に精いっぱいで、お互いの事を考える時間も減るかもしれない。

まだ知らない現実は、きっと想像してる以上に甘くないだろうし、嫌な事や辛い事だってあるだろうけど。
でもそれを乗り越えていくことは、大切な人と一緒に生きていく為でもあるから。

……だからきっと、頑張れる

湯のなかで、俺はそっと那波の手を握った。



「……んっ、…ふ」

初めは触れ合う程度だったキスは、どんどん深くなって。
腰を抱いていた那波の手がいやらしく動き回るせいで、俺の身体はいつしかお湯よりも熱くなっていた。

「肌、すべすべ」
「……っあ、」

うなじに噛みつかれて、思わず声をあげる。

「なっ…那波、もうダメ…」 

慌ててその逞しい胸を押しのけると、那波はちょっと笑ってなんで?と言う。
その顔があまりに綺麗で、一瞬見惚れそうになった。

「……っここ、風呂だしっ…」
「いーじゃん、家でもしてんじゃん」
「いいわけないだろ…っ、汚れるしっ」

それ以前にここ、外だし!誰かに聞かれたらどうすんだよ…!

「大丈夫、ここ源泉掛け流しだし。明日には綺麗になってるって」
「そういう問題じゃな…ああっ」

きゅっとソコを掴まれて、ビクンと身体が震える。

「……浩介だって、興奮してんじゃん」
「……っ、ひぁ…っ、まっ…っ」

急に身体に力が入らなくなって、那波の肩にしがみつく。

「や……っ、なな…」

湯の中で那波の手は、巧みに俺を追い上げていった。

「……も、ダメだっ、て…あ、あ…っ」
「……その顔、やべえ」
「……え…、んあっ!」

こんな状態で、同時に後ろを攻められたら。

「あっ、やだ、ななっ…!あ、ああんっ」

我慢なんて、できるはずがなくて。

「……やめっ…あ、ぁ…!」

那波の長い指にソコを刺激されると頭の中が真っ白になって、もうお湯が汚れる事だとかここが一応外だという事とか、一切考えられなくなってしまった。

「……っ!」

押し寄せる快感から逃れようとすればするほど感じてしまって、俺のなかにある那波の指を締めつける。

「……っ浩介、」

もう無理と思った瞬間、那波の指が抜かれた。
そして息をつく間もなく両足を広げられ、硬いペニスを押しあてられる。

「……ちょ…っ、まじ、ここでする気かよ…?!」
「うん」

那波は笑顔で逃げようとする俺の腰を掴んだ。
そしてゆっくりと、中に入ってくる。

「……ぁ、あ…っ!!」

もうどうしようもなくなった俺は、まるで溺れてしまった人みたいにぎゅっと那波にしがみつく。

「……っ、やっば…締まる…」
「……や、アッ、な、なみ、あ、ああっ!」

那波が動く度に、水面に映る灯りがゆらゆらと揺れていた。


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