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三章 お引っ越し
第6話 魔女様のお家
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ルナちゃんを処分しろ? そんなのダメに決まってるじゃない!
あたしはテント野営生活を提案した。そうしたらなぜか森の近くの一軒家を紹介された。
家賃なし、きれいにしたら管理代ももらえる。
破格の条件に飛びつくしかない。
ルーデンスをリューのところに返して、魔女の家に住むための交渉と条件を確認し合った。うん。お互い満足いく条件になったよ。
門前に戻ると、リューはルナちゃんのお腹ですやすや眠っていた。ルーデンスはレイクさんと話をしている。あたしはリューにシーツをかけるとルーデンスに話しかけた。
「家を借りることは決まったわ。何もないみたいだから、母さんはランゼさんから街を案内してもらいながら掃除道具や生活道具を買ってきたいの。もう少しリューのことを見ていてほしいけどいい?」
「もちろん。ランゼさんよろしくお願いします」
「礼儀正しいわね。まかせて。君達は恩人だからこのくらいは当然よ」
本当に良い人たちに出会えた。さあ、早く買い物を済ませてお家にいくよ。
◇
「何を買いたい?」
「そうですね、まずは掃除道具が必要かしら。それから包丁とまな板、それにフライパンとボールがいくつかほしいですわ。スポンジとかたわしはあるかしら」
「スポンジ? 聞いたことないわね。たわしならあるけど」
あ、やっぱり? スポンジ便利だけど仕方ない。
「後は布巾も必要ね。あとは食材。野菜とか砂糖とかあるかしら」
「砂糖? そんな高級品貴族しか買えないよ。わたしじゃいけないお店だね」
「ハチミツは?」
「甘いの欲しいならメープルシロップがいいよ。ここら辺はカエデの木が多いから安いよ」
「ミルクとかはありますか?」
「ヤギのミルクは安いよ。チーズやバターはちょっと値が張るね」
あれこれ見ながらたくさん買ったよ。品物は店を出てからカバンに詰めた。マジックバッグ持ちといろんな人に知られるのは危険だからね。まあランゼさんには驚かれたけど、そこはバレても仕方がないよね。
にんじんもジャガイモも玉ねぎも、季節外れの在庫切れで手に入らなかった。だけど、パンはもちろん買ったし、酢漬けの野菜、フキノトウみたいな生野菜が買えた。お肉も少し買ったよ。
これでしばらくは大丈夫だけど、調味料は塩だけ。ルーデンスの持ってきたカレールゥはもうないよね。
それにしても高い。調理器具や掃除道具を買ったら、あれだけあった金貨が溶けるようになくなったよ。百均って凄かったんだ。全部手作りだから仕方がないっていえば仕方がないんだけど。
このままではお金が続かない。働く方法を考えないと。
でも今日は住む所が決まっただけでもありがたい。
いろいろ買っている私を見て、ランゼさんが「は~。本当にお金持ちだ」と声を上げたが、「もう資金も尽きそうですよ」と財布の中身を見せたら、なんというか同情された。
◇
門まで戻ると、レイクさんだけでなくローディさんもルーデンスと話していた。
「ルーただいま。ローディさん、レイクさん、ルーデンスと一緒にいてくれてありがとうございます。何の話をしていたの?」
「うん。冒険者についていろいろ聞いたんだ。ほら、僕も頑張って仕事を探さないといけないから」
まあ、ルーデンスったらしっかりして。10歳なんて日本だったらまだ小学生なのに。
「僕が家族を守らなくちゃ」
一人で抱え込まなくてもいいのよ。あたしも一緒に頑張るからね!
「魔女の家に住むことになったんだな。だったら俺たちも一緒に行こう。場所も分からないだろうし、引っ越しには人手もいるだろう」
「そうよ。遠慮なんかいらないから。あなた達のポーションのおかげで今体力が全回復しているから」
「そうだぞ。あのポーションはうまかった。あれなら金貨を出したって買いたい奴がいるだろう。あれで最後だとは本当に残念だ。貴重なものありがとうな」
そんなにすごいもの……だよね。カレー自体がおいしいし、回復力があるんだからルーデンスにギフトの事は隠しておくように言っておいてよかった。
5分ほど歩くと、向こうの地面が下り坂になっていた。少し先に木々で覆われた森が広がっている。
「ここから先は低地になっていくんだ。そのせいかあの森は他より濃い魔力が集まっている。スライムとか一角ウサギ程度だが魔物も生息しているんだ」
「だからあんまり近づきたくないって人が多いのよね。魔力慣れしている人が少ないから」
「おう、ボウズ、心配するこたあないぞ。スライムなんて叩けば潰れるからな」
確かに空気感が違う。それでも嫌な感じはしないよね。
(危険な獣は近づかせないから大丈夫だ)
ルナちゃんがあたしたちに伝えたおかげで、ルーデンスも安心したみたい。
坂道をどんどん下ると、森の前に赤いとんがり屋根が見えた。あれが魔女様の家かな?
思ったより小さな可愛らしいお家。
「いつ来ても鳥肌が立つな、ランゼ」
「ええ。独特な雰囲気よね」
「オレは平気だぞ。鍛え方が足りないんじゃないか?」
「黙れ脳筋! あんたは感受性ってものが足りないだけよ」
何だろう。彼らが言うほど嫌な感じはない。
「ルー、何か感じる?」
「全然。いい家だね」
「おうち、みんなで住むの?やった~」
うちの子たちは大丈夫みたいね。
「もしかしてみなさん、魔力量が少ない、とか?」
「大きな魔法は使えないですわ。『ファイヤー』」
指先の火を見て、ランゼさんは納得したようだ。
「魔力が多いと反応が高くなるから、魔力が少ないと気にならないってことかな。だったら適任って事じゃない」
相性がいいのか。それはよかった。
「はい、これが鍵。開けてみて」
ガチャリッ、と鍵を外し、扉を開けた。一段高くなった床を上がり、中にあったドアを開けた。
ステキ!
ステンドグラスの窓から陽光が差し込み、色とりどりの光の筋が輝いている。
綺麗。って言っている場合じゃない!
ホコリがすごいってことじゃない! リューにとっては最悪だ!
「みんな、窓もドアも全開にして! 空気を入れ替えるのよ! 今日は一部屋だけでいいから、ホコリのない部屋を作るのよ! 早く!」
「「お、おう」」
「ルナ様、 リューを連れて家から遠くに離れて。埃だらけの空気を吸わせないように」
「ワオーン(了解した)」
「ローディさんとレイクさんは背が高いんだからはたきがけ。とその前にこの丸いぷよぷよしたものは何?」
足元や壁に透明で巨大ななめくじのような……もしかしてスライム?
「まずはスライムを何とかしようか。叩けば潰れるから」
ローディさんがはたきで叩くとスライムがキラキラと光を放ち潰れた。
「踏んでもいいし、ホウキでも潰せるわよ。あ、何かドロップした。何これ? 土?」
「見せて。……母さん!」
ルーデンスがあたしに持ってきたのは、カレールゥの欠片だった。
「じゃあやるか」
やる気になっている三人を止めなくては!
「ストップ! みなさん聞いてくださいませ」
なんだ? と手が止まった。
「ここのスライム、潰すと土が出るみたいですわ。なるべく汚したくないですから、スライムをこのバケツに入れてください。まとめて潰すと汚れが固まるでしょう」
めんどくさいとか言うな~! カレールゥは貴重なんだ。
みんなは潰さないようにスライムを集めてくれた。買ったばかり、きっちり拭き上げたバケツ一杯入ったスライムを、ルーデンスに一気に叩き潰させた。
バケツの中からキラキラと光があふれる。
「なんかスライムもこれだけまとめて潰すと光がすごいわね」
感心したようにランゼさんがつぶやいている。
バケツの底には、砕けたルゥの粒々が、多分一箱分ほど溜まっていた。
「他の部屋にもいるだろうけど、ここだけでいいか?」
人手のあるうちに、とも思ったけど、まずは部屋の掃除が優先よね。暗くなる前に三人も帰りたいでしょうし。
「それは明日やりますから、とにかく一部屋だけでも綺麗にしましょう」
あ~、掃除機欲しい! 空気清浄機欲しい! 洗濯機も欲しい!
普通の生活って、何て便利だったの!
そんな愚痴言っていても進まない。はぁ。
さ、頑張るか。
大きなゴミが集まったら、今度は拭き掃除よ。ルーデンスに入れさせたお湯は冷め、ぬるま湯でテーブルも床もみんなでしっかりと拭き上げた。
「ありがとうございます。お礼は今度必ずします」
あたしがそう言ってもにこやかに辞退された。
「こちらは命を助けられた恩を返しただけだ。気にすることはない」
「そうよ。気にしないで」
「ああ。ボウズ、仕事の相談なら明日しよう。いつでも訪ねてこい」
あたしたちは何度も何度もお礼を言って見送った。
※
台所はまだ使える状況じゃないけど、カレールゥが手に入った。
みんなの手を洗わせ、テーブルを囲んだ。
あたしはルーデンスに鍋にお湯を張らせた。
「今日もカレーパン粥が食べられるのか。楽しみじゃ」
ふふふ。そんな手抜きはしないよ。
二つ目の鍋を取り出し、よく溶けたスープカレーの半分を移した。
一つの鍋にはちぎったパンを入れた。これはカレーパン粥になる。
もう一つの鍋には、ミルクとメープルシロップを加えてよくかき混ぜた。
カレーの辛さを抑えるなら、乳製品に決まっている。これならきっと。
「リュー、飲んでみて」
「え~。カレー苦手」
そう言いながらも一口頑張って飲んだ。
「え? あま~い。おいしい。もっと。もっと飲む。おかわり」
ゴクゴクゴクっと飲んでいるよ。体はどう?
「あったかい。お腹いっぱいだよ」
顔色がとってもいい。幸せそうに笑っている。
リューが満足したので、あたしたちも飲んでみた。
「母さんすごいよ。辛さが全くなく優しい味だよ」
「マリー殿。これは何とも素晴らしいもの。魔力が少ない者でも体力の回復が早くなるであろう」
うん。思ったところに近い味ができた。ヤギのミルクとメイプルシロップはどちらもクセが強いからどうなるかと思ったけど。まあ及第点でしょう。牛乳とハチミツに砂糖を加えたらもっとおいしくなるよね。手に入ったらやってみよう。
「母さん、ギフトが!」
ルーデンスの中でレシピが解放されたみたい。
「ルゥ【カレー】のレシピ・解放
メニュー1 カレーのスープ
メニュー2 カレーのパン粥
メニュー3 カレーのミルクドリンク」
私の作った料理がルーデンスのギフトに加えられた。だったら私の記憶が役に立つかも。
後片付けは明日でいいけど歯磨きは忘れないでね。
明日もおうちを掃除するよ! 素敵な家族の未来のためにね。
あたしはテント野営生活を提案した。そうしたらなぜか森の近くの一軒家を紹介された。
家賃なし、きれいにしたら管理代ももらえる。
破格の条件に飛びつくしかない。
ルーデンスをリューのところに返して、魔女の家に住むための交渉と条件を確認し合った。うん。お互い満足いく条件になったよ。
門前に戻ると、リューはルナちゃんのお腹ですやすや眠っていた。ルーデンスはレイクさんと話をしている。あたしはリューにシーツをかけるとルーデンスに話しかけた。
「家を借りることは決まったわ。何もないみたいだから、母さんはランゼさんから街を案内してもらいながら掃除道具や生活道具を買ってきたいの。もう少しリューのことを見ていてほしいけどいい?」
「もちろん。ランゼさんよろしくお願いします」
「礼儀正しいわね。まかせて。君達は恩人だからこのくらいは当然よ」
本当に良い人たちに出会えた。さあ、早く買い物を済ませてお家にいくよ。
◇
「何を買いたい?」
「そうですね、まずは掃除道具が必要かしら。それから包丁とまな板、それにフライパンとボールがいくつかほしいですわ。スポンジとかたわしはあるかしら」
「スポンジ? 聞いたことないわね。たわしならあるけど」
あ、やっぱり? スポンジ便利だけど仕方ない。
「後は布巾も必要ね。あとは食材。野菜とか砂糖とかあるかしら」
「砂糖? そんな高級品貴族しか買えないよ。わたしじゃいけないお店だね」
「ハチミツは?」
「甘いの欲しいならメープルシロップがいいよ。ここら辺はカエデの木が多いから安いよ」
「ミルクとかはありますか?」
「ヤギのミルクは安いよ。チーズやバターはちょっと値が張るね」
あれこれ見ながらたくさん買ったよ。品物は店を出てからカバンに詰めた。マジックバッグ持ちといろんな人に知られるのは危険だからね。まあランゼさんには驚かれたけど、そこはバレても仕方がないよね。
にんじんもジャガイモも玉ねぎも、季節外れの在庫切れで手に入らなかった。だけど、パンはもちろん買ったし、酢漬けの野菜、フキノトウみたいな生野菜が買えた。お肉も少し買ったよ。
これでしばらくは大丈夫だけど、調味料は塩だけ。ルーデンスの持ってきたカレールゥはもうないよね。
それにしても高い。調理器具や掃除道具を買ったら、あれだけあった金貨が溶けるようになくなったよ。百均って凄かったんだ。全部手作りだから仕方がないっていえば仕方がないんだけど。
このままではお金が続かない。働く方法を考えないと。
でも今日は住む所が決まっただけでもありがたい。
いろいろ買っている私を見て、ランゼさんが「は~。本当にお金持ちだ」と声を上げたが、「もう資金も尽きそうですよ」と財布の中身を見せたら、なんというか同情された。
◇
門まで戻ると、レイクさんだけでなくローディさんもルーデンスと話していた。
「ルーただいま。ローディさん、レイクさん、ルーデンスと一緒にいてくれてありがとうございます。何の話をしていたの?」
「うん。冒険者についていろいろ聞いたんだ。ほら、僕も頑張って仕事を探さないといけないから」
まあ、ルーデンスったらしっかりして。10歳なんて日本だったらまだ小学生なのに。
「僕が家族を守らなくちゃ」
一人で抱え込まなくてもいいのよ。あたしも一緒に頑張るからね!
「魔女の家に住むことになったんだな。だったら俺たちも一緒に行こう。場所も分からないだろうし、引っ越しには人手もいるだろう」
「そうよ。遠慮なんかいらないから。あなた達のポーションのおかげで今体力が全回復しているから」
「そうだぞ。あのポーションはうまかった。あれなら金貨を出したって買いたい奴がいるだろう。あれで最後だとは本当に残念だ。貴重なものありがとうな」
そんなにすごいもの……だよね。カレー自体がおいしいし、回復力があるんだからルーデンスにギフトの事は隠しておくように言っておいてよかった。
5分ほど歩くと、向こうの地面が下り坂になっていた。少し先に木々で覆われた森が広がっている。
「ここから先は低地になっていくんだ。そのせいかあの森は他より濃い魔力が集まっている。スライムとか一角ウサギ程度だが魔物も生息しているんだ」
「だからあんまり近づきたくないって人が多いのよね。魔力慣れしている人が少ないから」
「おう、ボウズ、心配するこたあないぞ。スライムなんて叩けば潰れるからな」
確かに空気感が違う。それでも嫌な感じはしないよね。
(危険な獣は近づかせないから大丈夫だ)
ルナちゃんがあたしたちに伝えたおかげで、ルーデンスも安心したみたい。
坂道をどんどん下ると、森の前に赤いとんがり屋根が見えた。あれが魔女様の家かな?
思ったより小さな可愛らしいお家。
「いつ来ても鳥肌が立つな、ランゼ」
「ええ。独特な雰囲気よね」
「オレは平気だぞ。鍛え方が足りないんじゃないか?」
「黙れ脳筋! あんたは感受性ってものが足りないだけよ」
何だろう。彼らが言うほど嫌な感じはない。
「ルー、何か感じる?」
「全然。いい家だね」
「おうち、みんなで住むの?やった~」
うちの子たちは大丈夫みたいね。
「もしかしてみなさん、魔力量が少ない、とか?」
「大きな魔法は使えないですわ。『ファイヤー』」
指先の火を見て、ランゼさんは納得したようだ。
「魔力が多いと反応が高くなるから、魔力が少ないと気にならないってことかな。だったら適任って事じゃない」
相性がいいのか。それはよかった。
「はい、これが鍵。開けてみて」
ガチャリッ、と鍵を外し、扉を開けた。一段高くなった床を上がり、中にあったドアを開けた。
ステキ!
ステンドグラスの窓から陽光が差し込み、色とりどりの光の筋が輝いている。
綺麗。って言っている場合じゃない!
ホコリがすごいってことじゃない! リューにとっては最悪だ!
「みんな、窓もドアも全開にして! 空気を入れ替えるのよ! 今日は一部屋だけでいいから、ホコリのない部屋を作るのよ! 早く!」
「「お、おう」」
「ルナ様、 リューを連れて家から遠くに離れて。埃だらけの空気を吸わせないように」
「ワオーン(了解した)」
「ローディさんとレイクさんは背が高いんだからはたきがけ。とその前にこの丸いぷよぷよしたものは何?」
足元や壁に透明で巨大ななめくじのような……もしかしてスライム?
「まずはスライムを何とかしようか。叩けば潰れるから」
ローディさんがはたきで叩くとスライムがキラキラと光を放ち潰れた。
「踏んでもいいし、ホウキでも潰せるわよ。あ、何かドロップした。何これ? 土?」
「見せて。……母さん!」
ルーデンスがあたしに持ってきたのは、カレールゥの欠片だった。
「じゃあやるか」
やる気になっている三人を止めなくては!
「ストップ! みなさん聞いてくださいませ」
なんだ? と手が止まった。
「ここのスライム、潰すと土が出るみたいですわ。なるべく汚したくないですから、スライムをこのバケツに入れてください。まとめて潰すと汚れが固まるでしょう」
めんどくさいとか言うな~! カレールゥは貴重なんだ。
みんなは潰さないようにスライムを集めてくれた。買ったばかり、きっちり拭き上げたバケツ一杯入ったスライムを、ルーデンスに一気に叩き潰させた。
バケツの中からキラキラと光があふれる。
「なんかスライムもこれだけまとめて潰すと光がすごいわね」
感心したようにランゼさんがつぶやいている。
バケツの底には、砕けたルゥの粒々が、多分一箱分ほど溜まっていた。
「他の部屋にもいるだろうけど、ここだけでいいか?」
人手のあるうちに、とも思ったけど、まずは部屋の掃除が優先よね。暗くなる前に三人も帰りたいでしょうし。
「それは明日やりますから、とにかく一部屋だけでも綺麗にしましょう」
あ~、掃除機欲しい! 空気清浄機欲しい! 洗濯機も欲しい!
普通の生活って、何て便利だったの!
そんな愚痴言っていても進まない。はぁ。
さ、頑張るか。
大きなゴミが集まったら、今度は拭き掃除よ。ルーデンスに入れさせたお湯は冷め、ぬるま湯でテーブルも床もみんなでしっかりと拭き上げた。
「ありがとうございます。お礼は今度必ずします」
あたしがそう言ってもにこやかに辞退された。
「こちらは命を助けられた恩を返しただけだ。気にすることはない」
「そうよ。気にしないで」
「ああ。ボウズ、仕事の相談なら明日しよう。いつでも訪ねてこい」
あたしたちは何度も何度もお礼を言って見送った。
※
台所はまだ使える状況じゃないけど、カレールゥが手に入った。
みんなの手を洗わせ、テーブルを囲んだ。
あたしはルーデンスに鍋にお湯を張らせた。
「今日もカレーパン粥が食べられるのか。楽しみじゃ」
ふふふ。そんな手抜きはしないよ。
二つ目の鍋を取り出し、よく溶けたスープカレーの半分を移した。
一つの鍋にはちぎったパンを入れた。これはカレーパン粥になる。
もう一つの鍋には、ミルクとメープルシロップを加えてよくかき混ぜた。
カレーの辛さを抑えるなら、乳製品に決まっている。これならきっと。
「リュー、飲んでみて」
「え~。カレー苦手」
そう言いながらも一口頑張って飲んだ。
「え? あま~い。おいしい。もっと。もっと飲む。おかわり」
ゴクゴクゴクっと飲んでいるよ。体はどう?
「あったかい。お腹いっぱいだよ」
顔色がとってもいい。幸せそうに笑っている。
リューが満足したので、あたしたちも飲んでみた。
「母さんすごいよ。辛さが全くなく優しい味だよ」
「マリー殿。これは何とも素晴らしいもの。魔力が少ない者でも体力の回復が早くなるであろう」
うん。思ったところに近い味ができた。ヤギのミルクとメイプルシロップはどちらもクセが強いからどうなるかと思ったけど。まあ及第点でしょう。牛乳とハチミツに砂糖を加えたらもっとおいしくなるよね。手に入ったらやってみよう。
「母さん、ギフトが!」
ルーデンスの中でレシピが解放されたみたい。
「ルゥ【カレー】のレシピ・解放
メニュー1 カレーのスープ
メニュー2 カレーのパン粥
メニュー3 カレーのミルクドリンク」
私の作った料理がルーデンスのギフトに加えられた。だったら私の記憶が役に立つかも。
後片付けは明日でいいけど歯磨きは忘れないでね。
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https://www.alphapolis.co.jp/novel/793391534/466596284/episode/5320962
https://www.alphapolis.co.jp/novel/793391534/387029553/episode/10775138
https://www.alphapolis.co.jp/novel/793391534/84576624/episode/5093144
https://www.alphapolis.co.jp/novel/793391534/786307039/episode/2285646
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