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しおりを挟むあの後、きっとレイノ様は俺の事を報告しに行っただろう。
禁忌の魔法を使った人間は必ず処罰されなければいけない。
それを報告する義務が、レイノ様にはあるのだ。
(……もうここにはいれないな)
結局、一日どころかほんの一瞬しか一緒にいれなかった。
(後ろ暗すぎて怖気づくなんて、本当根性なしだな)
でもあのままだったら俺はレイノ様を拒めなかった。
レイノ様も俺を拒めなかった。
キスをして、身体を重ねてしまうのは俺にとっては嬉しい事だ。
だが、レイノ様にとっては望ましい事ではない。
(これで良かったんだ。一瞬でも、レイノ様に見つめてもらえた)
あんなに愛おしそうな瞳に見つめられ、優しい声で名前を呼ばれ。
肩に回された手の大きさや、間近で香る良い匂いにも包まれた。
唇ではないが、目尻に唇も触れた。
そもそも話した事等なかったのに、会話が出来たのだ。
(それだけで十分だ)
きっともうすぐ近衛兵がここにやってくるはず。
連行され、厳しい取り調べの後に処分が下される。
「レイノ様……」
与えられた、一人には十分すぎる程広い部屋に俺の声が虚しく響いた。
その直後。
「ニコ・キルッカ、出て来い」
「!」
扉の向こうから呼び掛けられる声に、ついに来たかと息を吐き出した。
*
「あの……」
「黙って着いて来い」
「……はい」
迎えに来た近衛兵は、ただまっすぐ前を見て歩いている。
拘束されるかと思ったのにそんな気配もなく、ただ彼の後ろをついて行く。
(なんか、想像と違うな)
もっと荒々しく扱われると思っていたので拍子抜けである。
(大人しくしてるからかな?まあ、俺一人逃げたところですぐに捕まえられるからだろうけど)
そんな事を考えている内に辿り着いたのは、あの中庭。
「……え?」
「あちらでお待ちだ」
「え?待って下さい……!」
俺を送り届けた後にすぐ立ち去る近衛兵にどういう事か訊ねようとしたのだが。
「ニコ」
「……!!!」
背後からの静かな声。
特別張り上げているわけではないのに、妙に通るその声にびくりと震えた。
(まさか、そんな……っ)
ありえない。
ありえるはずがない。
彼は俺に魔法をかけられ、こんな人間に惚れさせられたと。
禁忌を破った人間に罰をと訴えているはずで。
「ニコ、どうしたんだ?こっちに来てくれないのか?」
「……っ、レイノ、様」
信じられない思いで振り返ると、そこには笑みを浮かべたレイノ様の姿があった。
「どうして……?」
「どうして?」
僅かに震える俺に、レイノ様は足早に近付き俺の手を取る。
「!」
「お前こそ、どうして逃げるんだ」
「……え?」
いつもの優しい穏やかな口調ではない、砕けた乱暴な口調で問われた。
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