【完結】この度召喚されて精霊王になりました。

ユリーカ

文字の大きさ
70 / 72

外伝:ルキナの絶叫①

しおりを挟む



 とある日の昼下がり。それは朔弥がキッチンに初めて大精霊三人を招いた日。

 ルキナはご機嫌斜めだった。もうムカムカのプンプンである。理由は正面に座る大精霊二人だ。無遠慮に酒をぐびぐびと飲んでいる。

 もう!ルキナのおやつの時間なのになんで朔弥は他の大精霊のゴハンばっかり作ってるの?!

 ルキナはキーッとイライラしながら無表情でお行儀よくキッチンのテーブルに腰掛けていた。


 朔弥が召喚された日。それは王の側女ソバメを選ぶ日だ。ルキナは生まれてまだ十年。声がかかるわけもない。それでも呼ばれたのは光の大精霊だからだろう。
 おめかしが許される日。絵本に出てくるお姫様が着ているようなドレスが着たいと意思表示するも伝わらず、どう間違ったのかぶかぶかの大人の服に着せ替えられた。歩きづらいしとにかく重い。ルキナを誰も助けない。気にも留めない。やっとこさで部屋の末席に腰を下ろした。そしてルキナは召喚された王を初めて見た。

 真っ黒な髪に瞳。随分と若く見える。しゅっとした体によく通る声。カッコいいと目を奪われた。ふとよく読む絵本を思い出した。

 素敵‥まるで王子様みたい。
 ルキナをちょっとでも見てくれないかな?

 でも無理だ。こんなチグハグな服を着て部屋の隅っこで。こんなに小さい体。声も出ないし表情も変えられない。光の大精霊なのに口惜しいほどに何もできない。悔しくてぐすりと涙が鉄仮面に滲みかける。

 そう思っていたらなぜかその王子様と目があった。驚いたルキナが息が止まりそうなほどに固まってしまった、無表情で。ルキナの前に道が開ける。導かれるままに王子様の前に立ちじっとその顔を見上げた。

 あ、やっぱりカッコいいなぁ‥‥

「構わない。この子がいい」

 王子様が自分を妃(仮)に選んでくれた。どよめきの中、嬉しさできゅんとなる胸を押さえるも部屋の空気は生ぬるい。成長しきっていない大精霊。しかも前代は大失態を犯した。すぐに飽きられて捨てられるだろう。これは嘲りの空気だ。

 だがこの王子はルキナに優しかった。むしろ厄介ごとに巻き込んだと謝られ色々と気遣って声をかけられる。

 迷惑じゃないよ?むしろ私が王子様に迷惑をかけちゃう‥ごめんなさい

 それでもうまく喋れない自分と向き合って名前を聞き出してくれた。

「ルキナか。いい名前だね。よろしくな」

 こんな自分に向き合ってくれた。名前も褒めてくれた。やっぱり優しい王子様だった。とっても嬉しい。
 ルキナは満面の笑みの気分で無表情に頷いた。

 ルキナの大好きなレースの綺麗なワンピースにも着替えさせてくれた。絵本に出てくるドレスのように可愛らしい。

 なんでルキナの好きなものがわかったんだろう?
 王子様だから?服ありがとう!

 感謝の気持ちを込めて王子様に頷いてみせた。

 
 そこからの美味しいゴハン。
 この体では食べたことはなかったが前代の記憶がありなんとかナポリタンを食べることができた。不慣れなルキナに朔弥も手取り足取りで手伝ってくれる。この気遣いが嬉しい。この体でこんなに親切にされたのは初めてのことだ。

「ルキナえらいぞ。残さず食べたな」

 えらいの?とってもおいしかったよ?

「たくさん食べたら大きくなれるからな」

 大きくなれるの?朔弥みたいに?
 ならたくさん食べる。早く大きくなりたい。
 朔弥に並んでも釣り合うくらいに。

 朔弥が出す料理はどれも美味しい。しかも大きくなれる。ルキナは頑張ってなんでも食べた。

 もうその頃にはルキナは朔弥にメロメロになっていた。



 そしてその日も幸先の良いスタートだった。

 朝から朔弥にお世話されてワンピースを纏う。朔弥に作ってもらったヒラヒラかわいいワンピースにルキナも大満足だったが朔弥は不満があるようだ。しきりに謝られた。ルキナ的には朔弥に出会う前と違いかわいいワンピースが着られて十分満足だった。

 そして朝食。大好きなフレンチトーストだ。ふわふわのしっとりフレンチトーストにメープルシロップにシナモンシュガーをたっぷりかけていただく一品にルキナは心中恍惚であったが顔は無表情だ。

 ルキナは成長が追いついていないため顔の表情筋や感情を表現する術が拙い。中の人はこーんなに喜んで感動しているのに。せめてと朔弥にハグしたりぴょんぴょん跳ねて頑張って感情表現している。だがそれでもルキナの気持ちは一割も伝わっていないだろう。

 大好き!大好き!なんで気が付かないの?
 こんなに大好きなのに!どうしたら伝わるの?
 ねぇこっち見て!ルキナだけを見て!

 大好き!のぎゅーをしても朔弥は頭を撫でて穏やかに微笑むだけ。まるでよく懐いている愛玩動物ペットに対する態度だ。たまに困ったような顔をすることもあるがそれは迷惑ということだろうか?迷惑なら自分をオトモダチに選ぶはずがない。さっさと手放すだろう。

 そうだ!ルキナを好きだから困ってるんだ。きっとそう。これは照れてるんだ。

 ルキナはポジティブシンキングでふんと鼻息を荒くする。
 
 ルキナは朔弥のお嫁さん!じゃないけどそこに一番近いところにいるんだから!

 朔弥に側女はいない。側女の前にとオトモダチなるものを選定し晴れて自分が選ばれたのだ。自分が一番朔弥の妃に近いのだ。
 おかげで他の精霊から陰口を叩かれることも無くなった。王妃に一番近いルキナの階級は一気に上の上に跳ね上がっていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

無能扱いされ会社を辞めさせられ、モフモフがさみしさで命の危機に陥るが懸命なナデナデ配信によりバズる~色々あって心と音速の壁を突破するまで~

ぐうのすけ
ファンタジー
大岩翔(オオイワ カケル・20才)は部長の悪知恵により会社を辞めて家に帰った。 玄関を開けるとモフモフ用座布団の上にペットが座って待っているのだが様子がおかしい。 「きゅう、痩せたか?それに元気もない」 ペットをさみしくさせていたと反省したカケルはペットを頭に乗せて大穴(ダンジョン)へと走った。 だが、大穴に向かう途中で小麦粉の大袋を担いだJKとぶつかりそうになる。 「パンを咥えて遅刻遅刻~ではなく原材料を担ぐJKだと!」 この奇妙な出会いによりカケルはヒロイン達と心を通わせ、心に抱えた闇を超え、心と音速の壁を突破する。

スキル【収納】が実は無限チートだった件 ~追放されたけど、俺だけのダンジョンで伝説のアイテムを作りまくります~

みぃた
ファンタジー
地味なスキル**【収納】**しか持たないと馬鹿にされ、勇者パーティーを追放された主人公。しかし、その【収納】スキルは、ただのアイテム保管庫ではなかった! 無限にアイテムを保管できるだけでなく、内部の時間操作、さらには指定した素材から自動でアイテムを生成する機能まで備わった、規格外の無限チートスキルだったのだ。 追放された主人公は、このチートスキルを駆使し、収納空間の中に自分だけの理想のダンジョンを創造。そこで伝説級のアイテムを量産し、いずれ世界を驚かせる存在となる。そして、かつて自分を蔑み、追放した者たちへの爽快なざまぁが始まる。

異世界帰りの俺、現代日本にダンジョンが出現したので異世界経験を売ったり配信してみます

内田ヨシキ
ファンタジー
「あの魔物の倒し方なら、30万円で売るよ!」  ――これは、現代日本にダンジョンが出現して間もない頃の物語。  カクヨムにて先行連載中です! (https://kakuyomu.jp/works/16818023211703153243)  異世界で名を馳せた英雄「一条 拓斗(いちじょう たくと)」は、現代日本に帰還したはいいが、異世界で鍛えた魔力も身体能力も失われていた。  残ったのは魔物退治の経験や、魔法に関する知識、異世界言語能力など現代日本で役に立たないものばかり。  一般人として生活するようになった拓斗だったが、持てる能力を一切活かせない日々は苦痛だった。  そんな折、現代日本に迷宮と魔物が出現。それらは拓斗が異世界で散々見てきたものだった。  そして3年後、ついに迷宮で活動する国家資格を手にした拓斗は、安定も平穏も捨てて、自分のすべてを活かせるはずの迷宮へ赴く。  異世界人「フィリア」との出会いをきっかけに、拓斗は自分の異世界経験が、他の初心者同然の冒険者にとって非常に有益なものであると気づく。  やがて拓斗はフィリアと共に、魔物の倒し方や、迷宮探索のコツ、魔法の使い方などを、時に直接売り、時に動画配信してお金に変えていく。  さらには迷宮探索に有用なアイテムや、冒険者の能力を可視化する「ステータスカード」を発明する。  そんな彼らの活動は、ダンジョン黎明期の日本において重要なものとなっていき、公的機関に発展していく――。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

趣味で人助けをしていたギルマス、気付いたら愛の重い最強メンバーに囲まれていた

歩く魚
ファンタジー
働きたくない元社畜、異世界で見つけた最適解は――「助成金で生きる」ことだった。 剣と魔法の世界に転生したシンは、冒険者として下積みを積み、ついに夢を叶える。 それは、国家公認の助成金付き制度――ギルド経営によって、働かずに暮らすこと。 そして、その傍で自らの歪んだ性癖を満たすため、誰に頼まれたわけでもない人助けを続けていたがーー 「ご命令と解釈しました、シン様」 「……あなたの命、私に預けてくれるんでしょ?」 次第にギルドには、主人公に執着するメンバーたちが集まり始め、気がつけばギルドは、愛の重い最強集団になっていた。

レベルアップは異世界がおすすめ!

まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。 そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

処理中です...