異世界へ誤召喚されちゃいました 女神の加護でほのぼのスローライフ送ります

モーリー

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世界大会編

久方ぶりのグリーデン②

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翌朝。
蓮は一人で武器防具工房テルムへやってきた。
桜たちは買い物。
2度目の鐘が鳴る頃に小熊のしっぽへ集合することになっている。

「お久しぶりです!!!ザディオさーん!レン様ですよぉ!」

蓮が中に入るや否や、テリーが叫ぶように挨拶をし、ザディオを呼んだ。
神剣・竜狼蓮華を打って以降、崇められているため、少し接しにくい。

「お、英雄様じゃねぇか」

「からかわないでくださいよ。実は……」

笑みを浮かべ言うザディオに、笑顔で蓮は答え、すぐに本題へ入った。

蓮は世界大会に向けて、騎士団長と四魔帝テトラゴーノンを訓練することになったこと。
武器や防具などはレグナムの鍛冶屋で新調するが、フェリクスの剣は蓮が用意したいことを説明した。

「今度一緒に打ってもらえませんか?もちろん代金はお支払いします」

以前ザディオはガバルと共に、フェンたちの武器を作った。
その時に現行の武器を使用するところを見てから、武器を新調した。

そのため蓮は、近日フェリクス本人をグリーデンに連れてくることを説明したうえで、ザディオに依頼をした。

「ああ。構わねぇぜ。7の月の2週目以降なら大丈夫だ」

それまでは今の依頼品の製作に追われているらしく対応はできないそうだ。
ザディオは、蓮とまた剣が打てることや、希少素材をこの短期間で数多く打てることを喜びながら引き受けた。

「丁度良いです」

今が6の月の末。
グリーデンや拠点で過ごす日数。
そしてレグナムへフェリクスたちを迎えに行く日数などを考えると好都合。

蓮は依頼し、工房を後にした。

次にやってきたのは職人ギルド。

「ノアくん。おはよう。ガバルさんは居るかな?」

「あん?待ってろ」

受付に居たノアに話しかけると、ノアはとても機嫌が悪そうに返事をし、奥に歩いて行った。
その背中からは怒りしか感じられないほどだ。
何かあったのかと気にしていると、ノアが戻ってきて『ん!奥に来いってよ!』と言いながら後ろを指さした。

蓮は何がなんだかわからず、言われたままにガバルの居る所へ向かった。

「なんだか機嫌が悪いみたいですね」

「気付かねぇのも無理ねぇが、あいつぁ女だぞ。年もお前さんより少し上だ」

蓮は驚きの声を上げた。
小柄な体つきに似合わず、気が強そうな目つき。
オーバーオールに皮手袋でガサツな言動。
褐色の良い肌に幼い顔立ちのため、運動部の小学生という印象だった。

「あ、あとで謝っておきます」

グランをはじめ、この世界に来て、年齢よりも年上に見る者にしか出会ったことがなかった。
まさか逆のパターンを経験することになるなど夢にも思わなかった。

「ああ。今度菓子でも持ってきてやれ。それで機嫌治すさ」

甘いものに目がないらしく、ガバルも怒らせてしまったときは甘い菓子を買って渡すそうだ。
そしてガバルは言葉を続けた。

「儂からも一つあるんだがな……お前さん神剣を何故黙っとった!?」

体面に座っていたガバルが見切れるほどに顔を近づけ声を荒げた。

「え、ええ?言ってませんでしたっけ?」

「聞いておらんわ!」

思い返せば、竜狼蓮華を打ち、フィーネたちを迎え、そのまま拠点へと移動した。
その後もポーション事業が忙しかったり、レグナムに行ったりとガバルに見せていないことに気が付いた。

蓮がレグナムに向かってからガバルから聞き、一日でも早く見たいと思っていたそうだ。
その後、竜狼蓮華をテーブルに出し、ガバルの気が済むまで見せてから、グラン同様に情報の共有。
ガバルも思い当たる節があるようで、商人ギルドと領主との繋がりを示唆した時には表情が変わった。

レグナム三大貴族のうちの一つであるため、明言はできないのだろう。

共有を終えて部屋を後にし、受付の横を通るとノアが居たため謝罪をしようと近寄ると、ノアが目を潤ませながら『ボ、ボクの方がお姉さんなんだからな!』と怒られた。

「すみません。お詫びにこの美味しい特性の果物をどうぞ」

「え!?いいの!?わーい!」

ノアは表情も明るくなり、目を輝かせながら果物を手に取り、あむあむ言いながら食べ、機嫌を直した。
さすがはユグドラシル特製の世界樹の実。
効果は抜群だ。

「流石はレンの果物はうめぇな!力も漲ってくるぜぇ!」

「そ、それは良かったです。で、では僕はこれで」

蓮は世界樹の実であることがバレる前に職人ギルドを後にした。



小熊のしっぽで食事を済ませ、グリーデンの北門を出て、拠点へと向かう。

食休みも兼ねて桜もバスケットに入る。
向日葵はユグドラシルに抱かれたまま眠ってしまった。
ユグドラシルのこの上なく幸せそうな表情を浮かべている。

「ベアードさん嬉しそうだったね」

桜が小熊のしっぽでのベアードの様子を思い返し、蓮に話しかけた。

蓮たちの偉業祝いと祝典での言葉を知り、ベアードがご馳走してくれたのだ。
リルもドラコもかなりの量を食べいたため流石に気が引けたが、気前よく向日葵にデザートも出し、代金は受け取ってもらえなかった。

「そうだね。少しずつ良い環境になるといいね」

桜は蓮の言葉が色々な人の心に届いていることを喜びながら、ベアードの反応を口にした。
しかし、蓮はそれ以上に、それだけ獣人差別が酷かったことを表していると思い、少し複雑な思いになった。

それにしても……。
真面目な話の横でリルは鼻息を荒くしている。

グリーデンを出て山脈を超えたあたりからリルは全力で広げていた空間把握に獲物がかかったからだ。

「我は向こうをやる!そっちは任せたぞ!」

そう言い残し遥か彼方へと消えていった。

「そっちでどっちだよ」

リルと蓮では探知スキルのレベルが違う。
まだ蓮には何も見つかっていない。

「あちらの方角に行くと何体かいますね」

ユグドラシルが示す方向に向かうとホーンブルやグラスラビット、ジューシーポークなどリルやドラコが好きそうな魔物が居た。

「久しぶりにやりますかぁ」

蓮がそう言いながら地上に降りようとすると、桜は空中で水魔法を発動。
素早く全ての魔物の額を的確に打ち抜いた。

「蓮兄ぃ。収納しておいてぇ。後で血抜きするからぁ」

向日葵を起こさないように小声で叫ぶように上空から蓮へと依頼する。
魔法の発動速度も、威力も正確さもどんどん増していく。
恐ろしいほどの成長速度だ。

「向こうも終わったようです」

蓮が魔物の死体を収納しているとユグドラシルがリルの狩りの終了を知らせた。

急いで向かうと死屍累々。
過去に見たことのある魔物の死体の山が出来上がっていた。

夕食がよほど楽しみなのだろう。

「これは夜ご飯はバーベキューに決まりだね」

蓮がそう言うと桜はクスりと笑い、リルは尾をぶんぶん振り、ドラコはよだれを垂らした。

「そうね。今のうちに処理しちゃおうかな」

向日葵が寝ている間に解体作業を済ませることにした。

まずは地魔法で大きな穴を掘る。

次に空中に大きな水球を作り出す。
そこへ蓮が1匹ずつホーンブルなど仕留めた魔物を投げ込んでいく。

桜は水球内で水を巧みに操り、ウォーターカッターのように腹を捌き、内臓を取り出す。
さらに素早く毛皮を剥ぎ取り、角を根元から切り落とし、肉をある程度の大きさに切り分け、水球の外へと飛ばした。

「ふんふふん♪」

桜は鼻歌を奏でながら、水球の外へ飛ばした素材と肉に浄化クリーンをかけ、綺麗にしてそのまま収納。
内臓と血で赤く染まった水球は、事前に作っておいた大穴へと捨てる。

時間にして1匹あたり10秒から15秒程度。
流石は魔法神マーリンのお墨付き。
あっという間に完了し、拠点に向けて再出発した。
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