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2月14日(2)
しおりを挟む浩介のいいところは俺だけが知ってればいい、なんて。
勝手だってわかってるけど、そんなことを思ってしまう。
アパートの狭いキッチンはいつもと様子が違い、淫らな雰囲気に満ちていた。
「……っあ、」
まだ後ろを解してるだけなのに、浩介のペニスは先走りでぐっしょりと濡れている。
「俺の指、気持ちいー?」
手の動きは止めずに冗談めかして言うと、浩介はとろんとした顔つきでうんうんと頷く。
――あーもう…
僅かに腰が揺れているのは無意識なのか。
指先で感じるところをぐりぐりと弄ってやると、一際高い声が漏れた。
「あっ、 あ、そこっ…」
「ここ、好き?」
いつもの恥じらう様子も捨てがたいけど、自分の腕のなかで快感と欲に溺れていくその姿もかなりクる。
「あっ、あっ、もう…っ!」
イキそうな時、いつも浩介は俺にぎゅっとしがみついてくる。
それが堪らなく可愛いと思う。
「イっていいよ」
そう言うと、片腕で頭を抱え込んだ。
「……?!ちょ、」
「イく顔、見せて」
「バッ…!や、やだよ!」
浩介は慌てたように身体を捩ったけど、背後はシンクなので逃げ場はない。
そしてそんな抵抗も、既に限界を訴えているペニスに触れれば途端に弱々しくなった。
「や、いや、那波っ…あっ、あ」
見るなよ、という切羽詰まった声。
立っているのが辛いのか、足ががくがくと震えている。
羞恥で頬を紅く染め、目尻に涙を浮かべているその姿はあまりにも煽状的で。
「浩介っ…」
「あ、ぁ、…っ!」
一気に追い上げると、腕のなかの身体が強張った。
とほぼ同時に、吐きだされた精が俺の手を濡らす。
「……はぁ、っ」
「……っ、」
脱力してもたれかかってくる浩介を抱き寄せ、その身体を反転させる。
そしてそのまま腰を掴むと、奥までずるりと入りこむ。
その衝撃で、浩介は悲鳴のような声をあげた。
「……っあ、く、るし…っ、」
ひくひくと収縮するそこは溶けるように熱く、俺に絡みついてくる。
「……っごめん、」
一応謝ったけど、この状態で抑えることなんてできるはずもなく。
がつがつと突き上げて、浩介の身体を揺さぶった。
「や、ぁあっ、あっ、…ッ!」
達したばかりで感度が増しているのか、それとも普段と違う状況だからか。
お互いに興奮してるのがわかる。
「んっ…っ、」
小刻みに震えている身体を抱きしめ、唇を貪る。
苦しそうに顔を歪め、でもそれでも舌を絡めて懸命に応えようとする彼が、どうしようもなくいとおしかった。
「……苦っ」
「あ、やっぱり?」
浩介がくれたチョコクッキーは、ちょっと予想外な味だった。
「甘いの苦手って言ってたから…そしたら梨香が砂糖いれなきゃいいよって」
「へぇ…」
そのアドバイスに何か思惑を感じるのは、俺の考えすぎなのか。
「……おいしくない?」
「んなことねーよ」
笑って、不安げな顔をしている恋人の頬を撫でる。
シュガーレスのビターなチョコさえ甘く感じる、そんな夜だった。
end.
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