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セレナ編④高原の街スラリー
アスフォルデの魔女会議
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高原の街スラリーは、昼下がりの穏やかな風に包まれていた。公園のベンチに並んで腰掛ける七人の女性たち。カテリーナ、エルネア、ソレイユ、ヴェリシア、ローザ、ミリィ、そしてリーネ。彼女たちは皆、健司と旅を共にしてきた魔女、あるいは関係者だった。
木陰に風が揺れ、落ち葉がさらりと舞う。だが、彼女たちの表情は静かで、どこか緊張感を含んでいた。
最初に口を開いたのはカテリーナだった。
「見たわね、あれ……健司の“魔法”」
彼女の言葉に、全員が一瞬息を止めた。
ソレイユが静かに頷いた。
「見たというより……体験した、という感じかな。リズリィとクラリーチェがあそこまで驚愕するなんて、ちょっと信じられなかったよ」
「でも、当然よ」
ヴェリシアが腕を組みながら言った。
「死者が蘇ったのよ。ただの幻じゃない。肉体を伴って、魂も戻っていた。魔法の域を越えてるわ」
「カリストの魔女たちは、“あってはならない”って言ってたけど……あれがもし本当に可能なら、世界は変わる」
エルネアの声は低く、しかし確信を帯びていた。
ミリィがぽつりとつぶやいた。
「でも、あの時、怖くなかったんだ。むしろ、すごく……あたたかかった」
「それが一番、不思議なのよ」
カテリーナが眉をひそめた。
「普通なら、生と死の境を越える行為には、どこか不気味さがつきまとう。自然の摂理に抗うことだから。でも健司のそれは……違った。まるで、あれが当然であるかのように、誰にも疑問を抱かせなかった」
沈黙が一瞬、公園に降りた。
ローザが顔を上げ、遠くの空を見つめるように言った。
「きっと、魔法じゃないのよ。健司の力は。少なくとも、私たちが知っているような、体系化された力じゃない。もっと……根源的な何か」
「愛の力……?」
と、リーネが口にした。
「だとしたら、あまりにも強すぎる。世界を塗り替えるほどの……」
「本気でそう思ってるの?」
ヴェリシアがからかうように笑うが、その笑みは曇っていた。
カテリーナは言葉を探すように視線を落とし、そしてゆっくりと語り始めた。
「……私たちはずっと、魔法の強さ、才能、血統に縛られてきた。特にカリストでは“純血”が絶対の価値。だから、リズリィやクラリーチェのような魔女が育ち、あの国を動かしている」
「でも、健司はそのどれにも当てはまらない」エルネアが続けた。
「血統も、純粋な魔力の量も特筆すべきものじゃない。でも……世界が彼に応えている」
ミリィが、そっと手を握りしめた。
「だって、レリアさん、笑ってたよ。あの時、“ありがとう”って言ってた。そんな死者、見たことない……あれが幻覚なんかじゃないって、私、心で感じた」
「私もだよ」
とソレイユ。
「不思議だったけど、あの瞬間だけは、どこにも“争い”がなかった。リズリィも、クラリーチェも、あの光の中では……止まっていた。魔法も、心も」
誰かがふと、空を見上げた。真っ白な雲が、ゆっくりと流れていた。
「健司がやってるのは、“癒し”なのかもしれないな」
ローザがつぶやいた。
「破壊でも制圧でもない。誰かの心をほどく力。魔法のようで魔法じゃない」
カテリーナが深く息を吐く。
「……カリストは、きっと動くわ。ラグナも、クラリーチェも、リズリィも、健司を止めようとする。あんな存在を、彼らが放っておくはずがない。でも……」
彼女は言葉を切り、皆を見渡した。
「私たちは、あの時の光景を知ってしまった。レリアが目を開き、妹の名前を呼び、微笑んだ。あの瞬間の“奇跡”を、私は信じたい」
全員が静かに頷いた。誰も口には出さなかったが、心の中で、確かにあの時の感動は刻まれていた。世界がほんの一瞬だけ、争いも、悲しみも、痛みもなく、ただ温かな光に包まれたのだ。
「……でも、逆に言えば、それだけのことをしたってこと。健司は、世界中の注目を集めた。これからは、誰かが“殺しに来る”かもしれない」
エルネアの言葉に、皆の顔が引き締まる。
「そうね。でも、それでも私は、健司についていくわ」
カテリーナがきっぱりと宣言した。
「彼の力を恐れるより、信じたい。私が選んだ道だから」
「私もだよ」
ソレイユが微笑んだ。
「健司を見てると、心が楽になるんだ。あの人がいるなら、私は何度だって立ち上がれる」
「私も」
リーネが頷く。
「健司が見せてくれる世界を、もっと見たい」
ヴェリシアも、わずかに口元をほころばせた。
「……面倒な男ね。でも、飽きないわ」
ローザとミリィも静かに笑い合い、うなずいた。
カテリーナは、皆の視線を受け止めながら、最後に小さくつぶやいた。
「さあ、次は何が待っているかしら。カリストの“本当のトップ”……神聖魔法の使い手と、いずれ向き合うことになるかもしれない」
エルネアが、遠くを見ながら答えた。
「その時も、健司ならきっと——恐れずに、手を差し伸べると思うわ」
七人の心は、静かに一つになっていた。恐れではなく、希望の中で。
木陰に風が揺れ、落ち葉がさらりと舞う。だが、彼女たちの表情は静かで、どこか緊張感を含んでいた。
最初に口を開いたのはカテリーナだった。
「見たわね、あれ……健司の“魔法”」
彼女の言葉に、全員が一瞬息を止めた。
ソレイユが静かに頷いた。
「見たというより……体験した、という感じかな。リズリィとクラリーチェがあそこまで驚愕するなんて、ちょっと信じられなかったよ」
「でも、当然よ」
ヴェリシアが腕を組みながら言った。
「死者が蘇ったのよ。ただの幻じゃない。肉体を伴って、魂も戻っていた。魔法の域を越えてるわ」
「カリストの魔女たちは、“あってはならない”って言ってたけど……あれがもし本当に可能なら、世界は変わる」
エルネアの声は低く、しかし確信を帯びていた。
ミリィがぽつりとつぶやいた。
「でも、あの時、怖くなかったんだ。むしろ、すごく……あたたかかった」
「それが一番、不思議なのよ」
カテリーナが眉をひそめた。
「普通なら、生と死の境を越える行為には、どこか不気味さがつきまとう。自然の摂理に抗うことだから。でも健司のそれは……違った。まるで、あれが当然であるかのように、誰にも疑問を抱かせなかった」
沈黙が一瞬、公園に降りた。
ローザが顔を上げ、遠くの空を見つめるように言った。
「きっと、魔法じゃないのよ。健司の力は。少なくとも、私たちが知っているような、体系化された力じゃない。もっと……根源的な何か」
「愛の力……?」
と、リーネが口にした。
「だとしたら、あまりにも強すぎる。世界を塗り替えるほどの……」
「本気でそう思ってるの?」
ヴェリシアがからかうように笑うが、その笑みは曇っていた。
カテリーナは言葉を探すように視線を落とし、そしてゆっくりと語り始めた。
「……私たちはずっと、魔法の強さ、才能、血統に縛られてきた。特にカリストでは“純血”が絶対の価値。だから、リズリィやクラリーチェのような魔女が育ち、あの国を動かしている」
「でも、健司はそのどれにも当てはまらない」エルネアが続けた。
「血統も、純粋な魔力の量も特筆すべきものじゃない。でも……世界が彼に応えている」
ミリィが、そっと手を握りしめた。
「だって、レリアさん、笑ってたよ。あの時、“ありがとう”って言ってた。そんな死者、見たことない……あれが幻覚なんかじゃないって、私、心で感じた」
「私もだよ」
とソレイユ。
「不思議だったけど、あの瞬間だけは、どこにも“争い”がなかった。リズリィも、クラリーチェも、あの光の中では……止まっていた。魔法も、心も」
誰かがふと、空を見上げた。真っ白な雲が、ゆっくりと流れていた。
「健司がやってるのは、“癒し”なのかもしれないな」
ローザがつぶやいた。
「破壊でも制圧でもない。誰かの心をほどく力。魔法のようで魔法じゃない」
カテリーナが深く息を吐く。
「……カリストは、きっと動くわ。ラグナも、クラリーチェも、リズリィも、健司を止めようとする。あんな存在を、彼らが放っておくはずがない。でも……」
彼女は言葉を切り、皆を見渡した。
「私たちは、あの時の光景を知ってしまった。レリアが目を開き、妹の名前を呼び、微笑んだ。あの瞬間の“奇跡”を、私は信じたい」
全員が静かに頷いた。誰も口には出さなかったが、心の中で、確かにあの時の感動は刻まれていた。世界がほんの一瞬だけ、争いも、悲しみも、痛みもなく、ただ温かな光に包まれたのだ。
「……でも、逆に言えば、それだけのことをしたってこと。健司は、世界中の注目を集めた。これからは、誰かが“殺しに来る”かもしれない」
エルネアの言葉に、皆の顔が引き締まる。
「そうね。でも、それでも私は、健司についていくわ」
カテリーナがきっぱりと宣言した。
「彼の力を恐れるより、信じたい。私が選んだ道だから」
「私もだよ」
ソレイユが微笑んだ。
「健司を見てると、心が楽になるんだ。あの人がいるなら、私は何度だって立ち上がれる」
「私も」
リーネが頷く。
「健司が見せてくれる世界を、もっと見たい」
ヴェリシアも、わずかに口元をほころばせた。
「……面倒な男ね。でも、飽きないわ」
ローザとミリィも静かに笑い合い、うなずいた。
カテリーナは、皆の視線を受け止めながら、最後に小さくつぶやいた。
「さあ、次は何が待っているかしら。カリストの“本当のトップ”……神聖魔法の使い手と、いずれ向き合うことになるかもしれない」
エルネアが、遠くを見ながら答えた。
「その時も、健司ならきっと——恐れずに、手を差し伸べると思うわ」
七人の心は、静かに一つになっていた。恐れではなく、希望の中で。
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