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第六話
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俺は、1階の工具棚に転がっていたカッターナイフを手に取った。頼りない。脅すための武器としては、あまりにも心許ない。けれど、仕方がないだろう。――俺は“話し合い”をしに行くのだから。
柄の冷たさが掌に伝わる。
夜の静寂の中、カチリと刃を出す音だけが妙に響いた。
あの高校生の家はもう調べてある。
あいつが「最近ストーカーされてる」なんて怯えて俺に相談してきた時には、もう全部分かっていた。
むしろ、そう言い出す前から――俺はその高校生の住所も、通学路も、SNSのアカウントも把握していた。
特定なんて簡単だった。
けれど、あいつには言わなかった。
全部――俺の“所業”も、あの高校生のせいにできると思っていたからだ。
俺は黒のパーカーを羽織った。
返り血が飛んでもいいように。
鏡に映る自分の姿を見て、思わず笑ってしまった。
まるで別人みたいだ。
こんな顔、あいつには見せられない。
夜の街を歩く。
街灯の明かりがまばらで、影ばかりが濃い。
知り合いに会わないように、わざと裏通りを選んだ。
風が冷たい。
心臓の鼓動が、遠くの犬の鳴き声に紛れて聞こえた。
やがて目的の家が見えてくる。
思っていたよりも小さくて、整っていた。
玄関の前に立ち、ゆっくりと息を吸い込む。
――そうだ。
これは全部、あいつと俺の“幸せ”のためなんだ。
ドアノブに手をかける。
カチリ。
音を立てないように、静かに扉を開ける。
その瞬間。
「……捕まえた!!」
暗闇の中から、あいつの声が響いた。突然、強い力で誰かが俺の肩を掴んだ。
「……なんで……どうしたんだよ、颯!」
一瞬、何が起きたのか分からなかった。
照明がつく。眩しさの中に浮かび上がるあいつの顔――
「……あーあ、バレちゃったか。全部。」
もう、隠す意味なんてないんだな。
柄の冷たさが掌に伝わる。
夜の静寂の中、カチリと刃を出す音だけが妙に響いた。
あの高校生の家はもう調べてある。
あいつが「最近ストーカーされてる」なんて怯えて俺に相談してきた時には、もう全部分かっていた。
むしろ、そう言い出す前から――俺はその高校生の住所も、通学路も、SNSのアカウントも把握していた。
特定なんて簡単だった。
けれど、あいつには言わなかった。
全部――俺の“所業”も、あの高校生のせいにできると思っていたからだ。
俺は黒のパーカーを羽織った。
返り血が飛んでもいいように。
鏡に映る自分の姿を見て、思わず笑ってしまった。
まるで別人みたいだ。
こんな顔、あいつには見せられない。
夜の街を歩く。
街灯の明かりがまばらで、影ばかりが濃い。
知り合いに会わないように、わざと裏通りを選んだ。
風が冷たい。
心臓の鼓動が、遠くの犬の鳴き声に紛れて聞こえた。
やがて目的の家が見えてくる。
思っていたよりも小さくて、整っていた。
玄関の前に立ち、ゆっくりと息を吸い込む。
――そうだ。
これは全部、あいつと俺の“幸せ”のためなんだ。
ドアノブに手をかける。
カチリ。
音を立てないように、静かに扉を開ける。
その瞬間。
「……捕まえた!!」
暗闇の中から、あいつの声が響いた。突然、強い力で誰かが俺の肩を掴んだ。
「……なんで……どうしたんだよ、颯!」
一瞬、何が起きたのか分からなかった。
照明がつく。眩しさの中に浮かび上がるあいつの顔――
「……あーあ、バレちゃったか。全部。」
もう、隠す意味なんてないんだな。
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