異世界へ誤召喚されちゃいました　女神の加護でほのぼのスローライフ送ります

モーリー

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異世界生活:王都レグナム編

異世界強化訓練:男性陣③

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蓮が二対一の戦いを申し出たことで火が付いたシュバルツとノーム。
二人は血と魔素を滾らせながら開始線に立った。

「何でもありの実戦形式でお願いします」

おそらくシュバルツとノームはゲイルよりも強い。
数値がどうかはわからない。
魔法が上手いかどうかも、使える魔法の数が多いかどうかもわからない。
ただ、蓮は鑑定などせずとも二人の実力を肌で感じ取っていた。

実戦形式で二人がかりであれば自身の経験になる。
蓮は挑発するのではなく、真剣な表情で更なる申し出をした。

「へっ！後悔させてやるぜ！」

「久しく忘れておったわ」

シュバルツとノームは更に意気込みを強め、笑みを浮かべなら受けて立った。
二人とも戦うことが好きなのだろう。
戦いの中でこそ生きていけるのだろう。
そして、勝つことでこそ最高の喜びを手に入れるのだろう。
高揚を抑えながらシュバルツは黒光りした籠手を装着し、ノームはゲイルと同じく杖を手にした。

蓮は二人のそんな好戦的な一面に触れ、自身も血が躍るのを感じた。

「お、なんか面白くなってきたわね。よく見ておきなさい」

ドラコがガーネットとココに先ほどとは逆の刮目を指示した。
ガーネットとココは息を飲むように頷き、その言葉が聞こえたソフィリアとアクアも観戦に集中した。

桜もどんな魔法が見られるか楽しみになり観戦。
その横で、向日葵はなぜか自身が戦いに参加するかのような険しい表情と構えを取っていた。

それを見てリルは『お、おぬしは参加せんじゃろう』と言葉にした。

「はじめ！」

フェリクスがゴングを鳴らし、音が訓練場を包む。
直後、シュバルツは全身に魔素を纏い、青白い光の軌跡を描きながらジグザグに高速移動。
そのシュバルツにノームが支援魔法をかけ、更に速度を増し、一瞬で蓮へと間合いを詰めた。

「得体が知れないんでな！速攻で蹴りをつけさせてもらぜ！」

シュバルツの猛攻。
息をつく間もなく繰り出される拳を回避しながら、蓮は観察した。

やはりシュバルツは分析力と判断力が高い。
蓮の魔法が何かは分かっていないが、狙いを定めさせないための移動方法を選択している。
そして、実力を出させる前に決着をつける重要性を知っており、実行に移している。

連携の取り方や役割分担も上手い。
蓮相手に詠唱をしている時間はない。
そのため、一方が蓮を物理攻撃し、他方がその隙に魔法を使用する。
シュバルツに支援魔法をかけた後、ノームは更なる魔法のために魔素を練り始めている。

「大地の棘槍アースニードル！」

ノームの言葉と同時に訓練場の床から大地の棘が伸び、蓮を襲う。
ミスリルゴーレムが使用した魔法よりは数も少なく、溜めも長い。
蓮は跳躍し、体を捻りながら躱し、後方へ着地。
シュバルツが巻き込まれていないかを心配し、視線を向けると、すでにシュバルツは魔素を練り終え、魔法を発動しようとしていた。

「雷の大槍サンダーランスっ！」

シュバルツは雷魔法で大きな槍を生み出し、蓮の頭上へと落とした。

「本命はそっちか！」

すぐさま横へと跳躍し回避。
蓮の居た場所には雷の槍が刺さり、訓練場の床には焦げた丸い穴が開いた。

「くそっ！雷を避けるんじゃねぇよ！」

蓮はライトニングタイガーが使用した雷魔法を思い出したが、シュバルツの雷の槍による魔法攻撃は、ライトニングタイガーのものよりも、無駄な破壊がいない。
魔力制御の高さが窺える。

そして攻撃でも連携の上手さが際立つ。
ノームが地魔法の棘で下に注意を向け、シュバルツが上から雷の槍を落とす。
行動の一つ一つに意味がある。

蓮が観察しているとノームが更なる追撃で、蓮の足元を泥濘ぬかるみ変えて足を止めようとした。

また同じか。
蓮の脳裏に先ほどの上下コンボと同じかという落胆がよぎった。

「闇の剣シャドウエッジ」

しかし、シュバルツはその蓮の予測をさらに予測し、あえて下から闇魔法で複数の剣を生み出し、蓮に切りかかった。

「僕からもいくよ！」

蓮は二人が予測を裏切ることに歓喜し、二人の勢いに感化され、そして自身も高揚し攻めに出た。

泥濘に居た蓮がノームの視界から消えた。
蓮の居たところシュバルツの闇の剣シャドウエッジが空を切る。
その光景を目で追っている最中さなか、ノームの左側面に蓮は突然現れた。

「遅い！」

ノームの左わき腹へ、蓮は右こぶしを突き出し、直撃を確信した。

「暗黒の鉄壁ダークメイルっ！」

すかさずシュバルツが略式詠唱。
ノームのわき腹と蓮の拳の間に黒い板を作り出した。

ゴォギャァァン。

その黒い盾は、巨大で質量の多い金属同士がぶつかり合うかのような音を立て、蓮の拳からノームを守り切った。

「やるねっ！」

ノームに拳を突き出したときは殺さないように力加減をしていた。
しかし、黒い板が出現すると同時に力を少し強めたのだ。
全力の一撃ではなかった。
しかし、砕けると思っていた。

蓮は自身の攻撃が魔法で防がれるという経験で、更に高揚した。

「じぃさん！ぶちかませ！」

シュバルツは、そのまま暗黒の鉄壁ダークメイルを広げ、蓮を黒い球体の中に閉じ込めた。
蓮は球体の中からノームの魔素の高まりを感じ、すぐさま脱出のために球体を破壊しにかかる。

「う、嘘だろ！？急げ！長くは持たねぇ！」

先ほど以上の轟音が連続で鳴り響く。
蓮が中から拳を繰り出しているのだろう。
暗黒の鉄壁ダークメイルにひびが入り始め、シュバルツが焦りノームに叫ぶ。

「すべてを無に帰す紅蓮の業火よ！我が命令に従い焼き尽くせ！」

蓮は黒い球体に入ったひび割れから聞こえた正式詠唱が恥ずかしくて力が抜けた。
その一瞬の隙が攻撃のチャンスをつなぐ。

「炎岩王の拳槌イフリート・ハンマーっ！」

ノームが生み出した巨大な溶岩の化身が繰り出す堅牢強固な拳は、シュバルツの暗黒の鉄壁ダークメイルごと蓮を叩き潰すように降り注がれた。

「いけぇ！」

シュバルツとノームはこれが最後のチャンスであること理解しているかのように同時に叫んぶ。
その叫びに後押しされるかのように勢いを増し、灼熱の業火の拳が暗黒の鉄壁ダークメイルに触れた瞬間。

周辺には衝撃波と熱波が広がったため、ユグドラシルが結界魔法を発動。
戦っている3人以外を守った。

「やったか！？」

シュバルツが倒したのではないかと、明るい声を上げるが、すぐに表情が曇った。
視界が良好になるにつれ、見えてきたものは、上半身が抉られたように欠けている溶岩の化身。
ノームも同様に敗北を悟った。

「さすがですね。危うく酸欠になるところでした」

蓮の言葉と同時に、ノームが作り出した溶岩の化身は崩れ落ちた。
何が起きたかはわからないが、蓮が溶岩の化身を破壊したことだけはわかった。

「こ、降参だ」

「あ、ああ。もう打つ手がねぇ」

その様子を見て、人外の化け物を見るかのように表情を引きつられながら、ノームとシュバルツは降参した。

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