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しおりを挟む「レイノ様?」
「何だ?」
「あの……」
「……ああ、口調か?俺は普段こんなもんだ」
知らなかった。
口調もだが、レイノ様は自分のことを私と言っていたのに俺に変わってる。
レイノ様の新たな一面に、嫌いになるどころか男らしさが増したそれに胸が高鳴る。
(ってバカ!どきどきしてる場合じゃないだろ!)
そうだ、俺はこの人に魔法をかけてしまったんだ。
まさか審議にはかけず、レイノ様から直々に通達されるのだろうか。
怖い、何と言われるのだろうか。
俺を騙したな。
ここから出て行け。
お前みたいな卑怯者の顔なんか見たくない。
考えれば考える程、自分の胸を抉るようなセリフしか浮かんで来ない。
「ニコ」
「っ、すいません……っ、すいません……!」
「……ちっ、だから何なんだよその『すいません』ってのは!」
「お、俺は、あなたに魔法を……!」
「かかってねえよ」
「………………え?」
掴まれた腕は解けず、ずるずると引き摺るようにして連れていかれたのは例のベンチ。
申し訳なさに俯いていた頭をレイノ様の一言で上げる。
きょとりと目を瞬かせる俺の目を、レイノ様の鋭いそれが射抜く。
「最初から、魔法なんかかかってねえんだよ」
「え?ど、どういう事ですか?でも、俺は確かに……!」
「バーカ、俺は仮にも近衛隊長だぞ?」
(ば、バカ!レイノ様がバカと仰った……!)
そんな俗な言い回しもするのかと変なところに感動してしまう。
「これ見ろ」
「……!それは!」
レイノ様の首からぶらさがっているネックレス。
それは全ての魔法を無効化する、この世界に数個あるかないかの貴重な魔法具だった。
「余所の国の奴らが魔法で何か企てるとも限らねえからな。代々隊長にはこれが渡されるんだよ」
「そう、だったんですか」
「ああ。まあこれを持ってるのを知ってるのはほとんどいねえからお前が知らなくてもしょうがねえけどな。まあそんな事はどうでも良い。おいニコ」
「は、はい」
「お前、俺に魔法かけたんだろ?」
「……っ」
魔法具の効果でどんな魔法がかけられたのかを知ったらしい。
「どうしてだ?なんで俺に魔法をかけた?」
「それは、言わなければいけませんか?」
「ああ?当たり前だろうが」
どうして、なんて、そんなの決まってる。
「あの時、言いました……!あれが俺の全てです……!」
「ダメだ。もう一回ちゃんと言えよ。何の為に俺があんな演技までしたと思ってんだ?」
「え?」
「魔法にかかったフリして、お前をこの庭にいれたのはどうしてだと思う?」
「……」
まっすぐ、真剣な目に見つめられる。
「どうして、ですか?」
「お前が先に言え」
「……っ」
「言えよ。絶対、悪いようにはならねえから」
「それは……」
本当に?
悪いようにはならないって、俺は期待しても良いのか?
「お前は、どうして俺に魔法をかけた?」
「……お、れは……っ」
「……」
「俺は、あなたが……レイノ様が好きだから……!」
「ああ」
「だから、い、一日だけでも恋人として扱って欲しくて……っ」
「ああ」
「でも、でもレイノ様を騙してるんだって思ったら、堪えられなくて……!」
「ふっ、それで『すいません』か」
「っ、はい」
再び浮かんできた涙が頬を伝う。
レイノ様の長い指先がそれを拭い、見上げた表情は優しく微笑んでいる。
そして……
「ニコ」
「……はい」
「俺も好きだ」
「……え?」
「好きなんだ、お前の事が」
「……!」
告げられたセリフに、全ての時が止まった。
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