俺にだけ厳しい幼馴染とストーカー事件を調査した結果、結果、とんでもない事実が判明した

第五話

「……なあ、颯！」

授業後、俺は隣の颯に話しかけた。
相変わらず、机に肘をつきながらスマホをいじっている。

「なに？ 今、女の子とLINEしてて忙しいんだけど」

視線も上げずに言い放つ。
そっけない声。まるで俺が空気みたいだ。
だけど、今日だけは引かない。――俺には“ある考え”があるのだ。

「……なあ颯、聞いて驚けよ。俺、恋人できた！」

「……は？」

カチャン、と音がした。
颯がスマホを落とした。
いつも冷静なあいつが、あからさまに動揺してる。俺、初めて見たかもしれない。

「えへへ。実はな、あの高校生と付き合うことになったんだ」

「……は？」

もう一回言った。
口が半開きのまま、目だけが俺を射抜いてくる。

「もう名前呼びしてるんだぞ？ まだ16歳だから手は出さないけどな！」

冗談半分に笑ってみせると、颯が勢いよく立ち上がった。
その瞬間、肩をぐっと掴まれる。

「お前、何考えてんだよ……！？ やめとけ、やめとけって！」

いつもの冷静さなんて、どこにもない。
声が震えてる。焦ってる。

「……あいつはストーカーだぞ？お前、洗脳されてるんだよ」

眉間に皺を寄せ、吐き捨てるように言う颯。
だけど、そこにあるのは怒りというより――焦り。

「違うって！ あいつ、もう反省してるし！俺のこと、本当に大事にしてくれてるんだよ」

「……はあ？」

「それに、顔がめっちゃタイプだし！」

俺が笑って言うと、颯の手がピタリと止まる。
そのまま、ゆっくりと手を離した。

「……お前、女の子が好きなんじゃないのかよ」

声の温度が、急に下がった。
冷たいというより、どこか苦しそうな音をしていた。

「あれ？ 言ってなかったっけ？ 俺、顔が良ければ男でもいけるタイプなんだわ」

冗談っぽく言ったつもりだった。
けれど、颯の目は笑っていなかった。

「……そうか。……用事、できた。帰る」

短く言い残して、颯は教室から出ていった。

俺はひとり残された教室で、小さく息を吐く。

「……よし、作戦成功だ」