王子の恋

うりぼう

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(アスター視点)





(……浮かない表情が多いな)

心を入れ替え、ノエルこそが自分の運命だと自覚した。
あれから何度も何度もノエルの元へと足を運び、他愛のない話を繰り返してはいるのだが、ノエルの表情はどこか浮かない。

(俺と話すのが嫌なのだろうな)

ノエルの表情を見ているとそう思ってしまう。
ノエルがこの国に来た当日に告げた言葉。
それから視線すら合わせない日々が続き、果ては勘違いで歌を禁ずる酷い言葉を投げかけた。

(……当然か、嫌われても仕方がないな)

自分の態度はそれだけ酷いものだった。

シャノンが帰郷した直後にノエルには今までの行動を謝罪した。
本人は一体何の事だろうと首を傾げていたが、心当たりがありすぎてどれに対しての謝罪なのかわからなかったのだろう。
再度の謝罪にもきょとんと目を瞬かせているのが、そんな場合ではないのに可愛いと感じてしまった。

あれからノエルの姿を無意識に追ってしまう。
以前は気付かなかったが、ノエルは身分の上下関係なしに礼を言い謝罪をし頭を下げる。
困った人がいればおずおずと声をかけ、手伝いを申し出ている。
さすがに次期王妃にそんな事はさせられないと使用人達も遠慮し、それにしょんぼりと肩を落とすのがまた可愛かった。
王族としてはあるまじき行為だが、優しく真摯なその態度に周りの目が変わってきているのを感じる。

「ねえ、この前ノエル様に声かけてもらっちゃったの」
「荷物が多かった日でしょう?最初は正直王女様やお兄様と比べて……と思ってしまったけどすごく優しいのよね」
「そう!そうなの!雰囲気も柔らかいしかけてくださるお言葉がすごく優しくて」
「私偉い方にお礼言われたのなんて初めてよ。それもいつもしている仕事の事でだなんて」

「いつも美味しいお食事ありがとう、ですって」
「お部屋のお掃除もありがとうって言われたわ」
「お水を持っていっただけでもお礼を言ってくださるのよ」
「この前は庭師とも会話していたわ」
「とっつきにくい方かと思っていたけど、真逆だったわね」

使用人達の間でもノエルの存在が少しずつ大きくなってきている。
城を歩けば日に一度は必ずノエルの名を耳にするようになった。

最初が最初なだけに俺とも気まずいだろうに、それを蒸し返す事もない。
非難されても仕方がない態度をとっていたのにそれを責める事もしない。
どれだけ懐が深いのかと、ノエルに日ごとに強く惹かれていく。
想いが一気に膨らみすぎて、すぐにでも爆発してしまいそうだ。

(好きだ)

そう一言伝えれば何かが変わるだろうか。
だが一度はノエルを傷付けた俺が簡単に口に出しても良いものだろうか。
もう既に結婚しているのだから当然想いを告げるのは自由なのに躊躇ってしまう。

ただただ時間だけが過ぎていく中、だんだんと焦りが募っていった。

早くノエルと笑い合いたい。
早くノエルに触れたい。
どんな小さな事でも良い、どんな些細な事でも色んな感情をノエルと共有したい。
そんな望みが日に日に膨らんでいく。

そしてそれ以上に……

「その、もう歌は歌わないのか?」
「……え?」

いつものようにノエルの部屋にやってきて他愛のない話をした後。
自分が禁じたにも関わらず、俺は思わずそんな事を訊ねてしまっていた。


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