異世界来たんだから気ままに過ごしたっていいんじゃない?

華町はる

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0話 異世界転生!?新たなる人生

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 「今日も虐められる。」

 俺は未来が見えるわけではない。けど、その未来は日常の確定事項のごとく確実に起こる事象だ。

 「はぁ。。。」

 ついついため息が出てしまう、そんな朝6:30は、俺の一番嫌いな目覚め直後の時間だ。

 いつもの如く、学校へ行く準備をして、軽く朝食を食べて、家を出る。

 ちなみに親はいない。俺が幼稚園の時に事故で二人とも他界して、昨年までは祖父と祖母に育てられた。しかし、その祖父と祖母も昨年寿命でこの世を去った。
 親族と呼べる人間もおらず、親の遺産だけで生活している状況だ。

 そんな俺は小学校の入学と同時に虐められた。理由は親がいないから。

 だから俺は、そんな奴らを見返すために勉強をして、将来は検察官になりたいと思っている。悪い奴らを徹底的に成敗したいのだ。

 その為には、虐められようが、金を取られようが我慢して学校へ通う。

 今日も、その覚悟を持って登校していた。

 いつもの電車に乗る為に、ホームに向かう駅の階段を登ろうと階段に向かっていると、階段の真ん中にヤンキー座りしている3人の男子高校生が目に入った。

 『佐久間 たけし』『奈良 ようすけ』『島林 まさる』の俺を虐める学校のリーダー的な奴らだった。

ーードキンッ

 そいつらが目に入った瞬間、全身が硬直し鼓動が高鳴り息が浅くなってくるのが分かる。

 幸い向こうはまだこちらに気付いていないようだ。

 (ヤバイヤバイヤバイ、なんでここに?俺を待ち伏せ!?学校に行けなくなったら……あぁ、どうしよう…)

 先程までの覚悟が全て崩れ去り、心の中には恐怖心のみが残る。

 (俺は、なんて情けないんだ)

 自分の恐怖心にツバを吐きかけ、ゆっくり、且つ深く呼吸をし、整える。
 少しばかり落ち着きを取り戻した後、冷静に考える。
 そして、少し危険は伴うが、解決の糸口を発見した。

 (階段の下にあるエレベーターにバレずに乗れば、ヤツ等の背後、階段の上に降りることが出来る。幸い、ヤツ等は会話に夢中になっていて、後ろを全く気にしていない。もし、後ろを振り返られなければ、バレないまま改札口に向かう事が出来る、よし。うん、これしかない。)

 もう一度、深く呼吸を整え、俺は震える足を一歩前に出した。

 人混みに紛れ、なんとかバレないようにエレベーター前に到着しエレベーターを待つ。

 (よし、まだ気づかれていない、あとはエレベーターが来れば。)

 視線の端でヤツ等を捉え、エレベーターがなかなか来ない事に若干の苛立ちを覚えながら、待つ事数十秒。

 やっとエレベーターが到着し、扉が開く。

 少々マナーは悪いが、中から人が降りてきたと同時に中に入る。
 でも、そんなことを気にしている場合ではない。エレベーターから降りてくる人たちに、不快な目線を送られつつも、ズイズイと奥へ進む。

 そして、なんとかエレベーターの一番奥を確保する事ができた。

 (ふー。ここまではなんとか来れた……これで上まで行けば、あとはなんとか……ふぇ!?)

 安心したのも束の間、ヤツ等に視線を戻すと『まさる』がこちらを見ている事に気がついた。
 
 なんで……?

 そんな疑問が浮かぶが、頭が真っ白になり全く考えられない。

 そして、『まさる』が他二人に何かを伝えた後、『たけし』『ようすけ』もこちらに視線を向けた。

 (あぁ……ヤバイヤバイ……どうすれば……。。。)

 考えているうちに、エレベーターが閉まり、改札口階へと向かう。

 そして、エレベーターの中からは、三人がエレベーターの改札口階の降り口に向かって階段を登っているのが見えた。

 俺の心臓は、破裂しそうな程に脈を打っていた。
   
 (どうしよう…)

 考えても答えの出ない問いにあたふたし、誰も助けてくれない現実に、絶望を覚え、目を閉じた。

 (こんな世界、無くなればいいのに。学校が、社会が、日本が、無くなればいいのに。アイツらが全員居なくなればいいのに。……いや、俺がこの世界から消えて無くなれば良いだけか。)

 そして、そんな事をポツリと思った瞬間だった。


ーーガコンッ、ピーピーピーピー危険を感知しました。緊急停止します。


 それは、突然起こったのだ。
 俺は目を開けてエレベーター内を見た。

 幸い、ガラス張りのエレベーターだった為、真っ暗な事は無かったが、エレベーターの照明が消え、突然アナウンスが流れ始めたようだった。
 
 中にいたOL風の女子2名からは悲鳴、サラリーマン一名からは、ため息が漏れていた。

 そんな中、俺だけは、処刑までの時間が伸びた犯罪者の如く、深い溜息と安堵感に包まれていた。

ーー安全装置を解除。緊急降下致します。

 しかし、安堵も束の間、アナウンスと同時にエレベーターはジェットコースターの様に緊急降下を始めた。

 チン寒ってやつだ。

 これには、俺もびっくりし、OL風女子2名とともに悲鳴をあげていた。ちなみに、サラリーマン一名も悲鳴をあげていた。

 明らかに上がってきた距離を超えて下降しているが、今はそんな事を気にしている場合ではない。

ーー安全を確認。転生装置起動、確認。実行致します。
 
 悲鳴の中、そんなアナウンスが聞こえた瞬間、俺たちエレベーターの中にいた人達は、皆眩い光に包まれた。


◆◇

ーーチンッ

「なあ、まさる。さっきこのエレベーターに乗ってたよな??」

「う、うん。確かに乗ってたよな。確認したもんな?な?よーすけ?」

「乗ってた乗ってた!俺も見たもん!……どこ行ったんだ?」

「あいつ、手品師かよっ!まぁ俺らの見間違いじゃね?気にする事ねーよ!金づるが居ないけど、待つの飽きたしゲーセン行こ、ゲーセン!」

「ギャハハ、まぁいいか!いこーぜ!!今日こそはたけしに勝つかんなー!」

「っしゃ、その勝負乗ったっ!負けたら昼メシおごりな!」

 こうしてアホ三名は、特に気にするそぶりもせずにゲーセンに向かう。

 誰も乗っていないエレベーターの扉だけが寂しく、次のお客さんを乗せるべく静かに待っているのだった。
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