異世界へ誤召喚されちゃいました 女神の加護でほのぼのスローライフ送ります

モーリー

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異世界生活:王都レグナム編

異世界強化訓練:男性陣①

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少し早めに昼食を済ませ、フェリクスの案内のもと訓練場へと向かう。
場所は知っているし、気配探知で迷うこともない。
しかし、グリーデン同様に時計がなく、日に4度だけなる鐘が時計代わりのため、時間の感覚がつかみにくい。
そのため、開始時刻に遅れないように、フェリクスが事前に迎えに来たのだ。

いつもならリルに揺られて昼寝をする向日葵だが、訓練が楽しみなのか昼寝どころか、目に炎を宿し鼻息を荒くしている。

訓練場に付くと同時に2度目の鐘が鳴った。

訓練場にはすでに準備万端のソフィリアと四魔帝テトラゴーノン、騎士団長がいた。
観覧席には王と、その周囲に精鋭部隊。

それ以外の者はいない。

騎士団員は食事だろうか。
または巻き込まれないために人払いされているのだろう。
はたまた、自国の誇る最高戦力が蹴散らされるのを見せないためだろうか。

「ねぇ。なんで居るの?」

「じ、実は王に……」

不参加のはずの人物がいた。
ゲイルだ。
蓮は困惑し小声でフェリクスに尋ねた。

朝食後、ゲイルは王に異界人に教えを乞うなど四魔帝テトラゴーノンの品格に関わる問題だと話しに行ったそうだ。
そこで王から『魔法が不得意なレン殿に勝てたならば聞いてやろう』と答えたそうだ。

フェリクスの説明を聞き、王に視線を向けると、視線に気づいた王は親指を立てて『やってくれ』と口を動かした。
これには蓮もフェリクスも呆れそうになったが、王の気持ちもわからなくはない。
王は温厚だが、ゲイルの物わかりの悪さに苛立ち始めているのだろう。

仕方がない。
蓮が納得した様子を見て、フェリクスは他の者の横に並び『それでは!よろしくお願いいたします!』と声を上げた。

「じゃあ女性は少し離れたところへ移動してください」

蓮が言葉にすると桜が誘導し、訓練場の反対側の端へと移動した。
ユグドラシルは大丈夫だろうが、ドラコがやりすぎないかが凄く心配だ。


蓮は向こうも心配だが、心ここにあらずでは失礼だと思い信頼して目の前に集中し言葉にした。

「世界大会のルールを教えてもらえませんか?」

蓮がノームを見て聞くと、ノームは簡潔に答えた。

・1対1。
・魔素を使用するスキルのみ使用可能。
・武技や剣技など闘気を使用するスキルの使用禁止。
・武器や徒手での攻撃は禁止。
・戦闘不能。または、降参の宣言で決着。
・死に至らしめることは禁止。

というものらしい。
逆に戦士部門は魔素を使用するスキルが禁止で、闘気を使用するスキルのみ使用可能。
当然、武器や徒手での攻撃は解禁となる。

「とりあえず、戦ってみましょうか」

まずは実力を見る。
そして自身の無力さを知る。
そこから、それぞれの長所を伸ばしていきたいと説明。

「どなたからやりますか?」

蓮は全員に尋ねるような言葉だが、視線の先にはゲイルがいた。
蓮の挑発に盛大に乗ったゲイルは『上等だ!平民が!思い知らせてやる!』と息巻き1歩前に出た。

「開戦の合図は、このゴングと呼ばれる小さな鐘です」

そういうフェリクスの手には完全にプロレスで使用するゴングがあった。

「こ、これ絶対に異界人が発祥でしょ」

蓮がそう言うとフェリクスが目を見開いた。
そして『やはりそちらの世界ではこれが主流だったのですね』と異界の文化を垣間見たかのような言葉を口にした。
聞けば時の大魔法師が開戦の合図といえばこれだと開発し、使用したのがきっかけだそうだ。

思わぬところで元居た世界のアイテムに出くわし少し緊張がほぐれた。

「ではお二人とも開始線へご移動願います」

フェリクスに言われ、白線がある場所へと移動。
距離はかなり遠く、10メートルほどありそうだ。
近距離に持ち込みたい者にはなかなか厳しい間合いだ。

ゲイルを見ると闘争心をむき出しにした表情で小さな杖を構えている。
性能がどの程度かはわからないが、ユグドラシルが向日葵用に作った世界樹の杖と同程度の大きさだ。
実戦だと物理的な攻撃には全く使えなさそうだ。

開始線に移動した両者の表情を確認し、フェリクスが『始めっ!』と発声し、叩かれたゴングの音で戦闘開始。


「この風氷帝ゲイル・ルードヴィヒ・フォン・グラ……っ!?んっ!?んっ!?」

「挨拶は始まる前にしようね」

ゴングの後に急に名乗りを上げようとしたゲイル。
おそらく『この風氷帝様が倒してやるぜ』的なことを言おうとしたのだろう。
蓮は長い名前を言い切る前に上唇と下唇に引力を発生させて、ゲイルの口を強制的に閉ざした。

言葉を発している最中に急に内を塞がれたため、息が足りない。
もがきながら必死に鼻呼吸をするのを見て蓮は、闇魔法を解いた。

「た、たまたま上手くいったくらいで調子に乗るなよっ!」

何の魔法を使用されたかもわからない。
自身がどれほど手加減されているかもわからない。
これが訓練や魔法部門のルールに則った戦いではなく、実践であればすでに何十回も倒せている。
よくこの状況で『たまたま』と口にできたものだ。

蓮がそんなことを考えていると、ゲイルは立ち上がり呼吸を整え魔素を練り始めた。
風氷帝と名乗るのだから風魔法か氷魔法のどちらかだろう。
魔法師の使う攻撃魔法をちゃんと見るのは初めてだ。
蓮がどんな魔法を使うのかと心待ちにしていると、ゲイルは蓮に向かって手をかざし言葉にした。

風の刃ウィンドカッターっ!」

聞いているこっちが恥ずかしい。
発動までの溜めが長く、実践では使い物にならなさそうだ。
そしてなにより、威力が弱い。
蓮は技名を言葉にする略式詠唱は威力が下がるというシュバルツの言葉を思い出した。
この魔法を生身で受けても致命傷にはならないだろう。
しかし、圧倒するために、ユグドラシルが世界樹の衣を新調し作り出した精霊の衣に魔素を流し、魔法の抵抗力を高めた。

「馬鹿め!その程度で防げると思っているのか!?」

ほんのりと青みがかった光で包まれる蓮を見て、自身の放なった魔法の直撃と勝利を確信。
ゲイルは嘲笑うかのように言葉にした。
しかし、その予測は半分は当たり。
半分は外れた。

「こんなもんか」

風魔法は直撃。
しかし、蓮へのダメージはない。
精霊の衣にかすかな傷を作ることすらできず、ゲイルの風魔法はそよ風と化し、蓮の髪を揺らめかす程度となり消えた。

「う、うまく避けるじゃないか!しかし、奇跡は立て続けに起きんぞ!」

避ける?
奇跡?
まさかまだ実力差がわからないのか?

蓮の脳内には疑問符がいくつも生まれた。
しかし、観戦していた他の四魔帝テトラゴーノンや騎士団長の様子は違う。

「嘘だろ。今直撃したよな?」

「ああ。信じられんがな」

シュバルツとノームは、直撃したことに気づいてはいるが、信じられない様子だ。

「す、すごい。ゲイル様の魔法が効かないなんて」

「ああ。化け物ばけもんだぜ」

騎士団長の二人は特に驚きながらも、高揚していた。
蓮は自分たちと同じで魔法よりも肉弾戦が得意なタイプ。
つまり自分たちを鍛え抜いた先の姿とも言えるからだ。

この反応は、この者たちだけではない。
訓練開始前に参考にするために遠くから見ていたソフィリアやアクアたちも同様に驚愕していた。

この世界では『魔法の直撃=致命傷』が常識なのだろう。

蓮が周囲の様子をうかがっていると、ゲイルは次なる魔法の準備に入った。
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