モンド家の、香麗なギフトは『ルゥ』でした。~家族一緒にこの異世界で美味しいスローライフを送ります~

みちのあかり

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エンディング 幸せを配りに

第20話 幸せを配りに

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 次の日、リューと母さんは魔法の研究を始めた。

「クリーン、最高のギフトだけど、魔力を使うのね。制限回数と一度にできる範囲が狭くて思ったほどじゃなかった。でも一気に終えようと思わなかったらいいのよ!」

 リューの魔法は、母さんが大喜びで絶賛した。

「食材を凍らせることができる! 保存がかなり楽になるわ。リュー、このスライムは冷やす。こっちのスライムは凍らせてみて」

 冷えたスライムのシロップがけは、冷たくてそのままのスライムよりおいしかった。凍らせたスライムは、シャリシャリとした食感になって、全く違う料理だよ!」

「シャーベットになったわね。舌触りが最高!」
「リューこれ好き!」

「リューのおかげね」
「やったあ」

 ルナは元の姿に戻っている。自由に姿を変えられるけど、女の子の姿は嫌みたいだ。

 僕たちは、幸せな時間を魔女の家で過ごした。



 一週間後、これからのことを話し合った。

「ルゥのギフトは、他の街に行かないと発揮しないみたいね」
「うん」

 僕は、何度も魔物を倒しに行ったけれど、クリームシチューのルゥを取ることができなかった。

「リューのことを考えると、ここで平和に暮らすのもいいわね」

 ギフトのクリームシチューは気になる。でも、家族のためにはあきらめた方がいいのかもしれない。

「ルーはどう思う? 本当の気持ちを教えて?」

 僕は……。

「僕はリューを。家族を守りたい。だけど……僕のギフトをもっと知りたい。このカレールゥも、新しいクリームシチューも、もっと可能性があると思うんだ」

 母さんもリューもルナも、静かに聞いてくれている。

「僕は考えているんだ。あの歌に『VER』がついているわけを。幸せを配る意味を」

 この街で母さんのやってきたことを思いながら続ける。

「スライムのお肉で、この街の人が健康になったよね。お腹いっぱい食べられるようになったよね」

 母さんが頷く。

「冒険者も、解体所のみんなも、従獣使いの人たちも、役に立つって伝わったよね」

 ルナが頷く。

「母さんが料理教室を開いたから、おいしい料理が広まったよね」

 リューが「おいしいご飯、いっぱいできたの」と言った。

「僕たちは、いつの間にか街の人たちに幸せを配っていたんだ。だから、僕たちも幸せなのかもしれない」

 みんなが笑顔で頷いてくれた。

「モンド家のギフトは、たくさんの人に、幸せを配るためにあるのだと思ったんだ。だから」

 みんなを見て、僕の考えた思いをぶつけた。

「まだ幸せになっていない人たちに、幸せを配るのが僕の役目だと思ったんだ。だから、次の街に行くことが、クリームシチューを入手できる条件になっているんじゃないかな」

 みんな、何かを考えている。シーンと静まり返った部屋の中で、リューが声を上げた。

「ルー兄さまのシチューが食べてみたい。甘くてトロトロのシチューっておいしいんでしょう」

 にこにことリューが言うと、母さんが「そうね。私のお母さんも旅に出ろって言っていたわ。せっかくの人生、後悔しちゃだめよ、ルー」と肯定してくれた。

 僕たちは、『幸せを配る旅』をすることに決めた。



 翌日、街の人にお別れを言いに行った。「魔女様も行ってしまったが、ママ魔女様も行ってしまうのか」と残念がられた。
 母さんは、「ママは浅海さんの方なのに」とよく分からないことを言っていたが、街の人からはたくさんの感謝の言葉を貰った。

 解体所のみんなは、僕と別れることを惜しんでくれた。所長は「餞別《せんべつ》だ。戻ってきたらまた教えてやる」と、愛用の解体用ナイフを僕にくれた。

 銀杯の祝宴の三人は、長期の遠征で出会えなかった。ギルド長にお別れの挨拶をした後、三人に渡す手紙を預かってもらった。

 旅立つ最後の夜、僕たちはこの家と姿を見せない猫にお別れをするため、お別れのパーティーを開いた。いろんな料理を大皿に盛って、猫さんがこっそり食べてもいいように並べた。

 みんなで食べていたら、猫さんの声がした。

「残念だ。お前たちも出ていくのか」

 さびしそうに猫さんが話す。

「猫さん、いつも来ている三人が、管理人に決まったんだ」
「あやつらか。まあよい」

「僕たち、かならず帰ってくるから」

 猫さんは「待っておるぞ」と一言だけ言うと、もう声をかけてこなかった。



 翌日、僕たちは次の街へ向かった。

 まだ見ぬ人たちに、笑顔と幸せを配るために。

    (カレールゥ編 完)


 ※おまけで、あと1話あります。お楽しみに。
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