魔女達に愛を

リーゼスリエ

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ソレイユ編①太陽

太陽の記憶

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太陽が燦々と輝く午後、健司たちは南の村を後にし、新たな目的地――海沿いの街を目指して歩き続けていた。

夏の陽光は容赦なく肌を焦がし、蝉の鳴き声が周囲を包む。

そんな中、仲間の一人、太陽の魔女ソレイユは日陰を探して木陰に腰を下ろしていた。

「少し、ここで休もうか」

健司の声に皆が頷く。水を飲みながら、木々に囲まれた静かな空間にしばしの安らぎが訪れた。

ソレイユは健司の方を見て、そっと言った。

「……優しいのね、あなた」

健司は驚いたように笑って首を振った。

「いえ……ある魔女から教わったんです。魔法を使う魔女のほとんどは、恐れが原因で力に目覚めたって」

その言葉に、ソレイユの目がわずかに揺れる。

「……その通りだよ。私も、そうだった」

木漏れ日が揺れる中、ソレイユは立ち上がり、仲間たちを見回した。

「話してあげよう。私の過去を」

ルナとミイナは静かに頷き、クロエもそっとソレイユの隣に座った。カテリーナは腕を組み、エルネアやリセルも、静かに耳を傾ける。

ソレイユは、少し空を見上げてから語り始めた。

「……私がいた街には、ある風習があった。“太陽はすべてのエネルギーを与える存在だ”って。だから、子どもは外で遊び、大人も日光浴を義務とされていた」

「……それって、ちょっと厳しいね」

とミイナがつぶやく。

ソレイユは頷いた。

「そう。でも私は本が好きで、図書館や家の中にいることが多かったの。周囲からは“奇妙な子”って言われてたわ」

彼女の声は淡々としていたが、その奥には深い苦しみがにじんでいた。

「ある日、街で“魔女が現れた”って噂が広まったの。近くで草木が枯れたり、小動物が急に死んだりしたせいで……不吉だって」

「……嫌な流れだね」

とリセルが低く呟く。

「うん……で、私が“魔女ではないか”と疑われた。誰も証拠なんてなかった。ただ、本を読んでた、家にいた、それだけ」

「それで……?」

健司の声が震えていた。

「証明させるために、太陽の下に、何時間も磔にされた」

言葉の重さに、誰もが息を呑んだ。

「“太陽の恩恵を受けられないなら、魔女だ”って。太陽の熱で、肌が焼けて、息が苦しくて、でも、叫んでも誰も助けてくれなかった」

クロエが拳を握りしめ、ルナとミイナも泣きそうな顔で見つめていた。

「私の魔法……“太陽”を操る力は、その時に目覚めたの。あのときの太陽の熱、そのすべてを、体の奥底で飲み込んだ。そして……」

ソレイユは拳を握った。

「私は、その力で鎮圧した。磔を解かれたあと、気がついたら街の一角が燃えていた。みんな、私を本物の魔女だと認めた。でも、同時に、恐れた。私は、追われたの」

「そんなことが……」

健司は言葉を失っていた。

「信じてくれる?」

「もちろんです。信じます。だって……その痛みを、今も感じてるから」

健司はそっとソレイユの手を握った。

彼女の手は少し震えていたが、しっかりと握り返してきた。

「ありがとう……」


しばらくの沈黙のあと、ローザが口を開いた。

「私もそうだった。信じられないかもしれないけど、最初はただ、人を守りたかっただけ。でも……恐れられた」

リーネもうつむきながら呟く。

「“癒し”も“治療”も、時に人を狂わせる。使い方を間違えば、神にも悪魔にもなる」

リセルが静かに言った。

「健司……あなたは、どうして、私たちを信じられるの?」

「……それは、誰もが悲しみを抱えていて、それでも生きようとしてるのが分かるから」

健司はまっすぐに言った。

「過去にどんなことがあっても……それを乗り越えて、今を生きてるあなたたちを、僕は尊敬しています」

ソレイユの目に、わずかに涙がにじんだ。

「じゃあ……あなたがその街にいたら、助けてくれた?」

健司は迷いなく頷いた。

「……はい。絶対に助けました」

「……そう。なら、あなたと一緒に歩いてみたい」


その夜、キャンプの火を囲みながら、ソレイユは太陽の魔女としての誇りを少しだけ取り戻していた。

「もう、太陽が怖くなくなる日が来るのかな……」

そう呟いた彼女に、クロエが静かに言った。

「一人じゃ難しい。でも、ここにはあなたを照らす人がいる。太陽を、違う形で見せてくれる人が」

ソレイユは健司を見た。

月明かりの下で、焚き火を見つめるその背中は、静かに彼女を包み込んでいた。
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