異世界へ誤召喚されちゃいました 女神の加護でほのぼのスローライフ送ります

モーリー

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異世界生活:王都レグナム編

柔軟思考

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男性陣のみでの朝食会。
王は世界大会に向けての仕上がりをそれぞれに確認するが、ノームだけは様子が他と異なる。
次々に威勢の良い返事をする中で、ノームはゆっくりと口を開いた。

「正直。魔法の発動の速さも威力も伸び悩んでおります」

昨年の大会は2位。
その前は3位。
なかなか1位になれないまま。
そして、目の当たりにした蓮たちの異次元ともいえる強さ。

「あのサクラ娘っ子にすら全く勝てる気がしていないのが今の実情です」

ノームは恥じるでもなく、落ち込むでもない。
目には強くなりたいという強い意志を宿しながらありのままを話した。

「ふん。耄碌したか!情けないと思わんのか!」

ノームをすぐに罵倒するのはゲイル。
気持ちが強いことは良いが、否定的であることと実力が伴っていない。
そして、真意を見抜くことができないのが致命的だ。

蓮がそう思っていると王がゆっくりと口を開いた。

「ふむ。さすがじゃな」

王は他の者の意気込みは嫌いではない。
しかし、意気込みだけで勝てるものではない。
ノームの自己分析と正当評価に感心した。
王の言葉を聞いてゲイルは、ばつの悪そうな表情を浮かべ、黙った。

王の話でも、蓮の見立てでも四魔帝テトラゴーノンで最も強いのはノームとアクアのどちらか。
ノームは自身の伸び悩んでいる点を理解し、気合と根性で誤魔化すのではなく、話すことができる。
アクアは昨日に教えを請いに部屋に来た。
おそらく世界大会を見越してのことだったのだろう。

その自己分析と改善を模索する姿勢が他の者になく、ノームとアクアから感じる強さの秘訣だろう。

「して。どのように伸ばす?」

王はノームを見定めるように尋ねた。
注目が集まる中、ノームはより強い意志を込め『異界の者たちに助力願おうかと考えております』と言葉にした。

ノームの言葉に、王は感心して目を見開いた。
ここまで柔軟な思考の持ち主であるとは思わなかったからだ。

「ユグドラシル様やリル殿やドラコ殿ではなく、なぜレン殿たちなのじゃ?」

「異界の知識に触れることで、さらなる高見が見えるのではないかと」

強さだけではユグドラシルたちの方が上。
しかし、ノームは蓮たちを指した。
王がその理由を聞くとノームは簡潔に、そして的確に答えた。

その言葉に蓮も感心した。
強い意志と柔軟な思考。
そして改善と改良を主体的に行う姿勢。

元居た世界の全老害どもに見習ってほしいとさえ思った。

王は蓮に視線を移し、蓮はその視線に気が付いた。
蓮が王の考えを察し、小さくうなずくと王は『実はな……』と今日から蓮がフェリクスを鍛えることを説明した。

そして『ほかにも参加を希望する者は?』と言葉を続けた。

王の問いにノームとウォルフが手を上げ、少し遅れてシュバルツが手を挙げた。

「ふむ。ではゲイル以外は参加じゃな。訓練日時などは朝食後に直接レン殿に聞いてくれ」

ゲイル以外の者であれば、揉めることなく蓮と話しができることを見越してのことだろう。
王の言葉で全員の視線が蓮へと向けられた。
蓮はそれに笑顔で会釈し歓迎の意思を示した。

「よろしくお願いします」

フェリクスがそう言い頭を下げると、ウォルフも同様に頭を下げた。
そして、シュバルツは『殺されねぇようにしねぇとな』と口にし、ノームは『久しくたぎるのう』と意気込みを言葉にした。

ゲイルの敵意が増していく一方で、ゲイル以外の者とは着実に良好な関係を築き始めている。

ゲイルのことは好きになれないが、生きにくそうな性格だと感じた。
おそらく味方は少なく敵は多いだろう。

そして、蓮たちの会話には一切の興味を示さずに、がつがつと肉を食うリルには、もう少し静かに食べてほしいと心の底から思った。


「ただいま」

2度目の鐘が鳴るころに騎士団の訓練場に集合ということでまとまり、朝食の部屋を後にした。
気配探知を広げ、部屋にソフィリアたちが居ないことが分かったため、蓮とリルは部屋に戻ったのだ。

蓮が帰りを告げると桜と向日葵が明るい表情で迎えた。

「にぃにー!」

向日葵は駆け寄ってきて蓮の脚に抱き着いた。
寂しかったのだろう。
蓮は、自身が求められた嬉しさと、甘えに来た愛おしさに『そうかそうか』と頭を撫で、抱き上げた。

「おかし!すっごくおいしかったの!」

「そうかそうかぁ」

蓮が予想した寂しさなど微塵もなく、向日葵はお菓子のことを熱く語り始めた。
予測した時の満たされたような言葉でなく、蓮は少し涙を浮かべながら、そう言葉にした。

「ありがとう。すごく楽しかった」

桜は少しだけ申し訳なさそうにしたが、話さなくても楽しかったことが分かるほどに明るい表情をしている。
妹たちが楽しい夜を過ごせたのであればそれでいい。
そして桜は朝食の配慮へも感謝を伝えた。

「カロリーネさんが教えてくれたの。蓮兄の考えだって。みんなびっくりしてたよ」

カロリーネだけでなく、ソフィリアたちにも妹想いの素敵な兄だと褒め千切られていたそうだ。

「それはよかった。ドラコもユグドラシルさんもありがとね」

妹たちがこれだけ楽しめたのも、二人が守ってくれていたからこそ。
そして、二人が周囲を委縮させないように気を利かせながら向日葵を見てくれていたからだ。
蓮の言葉に、ドラコは照れながら視線をそらし、ユグドラシルは笑顔で会釈した。

「そうだ。2度目の鐘が鳴るころに訓練場に行かないといけないんだ」

蓮が経緯を説明すると、桜も2度目の鐘が鳴るときにアクアたちと訓練場で待ち合わせていると言葉にした。

「こっちも同じで、アクアさんとソフィリアだけじゃなくてガーネットさんとココさんも一緒なの」

桜が教えるのではなく、桜とソフィリア、アクアはユグドラシルが魔法を教え、ガーネットとココはドラコが指導するそうだ。

蓮はユグドラシルとドラコに感謝を伝え、同時にやりすぎないように伝えた。

「リル。訓練の間、ひまちゃんのこと頼めるかな?」

蓮が聞くとリルは快諾。
相変わらずの溺愛ぶりで安心する。
その会話を聞いて向日葵は『ひぃちゃんも、たたかうの!』と訓練への参加を希望した。
戦う気満々で構えを取る向日葵。

「今回は少し危ないかもしれないからなぁ」

蓮が言葉にすると向日葵は、潤んだ目で見つめ『どうしても?だめ?』と甘えて蓮に尋ねた。
蓮が迷ってユグドラシルとドラコを見て訓練内容を聞こうとすると『危険なことはしませんし、私どもではひまちゃん様に傷一つつけることができません』と言うため、向日葵も訓練に参加ることとなった。

「やたー!たたかうぞー!」

喜びと戦う意欲から、いつにも増して不思議な踊りを始めた。

訓練、観光、買い物、情報収集。
やりたいことは多くあるため、訓練までの時間は話し合いに使うことにした。
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