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異世界生活
この世界『テルセニア』について①
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世界樹の実を食べてお腹いっぱい。
食休みに向日葵は蓮に抱かれて眠ってしまった。
スピィ……。スピィ……。
静かな空間に向日葵の可愛い寝息のBGM。
「ユグドラシルさん。今のうちに教えてほしいことがあるんだけど……」
蓮がそう言うと、桜とユグドラシルは向日葵が起きている時には話しにくい内容であることを察した。
「はい。何でもどうぞ」
ユグドラシルは『私にわかる範囲であれば』と言葉を続けた。
「この世界について……。主に、種族と街の治安。そして、この近辺について教えてほしいです」
蓮のステータスを見た時に、鑑定に関して『エルフやドワーフなど長命な種族の一部有している』と話していた。
他にどんな種族が居るのか。
そして、関係性は問題ないのか。
生活水準の基盤を作り、魔法や戦闘に慣れれば人の街に行きたい。
その街の治安はどの程度のものなのか。
そして、魔法があるこの世界の文明は、どのような発展を遂げているのか。
向日葵が起きる前に最低限知っておきたいことを、ざっと質問した。
その質問にユグドラシルは静かに、かつ的確に答えた。
「まずは種族からご説明しますね。ご察しの通りで様々な種族が居ます」
蓮達の様に一般的な人を人族。
最も数が多い種族だ。
「人族以外は、亜人と獣人に分かれます」
人族よりも小柄で、すばしっこい小人族。
耳が少しとんがっており。細身で魔法と弓の扱いに長けたエルフ族。
背は少し低く、がっちりとした体形で、鍛冶が得意で酒好きが多いドワーフ族。
人族よりも長身で、色が白く、魔法の扱いに特化している魔人族。
鱗のような皮膚を持ち、強靭な肉体を持つ竜人族。
身体が大きく筋肉質で、頭に角のある鬼人族。
「他にも色々居ますが、今例に挙げた、耳や尻尾に体毛がなく、人族の外観に近い種族を総称して『亜人』と言います」
逆に顔や体は人族に近いが、耳や尻尾が体毛で覆われている種族を総称して獣人というそうだ。
耳が長く聴覚が優れている兎人族。
力が強く鼻が利き、戦闘能力の高い狼人族。
それぞれ種族によって長所は異なるが、耳や尻尾が体毛で覆わているらしい。
他にも、犬人族、猫人族など様々な種族が居る。
「そして、人族、亜人、獣人を総称して、人類や人間と呼んでいます」
ユグドラシルは今は人の形を成しているが、本来は思念体の様に形がなく、植物に宿っているため、どれにも当てはまらないそうだ。
精霊は精霊。
強いて当てはめるのであれば、女神たちと同じ類なのだろうと蓮は勝手に解釈した。
蓮はオタク知識をフル回転させて、そこから質問を深めた。
「それぞれ差別はありますか?」
「……。あります」
精霊は嘘を見抜く。
そして、精霊は決して嘘をつかないと何かの物語で読んだことがある。
その通りで、間はあったものの、ユグドラシルは短く答えた。
蓮が差別の理由を聞く。
頭の中では見た目、文化の不一致など、元居た世界を基準に憶測を進めていたが的外れだった。
「理由は魔法と体毛です」
魔法が発展するこの世界の人間社会では、知力が高い者や魔法を上手く扱えるものほど上位者として扱われるらしい。
生活にしても戦争にしても、魔法が中心となるからだそうだ。
獣人は肉体が強く、五感が鋭いため、肉弾戦や隠密にはとても向いている。
しかし、人族や亜人に比べると、知力が低い場合が多く、魔法の扱いは苦手な者が多い。
魔法至上主義の社会において、魔法が苦手な者は馬鹿にされ、時に迫害をうけるらしい。
人族よりもエルフ族や魔人族の方が魔法の扱いには長けていることが多い。
しかし、人族は世界で最も人口が多いため、差別されにくく、支配側に居ることが多い。
総合的に見て獣人よりも、亜人の方が魔法のに長けている。
必然的に、人族、亜人、獣人と序列が生まれたらしい。
その序列は社会レベルのため、生活水準や労働条件などかなり深刻だそうだ。
最も酷い例が、支援魔法だそうだ。
獣人は魔法が苦手なため、傷を癒すような支援魔法。
いわゆる回復魔法が使用できない場合が多い。
そのため、治療院でお金を払って傷を癒すか、回復アイテムを購入して傷を治すしかない。
どちらもそれなりに値を張るが、差別的な治療院では、獣人の足元を見て高額な治療費を要求したり、そもそも治療を拒んだりすることがあるそうだ。
「全く幼稚で理解しがたいな……」
「おっしゃる通りです」
そして、もっとも意外だった理由の体毛に関して聞くと、さらに幼稚な内容だった。
「食事に体毛が混じることを、不快に思う者が多いからです」
耳や尻尾が毛で覆われているため、人族よりも抜け毛も多い。
柔らかく軽い体毛は、風に乗って運ばれやすい。
そのため、食事に混じったり、宿屋のベッドに毛が落ちることがある。
聞けば高級な飲食店や宿屋では、人族や亜人は良くても、獣人は立入禁止のところがあるそうだ。
「ばっかみたい……」
これには桜も呆れる一方だ。
子供同士の喧嘩で、身体の強い獣人が、人族を怪我させることがある。
そのため、もめることが多い。
そういった内容であれば、まだ理解できるが、内容があまりにも低レベルだと桜は言う。
幼稚園への送り迎えをしている桜ならではの視点だと蓮は感心した。
「この世界に染まりすぎないように、御剣家の価値観も保持しないとね」
『郷に入っては郷に従え』というが、それは善悪の基準が同じ場合だ。
向日葵は特別強い加護を持っているため、この世界に染まり、差別や見下しを当たり前と思ってほしくない。
蓮と桜は強く思った。
「続いて治安ですが、かなり良いのではないかと考えられます」
ユグドラシルが言うには、差別はあるにはある。
しかし、獣人が街を歩くだけで石を投げられるようなものではない。
そのため、身構えたり、過敏にとらえる必要性はない。
あくまで、蓮の質問に対して端的な返答を下までに過ぎないと、ユグドラシルは補足した。
実際にこの場所から山を越えた先にある比較的大きなグリーデンという街や、グリーデンの先にある人族が納めるレグナム国では、差別による大きな争いは長い間、起きていないそうだ。
「子供たちはどんな風に過ごしているんですか?」
「すみません。詳細までは……」
ユグドラシルといえど世界観や大まかな世間の流れまでは分かっても、実際の生活までを完全に把握しているわけではないようだ。
「幼い子供が文字を学んだり、魔法を学んだりする場所はあるんですか?」
桜の意図を読み取り、蓮が具体的に聞く。
向日葵が通えるような学校があるのかどうかを知りたいのだ。
「大きな都市には魔法を学ぶ場所があると聞いたことはあります」
しかし、それが何歳から入れるのか。
どのようにすれば入れるのか。
そこに入れない子供がどのような生活をしているのかまでは分からないそうだ。
「充分ですよ。教えていただきありがとうございます」
大都市にある魔法学校については知っていた。
そのユグドラシルが知らないという事は、おそらく安価で気軽に通える幼稚園や小学校の様な場所や公的機関は存在しないのだろう。
より一層、保護者の教育の質が問われると蓮と桜は感じた。
「最後にこの近辺に関してですが……」
ユグドラシルはそう言うと、今度は、今蓮たちが居る大陸だけの地図を植物でダイニングテーブルに描いた。
食休みに向日葵は蓮に抱かれて眠ってしまった。
スピィ……。スピィ……。
静かな空間に向日葵の可愛い寝息のBGM。
「ユグドラシルさん。今のうちに教えてほしいことがあるんだけど……」
蓮がそう言うと、桜とユグドラシルは向日葵が起きている時には話しにくい内容であることを察した。
「はい。何でもどうぞ」
ユグドラシルは『私にわかる範囲であれば』と言葉を続けた。
「この世界について……。主に、種族と街の治安。そして、この近辺について教えてほしいです」
蓮のステータスを見た時に、鑑定に関して『エルフやドワーフなど長命な種族の一部有している』と話していた。
他にどんな種族が居るのか。
そして、関係性は問題ないのか。
生活水準の基盤を作り、魔法や戦闘に慣れれば人の街に行きたい。
その街の治安はどの程度のものなのか。
そして、魔法があるこの世界の文明は、どのような発展を遂げているのか。
向日葵が起きる前に最低限知っておきたいことを、ざっと質問した。
その質問にユグドラシルは静かに、かつ的確に答えた。
「まずは種族からご説明しますね。ご察しの通りで様々な種族が居ます」
蓮達の様に一般的な人を人族。
最も数が多い種族だ。
「人族以外は、亜人と獣人に分かれます」
人族よりも小柄で、すばしっこい小人族。
耳が少しとんがっており。細身で魔法と弓の扱いに長けたエルフ族。
背は少し低く、がっちりとした体形で、鍛冶が得意で酒好きが多いドワーフ族。
人族よりも長身で、色が白く、魔法の扱いに特化している魔人族。
鱗のような皮膚を持ち、強靭な肉体を持つ竜人族。
身体が大きく筋肉質で、頭に角のある鬼人族。
「他にも色々居ますが、今例に挙げた、耳や尻尾に体毛がなく、人族の外観に近い種族を総称して『亜人』と言います」
逆に顔や体は人族に近いが、耳や尻尾が体毛で覆われている種族を総称して獣人というそうだ。
耳が長く聴覚が優れている兎人族。
力が強く鼻が利き、戦闘能力の高い狼人族。
それぞれ種族によって長所は異なるが、耳や尻尾が体毛で覆わているらしい。
他にも、犬人族、猫人族など様々な種族が居る。
「そして、人族、亜人、獣人を総称して、人類や人間と呼んでいます」
ユグドラシルは今は人の形を成しているが、本来は思念体の様に形がなく、植物に宿っているため、どれにも当てはまらないそうだ。
精霊は精霊。
強いて当てはめるのであれば、女神たちと同じ類なのだろうと蓮は勝手に解釈した。
蓮はオタク知識をフル回転させて、そこから質問を深めた。
「それぞれ差別はありますか?」
「……。あります」
精霊は嘘を見抜く。
そして、精霊は決して嘘をつかないと何かの物語で読んだことがある。
その通りで、間はあったものの、ユグドラシルは短く答えた。
蓮が差別の理由を聞く。
頭の中では見た目、文化の不一致など、元居た世界を基準に憶測を進めていたが的外れだった。
「理由は魔法と体毛です」
魔法が発展するこの世界の人間社会では、知力が高い者や魔法を上手く扱えるものほど上位者として扱われるらしい。
生活にしても戦争にしても、魔法が中心となるからだそうだ。
獣人は肉体が強く、五感が鋭いため、肉弾戦や隠密にはとても向いている。
しかし、人族や亜人に比べると、知力が低い場合が多く、魔法の扱いは苦手な者が多い。
魔法至上主義の社会において、魔法が苦手な者は馬鹿にされ、時に迫害をうけるらしい。
人族よりもエルフ族や魔人族の方が魔法の扱いには長けていることが多い。
しかし、人族は世界で最も人口が多いため、差別されにくく、支配側に居ることが多い。
総合的に見て獣人よりも、亜人の方が魔法のに長けている。
必然的に、人族、亜人、獣人と序列が生まれたらしい。
その序列は社会レベルのため、生活水準や労働条件などかなり深刻だそうだ。
最も酷い例が、支援魔法だそうだ。
獣人は魔法が苦手なため、傷を癒すような支援魔法。
いわゆる回復魔法が使用できない場合が多い。
そのため、治療院でお金を払って傷を癒すか、回復アイテムを購入して傷を治すしかない。
どちらもそれなりに値を張るが、差別的な治療院では、獣人の足元を見て高額な治療費を要求したり、そもそも治療を拒んだりすることがあるそうだ。
「全く幼稚で理解しがたいな……」
「おっしゃる通りです」
そして、もっとも意外だった理由の体毛に関して聞くと、さらに幼稚な内容だった。
「食事に体毛が混じることを、不快に思う者が多いからです」
耳や尻尾が毛で覆われているため、人族よりも抜け毛も多い。
柔らかく軽い体毛は、風に乗って運ばれやすい。
そのため、食事に混じったり、宿屋のベッドに毛が落ちることがある。
聞けば高級な飲食店や宿屋では、人族や亜人は良くても、獣人は立入禁止のところがあるそうだ。
「ばっかみたい……」
これには桜も呆れる一方だ。
子供同士の喧嘩で、身体の強い獣人が、人族を怪我させることがある。
そのため、もめることが多い。
そういった内容であれば、まだ理解できるが、内容があまりにも低レベルだと桜は言う。
幼稚園への送り迎えをしている桜ならではの視点だと蓮は感心した。
「この世界に染まりすぎないように、御剣家の価値観も保持しないとね」
『郷に入っては郷に従え』というが、それは善悪の基準が同じ場合だ。
向日葵は特別強い加護を持っているため、この世界に染まり、差別や見下しを当たり前と思ってほしくない。
蓮と桜は強く思った。
「続いて治安ですが、かなり良いのではないかと考えられます」
ユグドラシルが言うには、差別はあるにはある。
しかし、獣人が街を歩くだけで石を投げられるようなものではない。
そのため、身構えたり、過敏にとらえる必要性はない。
あくまで、蓮の質問に対して端的な返答を下までに過ぎないと、ユグドラシルは補足した。
実際にこの場所から山を越えた先にある比較的大きなグリーデンという街や、グリーデンの先にある人族が納めるレグナム国では、差別による大きな争いは長い間、起きていないそうだ。
「子供たちはどんな風に過ごしているんですか?」
「すみません。詳細までは……」
ユグドラシルといえど世界観や大まかな世間の流れまでは分かっても、実際の生活までを完全に把握しているわけではないようだ。
「幼い子供が文字を学んだり、魔法を学んだりする場所はあるんですか?」
桜の意図を読み取り、蓮が具体的に聞く。
向日葵が通えるような学校があるのかどうかを知りたいのだ。
「大きな都市には魔法を学ぶ場所があると聞いたことはあります」
しかし、それが何歳から入れるのか。
どのようにすれば入れるのか。
そこに入れない子供がどのような生活をしているのかまでは分からないそうだ。
「充分ですよ。教えていただきありがとうございます」
大都市にある魔法学校については知っていた。
そのユグドラシルが知らないという事は、おそらく安価で気軽に通える幼稚園や小学校の様な場所や公的機関は存在しないのだろう。
より一層、保護者の教育の質が問われると蓮と桜は感じた。
「最後にこの近辺に関してですが……」
ユグドラシルはそう言うと、今度は、今蓮たちが居る大陸だけの地図を植物でダイニングテーブルに描いた。
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