モンド家の、香麗なギフトは『ルゥ』でした。~家族一緒にこの異世界で美味しいスローライフを送ります~

みちのあかり

文字の大きさ
5 / 21
二章 新たなる街へ

第5話 取り調べ

しおりを挟む
「止まれ! なんだそのケダモノは」

 遠くからルナを見つけた二人の門番さんが叫びながら走ってきて、勢いよく槍をルナに向けた。

「アーク、心配するな。俺たちが保証する。こいつらは俺たちの命の恩人だ」
「銀杯のローディか? それは本当か?」

「わたしも保証するわ。この狼はこの子が育てた従獣じゅうじゅうよ。よく言うことを聞くわ」

 門番さんはルナの背中にリューが乗っていることに気が付いて、僕に聞いてきた。

「本当に君が使役しているのか?」
「使役?」

「君の仲間かと聞いているんだ」
「ルナは僕の仲間だよ。ほら」

 ルナをなでると、門番さんたちは安心したのか槍を向けるのをやめてくれた。
 門まで歩きながら、門番さんは外の状況を確認していた。

「街の外はどうだった?」
「ああ。ロンリーウルフがいた。何とか倒したが子連れで、こいつらが死にそうなところを助けてくれたんだ。ほら」

 後ろにいたルナが門番さんたちの前に来て、子供の狼を見せた。驚きながらも歩みは止めない門番さんたち。

 門の前に着くと、ローディさんが指示を出した。

「そういうわけで、俺はギルド長に報告してくる。ランゼ、おまえはマリーさんたちの登録に付き合ってやれ。レイクはロンリーウルフの処理を頼む」

「おう。任せろ」
「そうね。ルナちゃんを街に入れられるとは思えないしね」

 衛兵さんの一人が、慌てたようにどこかに行った。驚き慌てている門番さんを落ち着かせながら、打ち合わせを始めた。

 そのうちにギルドの職員さんがやって来て、僕と母さんは門の隣にある衛兵詰所の一室にランゼさんと一緒に連れていかれた。

 リューとルナは、門番さんのとなりで大人しく待っているように言われた。まだルナを街に入れるわけにはいかないからって言われたんだ。



「自分はこの門の詰所を管理する衛兵部第二班、班長のイケアだ。身分証を確認する」

 母さんが三枚のカードを、さっきまで門番をしていたアークさんに手渡した。

「ローズマリー。29歳。離婚して今は家名が失われている元貴族。間違いないか?」
「あら、二日しかたっていないのにもう手続き済ませたのね。そうですわ。間違いありません」

 母さんは何が楽しいのか笑いながら答えた。

「子供の方はルーベルト10歳とリュミエル7歳。間違いは?」
「ありません」

「どちらも元貴族の子女だが、現在は家名が外れている。平民の扱いになるがそれでいいのか?」

「かまいませんわ。後ろ盾がなくなったのですから」

「それでこの街には何をしに来たのだ?」

 母さんは今までの事を話した。父さんが死んで家を乗っ取られたこと。再婚して離縁されたこと。僕のギフトについては秘密にしていたけど。

「それは大変でしたね。病気の娘を連れて平民になって住む所もなく。これからどうするおつもりで?」

「それが。追い出されてからまだ二日。幸いある程度の路銀はありますので、落ち着いたら仕事を探そうかと思っています」

「そうですか。それでしたら通行の許可を出してもよいのですが」

 イケアさんは僕を見て、それまでの優しい感じがなくなって強く言った。

「あのオオカミは君の従獣で大人しいということはわかったのだが、街を守る衛兵の判断として狼を街に入れることは許可できない。主人から離れた状態で街の外に置くわけにもいかない。この街で暮らしたければあの狼を処分するんだ」

「それは……、ルナを殺せっていうことで」
「ああ。君達は平気かもしれないが、一般の住民は狼と共には暮らせないんだ」

 そんなことできるわけがない!

「ねえイケア。本当にダメなの?」
「ランゼ。常識的に考えてみろ。無理に決まっているだろう。この街だけじゃない。どこの街だって狼を入れるわけがないだろう。せいぜい小型の犬とか猫とか鳥までだ」

「……確かにそうね」

 ランゼさんが肯定して、誰も口を開けなくなった。シーンと静まり返った部屋の空気が重く感じられた。

「……僕みたいに大きな動物を使役している人はどうしているの? そんな人いないの?」

「使役している冒険者はいるにはいる」
「だったら僕もそうしたい。どうすればいいの」

 イケアさんが「仕方がないな」と教えてくれた。

「従獣使いは街には入らない。大抵が冒険者だ。パーティを組んではいるが門の中には入らず、門から少し離れたところで一人きりで野営をしている。他の仲間は街中での宿で泊まり買い物も食事もできるが、仲間が持ってくる食料で自活しているんだ。たまに仲間に従獣を見てもらって買い物をするために街に入ることもあるようだが、それもわずかな時間だけだな」

 真剣な目で僕を見つめて続けた。

「お前の妹は病気じゃないのか? 母親と妹二人を放っておいて獣と二人で野営をするのか? お前みたいな子供が? それとも病気の妹も野営につき合わせる気か? 仕事は? 食べ物は? 携帯食だけじゃそのうち倒れるぞ。悪いことは言わん。獣を手放してつましく生きろ」

 イケアさんが僕たちの事を真剣に考えてくれている。だからこその提案だってことは伝わってくる。でも……、

「ルナを森の中に放すのはだめでしょうか」
「だめだな。野生化して人を襲われても困る。狼は我々にとって危険すぎる存在だ。特に人間の食べ物の味を覚えた狼はな」

 空気が重い。ランゼさんもうつむいている。僕ではどうすることもできないのか?

「それじゃあ、テントを買いましょう」

 場にそぐわない、明るい声で母さんが話を始めた。

「何悩んでいるの? ルーデンス、私達は家族よ。もちろんルナちゃんもね。家族が離れて暮らすなんてありえないじゃない。料理は母さんが作ればいいのよ。ルナちゃんがいれば狩りもできるし、そうすればお肉が手に入るじゃない。野菜とパンは買えばいい。私は街に入ってもいいんでしょう? 大丈夫。ルーを一人になんかさせないわ。お母さんを信じなさい」

 え、これがお母さん? あの物静かなお母さんがこんなこと言うなんて。
 でも、嬉しい。母さんが大きく見える。

「落ち着いてくださいローズマリーさん。そんなこと」

「できるわよね、私たちなら」

 そうだね、母さん。僕が守らないといけないのに母さんに守られるなんて。

「うん」
「よし。そうしましょう」

「ちょっと待ってマリーさん。無茶はよくないわ」
「そうです。門の周辺は比較的安全ですけど危険なことには変わりないんです。獣だけじゃない。夜盗とか人間にも注意しなければ」

「あら、ルナちゃんに立ち向かえる人間なんているかしら」
「そうかもしれませんが」

 母さんは本気だ。イケアさんが必死に止めているが、母さんは全てを笑い飛ばしている。

「あの、イケア。提案なんだけど」
「なんだ? いいからお前も止めるの手伝ってくれよ」

「魔女様の家、いま誰も管理していないよね」
「ああ。みんな気味悪がって近づきもしない」

「魔女様、帰ってくるまで管理人置いた方がよくない?」
「何を言っているんだ? いきなり別の話をぶっこんでくるな」

「だからぁ。この子たちに管理させたらどう? 家なんて誰も住んでいないとすぐ痛むでしょ」
「そういうことか!」

 ランゼさんの提案はこういうことだ。門から離れた森の入り口に、魔女様と呼ばれている薬師の家がある。魔女様は異国の人なのか真っ黒な髪と瞳の女性。いつまでも歳をとらないのか見た目が若く変わらない人だったらしい。

「2年前に、しばらくここを離れるから家を管理しておいてほしいと、ギルドに金を置いて出て行ったんだ。管理者を募集したけど森の近くに住むヤツなんていなくてな。猫のバケモノが出るとか、幽霊屋敷だとか噂がたって近づく人もいなくなったんだ」

 そんな理由でたまに掃除をするくらいになっているみたい。

「魔女様が帰ってきたら出て行ってもらわなければいけないが、この状況なら管理人になるのか一番よくない?」

「それは素敵だわ。掃除は得意よ」

 母さんは乗り気で交渉を始めた。「しばらくかかりそうだから、リューのこと見てきて」そう言われて僕は詰め所を出てリューとルナの所に急いだ。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

『婚約破棄された悪役令嬢ですが、嫁ぎ先で“連れ子三人”の母になりました ~三人の「ママ」が聞けるまで、私は絶対に逃げません~』

放浪人
恋愛
「母はいりません」と拒絶された悪役令嬢が、最強の“ママ”になるまでの物語。 「君のような可愛げのない女は、王妃にふさわしくない」 身に覚えのない罪で婚約破棄され、“悪役令嬢”の汚名を着せられたクラリス。 彼女が新たに嫁いだのは、北方の辺境を守る「氷の公爵」ことレオンハルト・フォン・グレイフだった。 冷え切った屋敷で彼女を待っていたのは、無表情な夫と、心に傷を負った三人の連れ子たち。 「僕たちに、母はいりません」 初対面で突きつけられた三つの拒絶。しかし、クラリスは諦めなかった。 「称号はいりません。私が欲しいのは――あなたたち三人の『ママ』になれる日だけです」 得意の生活魔法『灯(ともしび)』で凍えた部屋を温め、『鎮(しずめ)』の歌で夜泣きを癒やし、家政手腕で荒れた食卓を立て直す。 クラリスの献身的な愛情は、頑なだった子供たちの心を解きほぐし、やがて不器用な夫の氷の心さえも熱く溶かしていく。 これは、不遇な悪役令嬢が「最強の母」となり、家族を脅かす元婚約者や魔獣たちを華麗に撃退し、最愛の家族から「ママ」と呼ばれるその日までを綴った物語。

追放悪役令嬢は、絶品農業料理で辺境開拓!気づけば隣国を動かす「食の女王」になってました

緋村ルナ
ファンタジー
身に覚えのない罪を着せられ、婚約者である王子から追放された公爵令嬢ベアトリス。絶望の辺境で、彼女は前世の知識と持ち前の負けん気を糧に立ち上がる。荒れた土地を豊かな農地へと変え、誰もが食べたことのない絶品料理を生み出すと、その美食は瞬く間に国境を越え、小さなレストランは世界に名を馳せるようになる。 やがて食糧危機に瀕した祖国からのSOS。過去の恩讐を乗り越え、ベアトリスは再び表舞台へ。彼女が築き上げた“食”の力は、国家運営、国際関係にまで影響を及ぼし、一介の追放令嬢が「食の女王」として世界を動かす存在へと成り上がっていく、壮大で美味しい逆転サクセスストーリー!

スキル『農業』はゴミだと追放されたが、実は植物の遺伝子を書き換える神スキル【神農】でした。荒野を楽園に変えて異世界万博を開催します!

黒崎隼人
ファンタジー
「そのスキル『農業』?剣も魔法も使えないクズはいらん、失せろ!」 勇者召喚に巻き込まれて異世界へ転生した植物オタクの青年カイルは、地味なスキルを理由に王都を追放され、死の荒野へと捨てられた。 しかし、誰も知らなかったのだ。 彼のスキルが、ただの農業ではなく、植物の遺伝子さえ書き換え、不毛の大地を瞬く間に聖域に変える神の力【神農】であることを。 荒野を一瞬で緑豊かな楽園に変えたカイルは、伝説の魔獣フェンリルを餌付けして相棒にし、傷ついた亡国の美姫ソフィアを助け出し、自由気ままなスローライフを開始する。 やがて彼が育てた作物は「エリクサーより効く」と評判になり、その噂を聞きつけた商人によって、彼の領地で世界規模の祭典――『異世界万博』が開催されることに!? 一方、カイルを追放した王国は深刻な食糧難に陥り、没落の一途をたどっていた。 「今さら戻れと言われても、この野菜は全部、俺とソフィアのとフェンのものですから」 最強の農民が送る、世界を揺るがす大逆転・万博ファンタジー、ここに開幕!

新緑の光と約束~精霊の愛し子と守護者~

依羽
ファンタジー
「……うちに来るかい?」 森で拾われた赤ん坊は、ルカと名付けられ、家族に愛されて育った。 だが8歳のある日、重傷の兄を救うため、ルカから緑の光が―― 「ルカは精霊の愛し子。お前は守護者だ」 それは、偶然の出会い、のはずだった。 だけど、結ばれていた"運命"。 精霊の愛し子である愛くるしい弟と、守護者であり弟を溺愛する兄の、温かな家族の物語。 他の投稿サイト様でも公開しています。

【一秒クッキング】追放された転生人は最強スキルより食にしか興味がないようです~元婚約者と子犬と獣人族母娘との旅~

御峰。
ファンタジー
転生を果たした主人公ノアは剣士家系の子爵家三男として生まれる。 十歳に開花するはずの才能だが、ノアは生まれてすぐに才能【アプリ】を開花していた。 剣士家系の家に嫌気がさしていた主人公は、剣士系のアプリではなく【一秒クッキング】をインストールし、好きな食べ物を食べ歩くと決意する。 十歳に才能なしと判断され婚約破棄されたが、元婚約者セレナも才能【暴食】を開花させて、実家から煙たがれるようになった。 紆余曲折から二人は再び出会い、休息日を一緒に過ごすようになる。 十二歳になり成人となったノアは晴れて(?)実家から追放され家を出ることになった。 自由の身となったノアと家出元婚約者セレナと可愛らしい子犬は世界を歩き回りながら、美味しいご飯を食べまくる旅を始める。 その旅はやがて色んな国の色んな事件に巻き込まれるのだが、この物語はまだ始まったばかりだ。 ※ファンタジーカップ用に書き下ろし作品となります。アルファポリス優先投稿となっております。

神獣転生のはずが半神半人になれたので世界を歩き回って第二人生を楽しみます~

御峰。
ファンタジー
不遇な職場で働いていた神楽湊はリフレッシュのため山に登ったのだが、石に躓いてしまい転げ落ちて異世界転生を果たす事となった。 異世界転生を果たした神楽湊だったが…………朱雀の卵!? どうやら神獣に生まれ変わったようだ……。 前世で人だった記憶があり、新しい人生も人として行きたいと願った湊は、進化の選択肢から『半神半人(デミゴット)』を選択する。 神獣朱雀エインフェリアの息子として生まれた湊は、名前アルマを与えられ、妹クレアと弟ルークとともに育つ事となる。 朱雀との生活を楽しんでいたアルマだったが、母エインフェリアの死と「世界を見て回ってほしい」という頼みにより、妹弟と共に旅に出る事を決意する。 そうしてアルマは新しい第二の人生を歩き始めたのである。 究極スキル『道しるべ』を使い、地図を埋めつつ、色んな種族の街に行っては美味しいモノを食べたり、時には自然から採れたての素材で料理をしたりと自由を満喫しながらも、色んな事件に巻き込まれていくのであった。

追放された悪役令嬢、農業チートと“もふもふ”で国を救い、いつの間にか騎士団長と宰相に溺愛されていました

黒崎隼人
ファンタジー
公爵令嬢のエリナは、婚約者である第一王子から「とんでもない悪役令嬢だ!」と罵られ、婚約破棄されてしまう。しかも、見知らぬ辺境の地に追放されることに。 絶望の淵に立たされたエリナだったが、彼女には誰にも知られていない秘密のスキルがあった。それは、植物を育て、その成長を何倍にも加速させる規格外の「農業チート」! 畑を耕し、作物を育て始めたエリナの周りには、なぜか不思議な生き物たちが集まってきて……。もふもふな魔物たちに囲まれ、マイペースに農業に勤しむエリナ。 はじめは彼女を蔑んでいた辺境の人々も、彼女が作る美味しくて不思議な作物に魅了されていく。そして、彼女を追放したはずの元婚約者や、彼女の力を狙う者たちも現れて……。 これは、追放された悪役令嬢が、農業の力と少しのもふもふに助けられ、世界の常識をひっくり返していく、痛快でハートフルな成り上がりストーリー!

異世界でのんびり暮らしてみることにしました

松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。 https://www.alphapolis.co.jp/novel/793391534/466596284/episode/5320962 https://www.alphapolis.co.jp/novel/793391534/387029553/episode/10775138 https://www.alphapolis.co.jp/novel/793391534/84576624/episode/5093144 https://www.alphapolis.co.jp/novel/793391534/786307039/episode/2285646

処理中です...