魔女達に愛を

リーゼスリエ

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ヴェリシア編⑤守護者 ヒシリエ

ヒシリエとリセルの対峙

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翌日、健司たちは北へと向かっていた。
 北には、冷たい風と緑の光が混ざり合っていた。まるで、見えない炎が街そのものを覆っているようだった。

「……健司さん、そろそろ休もうか?」

 ミリィが小さくつぶやいた。だが健司は首を横に振る。

「まだ大丈夫。焦る必要はないけど……立ち止まっても仕方ない」

 歩きながら、健司はふと隣に並んでいたファルネーゼに声をかけた。

「ファルネーゼ、聞いていい? 僕たち……野蛮な魔女達に狙われてるけど、フラムと彼女たちは仲がいいの?」

 ファルネーゼは長いまつげを伏せ、淡く笑った。

「良くないわ。彼女たちのほとんどは“血統”ではない。魔力も不安定で、愛よりも本能に従う。だから野蛮なこともできる」

「そうなんだ……よかった」

 健司はほっとしたように微笑んだ。

 だが、その穏やかな空気は突如として破られた。

 ――ボウッ。

 足元の土が割れ、緑の炎が立ち上る。
 風が一変し、空が淡く緑に染まる。

「ここから先には、行かせない」

 声が響いた。
 炎の中に立つ女――緑の髪、金の瞳。背筋がまっすぐで、周囲の風すら従っているようだった。

「第3の守護者……ヒシリエ」
 
ファルネーゼが小さくつぶやいた。

 ヒシリエは、冷たい微笑を浮かべて言った。

「バーネ、ファルネーゼ、プライドはないのか? よりによってアナスタシアの味方になるとは」

「違う」

ファルネーゼは即座に言い返した。

「信じてみたいんだ。あの人を」

 ヒシリエの瞳が鋭く光る。

「信じる? その女が何をしたか、忘れたのか? カルナ様がいなくなった原因を作ったんだぞ」

 カルナ――その名を聞いた瞬間、ファルネーゼは唇をかんだ。
 ミリィも不安そうに健司を見上げた。

「一体、何があったんですか?」

健司が問いかけた。

「さぁ、人間のおまえが知る必要はない」
 
ヒシリエは冷たく言い放つと、腕を横に振った。

 緑の炎が広がり、道を塞ぐ壁が現れた。

「――《グリーンウォール》」

 燃えているのに熱くない。だが、近づくと胸の奥が焼かれるような痛みが走った。
 まるで“心”が炎に焦がされるようだった。

「この壁は、心を映す。迷いを持つ者は通れない。ファルネーゼ、そしてその人間……お前たちはここで終わりだ」

 誰も動けなかった。
 だが、次の瞬間――その緑の炎が、闇に溶けた。

「……!」
 
ヒシリエが目を見開いた。

 闇が、静かに炎を包み込み、跡形もなく消していった。

 炎の向こうに、黒い髪の女性が立っていた。
 冷たい瞳、落ち着いた呼吸。

「リセル……」

健司がつぶやいた。

「私たちは前に行く」
 
リセルは短く言い放った。

「お前は――!」
 
ヒシリエが構えを取る。

「闇の調停者リセル。なぜお前がここに……そうか、正体を隠していたんだね。トップ20に入る魔女」

 その言葉に、誰もが息を呑んだ。
 ミリィの瞳が大きく揺れた。

「正体……?」

 ヒシリエは口角を上げた。

「知らないのか? その女は、自分の決定にそぐわない村を五つ、滅ぼした女だ」

 沈黙が走った。

 ミリィは震える声で叫ぶ。

「嘘だよ! リセルは……組織の中でも、いつも仲裁してくれた人だよ。そんな酷いこと、するはずない!」

「嘘ではない。北では有名な話だ」
 
ヒシリエは冷たく言い放った。

「“黒き裁定者”。感情を持たず、ただ秩序のために命を切り捨てた女。お前がそれを知らなかっただけだ」

 健司はリセルを見た。
 だが、リセルの表情は変わらない。まるで過去を受け入れているようだった。

「……本当なの?」
 
健司が静かに問う。

 リセルは少しだけ瞳を閉じ、そして答えた。

「……本当よ」

 ミリィの目に涙が浮かぶ。

「なんで……そんなこと」

「守るためだった」
 
リセルの声は、どこか壊れたように淡々としていた。

「当時、ある方の命令で、村に行った。私は――止めた。ただ、それだけ」

「だが結果は、五つの村の消滅だ」

ヒシリエの声が刺さるようだった。

「お前は正しかったのか? それとも、自分を正しいと信じただけか?」

 リセルは黙ってヒシリエを見つめた。

 ――風が止む。

 二人の間に、見えない圧力が走った。
 炎と闇、相反する魔力が大地を震わせる。
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