7 / 14
7
しおりを挟む
(アスター視点)
(……浮かない表情が多いな)
心を入れ替え、ノエルこそが自分の運命だと自覚した。
あれから何度も何度もノエルの元へと足を運び、他愛のない話を繰り返してはいるのだが、ノエルの表情はどこか浮かない。
(俺と話すのが嫌なのだろうな)
ノエルの表情を見ているとそう思ってしまう。
ノエルがこの国に来た当日に告げた言葉。
それから視線すら合わせない日々が続き、果ては勘違いで歌を禁ずる酷い言葉を投げかけた。
(……当然か、嫌われても仕方がないな)
自分の態度はそれだけ酷いものだった。
シャノンが帰郷した直後にノエルには今までの行動を謝罪した。
本人は一体何の事だろうと首を傾げていたが、心当たりがありすぎてどれに対しての謝罪なのかわからなかったのだろう。
再度の謝罪にもきょとんと目を瞬かせているのが、そんな場合ではないのに可愛いと感じてしまった。
あれからノエルの姿を無意識に追ってしまう。
以前は気付かなかったが、ノエルは身分の上下関係なしに礼を言い謝罪をし頭を下げる。
困った人がいればおずおずと声をかけ、手伝いを申し出ている。
さすがに次期王妃にそんな事はさせられないと使用人達も遠慮し、それにしょんぼりと肩を落とすのがまた可愛かった。
王族としてはあるまじき行為だが、優しく真摯なその態度に周りの目が変わってきているのを感じる。
「ねえ、この前ノエル様に声かけてもらっちゃったの」
「荷物が多かった日でしょう?最初は正直王女様やお兄様と比べて……と思ってしまったけどすごく優しいのよね」
「そう!そうなの!雰囲気も柔らかいしかけてくださるお言葉がすごく優しくて」
「私偉い方にお礼言われたのなんて初めてよ。それもいつもしている仕事の事でだなんて」
「いつも美味しいお食事ありがとう、ですって」
「お部屋のお掃除もありがとうって言われたわ」
「お水を持っていっただけでもお礼を言ってくださるのよ」
「この前は庭師とも会話していたわ」
「とっつきにくい方かと思っていたけど、真逆だったわね」
使用人達の間でもノエルの存在が少しずつ大きくなってきている。
城を歩けば日に一度は必ずノエルの名を耳にするようになった。
最初が最初なだけに俺とも気まずいだろうに、それを蒸し返す事もない。
非難されても仕方がない態度をとっていたのにそれを責める事もしない。
どれだけ懐が深いのかと、ノエルに日ごとに強く惹かれていく。
想いが一気に膨らみすぎて、すぐにでも爆発してしまいそうだ。
(好きだ)
そう一言伝えれば何かが変わるだろうか。
だが一度はノエルを傷付けた俺が簡単に口に出しても良いものだろうか。
もう既に結婚しているのだから当然想いを告げるのは自由なのに躊躇ってしまう。
ただただ時間だけが過ぎていく中、だんだんと焦りが募っていった。
早くノエルと笑い合いたい。
早くノエルに触れたい。
どんな小さな事でも良い、どんな些細な事でも色んな感情をノエルと共有したい。
そんな望みが日に日に膨らんでいく。
そしてそれ以上に……
「その、もう歌は歌わないのか?」
「……え?」
いつものようにノエルの部屋にやってきて他愛のない話をした後。
自分が禁じたにも関わらず、俺は思わずそんな事を訊ねてしまっていた。
(……浮かない表情が多いな)
心を入れ替え、ノエルこそが自分の運命だと自覚した。
あれから何度も何度もノエルの元へと足を運び、他愛のない話を繰り返してはいるのだが、ノエルの表情はどこか浮かない。
(俺と話すのが嫌なのだろうな)
ノエルの表情を見ているとそう思ってしまう。
ノエルがこの国に来た当日に告げた言葉。
それから視線すら合わせない日々が続き、果ては勘違いで歌を禁ずる酷い言葉を投げかけた。
(……当然か、嫌われても仕方がないな)
自分の態度はそれだけ酷いものだった。
シャノンが帰郷した直後にノエルには今までの行動を謝罪した。
本人は一体何の事だろうと首を傾げていたが、心当たりがありすぎてどれに対しての謝罪なのかわからなかったのだろう。
再度の謝罪にもきょとんと目を瞬かせているのが、そんな場合ではないのに可愛いと感じてしまった。
あれからノエルの姿を無意識に追ってしまう。
以前は気付かなかったが、ノエルは身分の上下関係なしに礼を言い謝罪をし頭を下げる。
困った人がいればおずおずと声をかけ、手伝いを申し出ている。
さすがに次期王妃にそんな事はさせられないと使用人達も遠慮し、それにしょんぼりと肩を落とすのがまた可愛かった。
王族としてはあるまじき行為だが、優しく真摯なその態度に周りの目が変わってきているのを感じる。
「ねえ、この前ノエル様に声かけてもらっちゃったの」
「荷物が多かった日でしょう?最初は正直王女様やお兄様と比べて……と思ってしまったけどすごく優しいのよね」
「そう!そうなの!雰囲気も柔らかいしかけてくださるお言葉がすごく優しくて」
「私偉い方にお礼言われたのなんて初めてよ。それもいつもしている仕事の事でだなんて」
「いつも美味しいお食事ありがとう、ですって」
「お部屋のお掃除もありがとうって言われたわ」
「お水を持っていっただけでもお礼を言ってくださるのよ」
「この前は庭師とも会話していたわ」
「とっつきにくい方かと思っていたけど、真逆だったわね」
使用人達の間でもノエルの存在が少しずつ大きくなってきている。
城を歩けば日に一度は必ずノエルの名を耳にするようになった。
最初が最初なだけに俺とも気まずいだろうに、それを蒸し返す事もない。
非難されても仕方がない態度をとっていたのにそれを責める事もしない。
どれだけ懐が深いのかと、ノエルに日ごとに強く惹かれていく。
想いが一気に膨らみすぎて、すぐにでも爆発してしまいそうだ。
(好きだ)
そう一言伝えれば何かが変わるだろうか。
だが一度はノエルを傷付けた俺が簡単に口に出しても良いものだろうか。
もう既に結婚しているのだから当然想いを告げるのは自由なのに躊躇ってしまう。
ただただ時間だけが過ぎていく中、だんだんと焦りが募っていった。
早くノエルと笑い合いたい。
早くノエルに触れたい。
どんな小さな事でも良い、どんな些細な事でも色んな感情をノエルと共有したい。
そんな望みが日に日に膨らんでいく。
そしてそれ以上に……
「その、もう歌は歌わないのか?」
「……え?」
いつものようにノエルの部屋にやってきて他愛のない話をした後。
自分が禁じたにも関わらず、俺は思わずそんな事を訊ねてしまっていた。
644
あなたにおすすめの小説
姉の男友達に恋をした僕(番外編更新)
turarin
BL
侯爵家嫡男のポールは姉のユリアが大好き。身体が弱くて小さかったポールは、文武両道で、美しくて優しい一つ年上の姉に、ずっと憧れている。
徐々に体も丈夫になり、少しずつ自分に自信を持てるようになった頃、姉が同級生を家に連れて来た。公爵家の次男マークである。
彼も姉同様、何でも出来て、その上性格までいい、美しい男だ。
一目彼を見た時からポールは彼に惹かれた。初恋だった。
ただマークの傍にいたくて、勉強も頑張り、生徒会に入った。一緒にいる時間が増える。マークもまんざらでもない様子で、ポールを構い倒す。ポールは嬉しくてしかたない。
その様子を苛立たし気に見ているのがポールと同級の親友アンドルー。学力でも剣でも実力が拮抗する2人は一緒に行動することが多い。
そんなある日、転入して来た男爵令嬢にアンドルーがしつこくつきまとわれる。その姿がポールの心に激しい怒りを巻き起こす。自分の心に沸き上がる激しい気持に驚くポール。
時が経ち、マークは遂にユリアにプロポーズをする。ユリアの答えは?
ポールが気になって仕方ないアンドルー。実は、ユリアにもポールにも両方に気持が向いているマーク。初恋のマークと、いつも傍にいてくれるアンドルー。ポールが本当に幸せになるにはどちらを選ぶ?
読んでくださった方ありがとうございます😊
♥もすごく嬉しいです。
不定期ですが番外編更新していきます!
本当に悪役なんですか?
メカラウロ子
BL
気づいたら乙女ゲームのモブに転生していた主人公は悪役の取り巻きとしてモブらしからぬ行動を取ってしまう。
状況が掴めないまま戸惑う主人公に、悪役令息のアルフレッドが意外な行動を取ってきて…
ムーンライトノベルズ にも掲載中です。
彼の理想に
いちみやりょう
BL
あの人が見つめる先はいつも、優しそうに、幸せそうに笑う人だった。
人は違ってもそれだけは変わらなかった。
だから俺は、幸せそうに笑う努力をした。
優しくする努力をした。
本当はそんな人間なんかじゃないのに。
俺はあの人の恋人になりたい。
だけど、そんなことノンケのあの人に頼めないから。
心は冗談の中に隠して、少しでもあの人に近づけるようにって笑った。ずっとずっと。そうしてきた。
愛されることを諦めた途端に愛されるのは何のバグですか!
雨霧れいん
BL
期待をしていた”ボク”はもう壊れてしまっていたんだ。
共依存でだっていいじゃない、僕たちはいらないもの同士なんだから。愛されないどうしなんだから。
《キャラ紹介》
メウィル・ディアス
・アルトの婚約者であり、リィルの弟。公爵家の産まれで家族仲は最底辺。エルが好き
リィル・ディアス
・ディアス公爵家の跡取り。メウィルの兄で、剣や魔法など運動が大好き。過去にメウィルを誘ったことも
レイエル・ネジクト
・アルトの弟で第二王子。下にあと1人いて家族は嫌い、特に兄。メウィルが好き
アルト・ネジクト
・メウィルの婚約者で第一王子。次期国王と名高い男で今一番期待されている。
ーーーーー
閲覧ありがとうございます!
この物語には"性的なことをされた"という表現を含みますが、実際のシーンは書かないつもりです。ですが、そういう表現があることを把握しておいてください!
是非、コメント・ハート・お気に入り・エールなどをお願いします!
フローブルー
とぎクロム
BL
——好きだなんて、一生、言えないままだと思ってたから…。
高二の夏。ある出来事をきっかけに、フェロモン発達障害と診断された雨笠 紺(あまがさ こん)は、自分には一生、パートナーも、子供も望めないのだと絶望するも、その後も前向きであろうと、日々を重ね、無事大学を出て、就職を果たす。ところが、そんな新社会人になった紺の前に、高校の同級生、日浦 竜慈(ひうら りゅうじ)が現れ、紺に自分の息子、青磁(せいじ)を預け(押し付け)ていく。——これは、始まり。ひとりと、ひとりの人間が、ゆっくりと、激しく、家族になっていくための…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる