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ランチ
しおりを挟む「俺ジャージャー麺」
「あたし焼き魚定食」
「じゃあ俺は…オムライスで」
「かしこまりました…ってだから、なんで?」
伝票を片手に、ギャルソン姿の那波の笑顔は引きつっている。
「いや…なんか、話の流れで」
「どんな流れだ」
「えー、だって瀬田くんが働いてるとこ見てみたかったしー」
「おまえ、そういう格好似合うよなー」
にこにこ笑う梨香と、妙なところで感心している和田。
しばらくして、注文した料理が運ばれてきた。
そしてオムライスに刺さっている旗を見て唖然とする。
「やだ、かわいい!」
「手書きでハートマークって…」
女子かあいつ、と和田。
……あのバカ…
「うわ…逆ナン?」
その声に思わず振り向いた。
ここから少し離れた席に、女の子のグループが座っている。
そこで呼び止められたらしい那波は、携帯の番号を訊かれてるみたいだった。
「相変わらずモテるのねー」
「あいつもしかして、あれが目的でバイト始めたんじゃ…」
……いや、それはないと思うけど…
女の子達に笑いかけている那波を見て、なんだかちょっともやもやした。
「はいこうちゃん、あーん」
「……え?あ、あーん?」
ぼんやりしていたので、つい条件反射で口をあける。
すると甘酸っぱい味が舌の上に広がった。
……苺?
定食についていたらしい。
「おいしい?」
にこにこ笑いながら梨香が言う。
「え、うん…」
つられて笑った、その時。
「……お客様、なにやってんだコラ」
いつの間にか、思いっきり不機嫌な顔をした那波がそこに立っていた。
「……や、あの、今のは」
不可抗力ってゆうか。
「こうちゃん、苺好きだもんねー」
「……俺がしようとしたら全力で拒否るくせに!」
「ちょっ、那波なに言って…」
慌てる俺を余所に、梨香は呑気だ。
「あ、あたしデザートにケーキ食べよっかなぁー」
「……焼き魚の後に?」
「ねぇこうちゃん、はんぶんこしようよ!」
「別にいいけど…」
「よくねえだろ!!」
「てゆうか那波、さっきから何キレてんだよ」
呆れ顔の和田。
「大体なんで俺の前で堂々といちゃつけるわけ?隠れてされても困るけど!」
「いちゃ…?!」
「えー?瀬田くんだって、さっきあの子達といちゃついてたじゃーん」
仕事中なのにー、と事も無げに梨香が言う。
「……は?」
「てゆうか、あの人店長さん?さっきからずっとこっち睨んでるよー?」
「あーあ、怒られてる」
「そりゃこんだけ騒げばな…」
ケーキを食べながら、満足そうに笑う梨香。
「まぁこれに懲りて…こうちゃん?どうしたの?」
「ごめん、すぐ戻るから…」
「……まるで保護者だなぁ」
一緒に謝っている浩介を眺めながら、和田が言う。
「なんか、あてられちゃった…」
「……何に?」
「……あんたってほんと鈍いよね…。さてと、今夜はカラオケ!」
「またかよ…」
「こうちゃんは無理だろうから、あんた朝までつきあってよね!」
「はいはい…」
とりあえず先に胃薬買っとくか…と和田は席を立った。
end.
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