34 / 43
第三章 ウサギとオオカミの即位編
第三十三話 ※※ 「これも悪くない」①
しおりを挟むぐったりと力なく首に縋りつく私を横抱きに、アウル様が城の廊下を無言でずんずん進む。私の寝室に近づけば侍女達が心得た様に下がっていく。これから起こることを悟られていると思うと気恥ずかしくて勝手に顔が赤くなった。その様子にアウル様が笑みを溢す。
「ん?まだ慣れないのか?」
「慣れません、こんなの‥‥」
「問題ないだろ?夫婦なんだから」
アウル様が私の部屋の寝室を通り抜けて躊躇いなく浴室に向かう。私の部屋の浴室はものすごく立派で普通の部屋サイズの上に浴槽は一日中温泉が引き込まれている。思い立ったらすぐお風呂に入れる贅沢仕様だ。
その浴室に向かうアウル様の意図に気がついて制止の声を上げた。
「え?お風呂入るんですか?!」
「要らないか?いい匂いがなくなるのは勿体無いしな。お前が気にするかと思ったがこのままでいいならベッドに‥‥」
私の首筋に顔を埋めてくんくん匂いを嗅ぎながらベッドに早足に向かおうとするアウル様を慌てて制する。
「じゃなくて!やだ!もう匂い嗅がないで!入りますよ?私一人で!」
「なんだ入るのか。時間が惜しい。風呂なら二人で問題ないだろ?夫婦なんだから」
「夫婦って‥‥そのセリフで全部片付けるつもりですか?!雑すぎます!!」
「風呂なんて今更どうってことない」
「それはアウル様がでしょ!ダメッ!ホントダメですッ!!」
そう!お風呂は私の最後の牙城だ。まだアウル様の侵入を許していない。今更感はあるけど明るいところでアウル様にまだ私は裸を見せてない。さっきの着替えもギリギリ下着姿だ。それにお風呂はえっちな感じがする。だから死守してたのに。
だがこの男は今そこに侵入しようとしている。そして私は本日の崖を飛び降りるという鬼畜絶叫コースの後でぐったりしていて全然抵抗ができないのだ。
これは絶対に悪意がある!計画的犯行だ!
「だッ!ダメですって!お風呂だけは~!」
「そーらいい子だ。俺が泡泡でキレイに洗ってやるからな。よーしよし」
「ホントダメですッ明るいところで裸を見られるとか恥ずかしすぎる!!」
「そんなに喜んで嬉しいか?今脱がせてやるから。ホント俺のウサギは可愛いなぁ」
ぎゃぁぁッダメだって!毎度のことだけど全然話を聞いてくれないし!
力の入らない体で何とか暴れる私に構わずアウル様は洗い場に入った。そして魔法の様に私は服を剥ぎ取られ、そのまま鼻歌混じりに肘に乗せられ片腕で抱えられる。アウル様は移動しながら服を脱ぐという器用芸だ。そして二人でざぶんと浴槽の湯に浸かった。
浸かってしまった。あっさりと。
お風呂とは思えない広さの浴室に私の悲痛の声が響いた。無駄だけど何とか両手で裸の体を隠そうとする。
「ああぁッ!私の砦が!最後の牙城が!!」
「よくわからんが俺は嬉しいな。ウサギと一緒で癒される」
二人並んでもゆったりな大きい浴槽なのにアウル様の膝の間に置かれて背後から抱きしめられた。ツインテールのリボンが解かれ湯に髪が落ちたところをアウル様の手で髪が耳にかけられる。優しく扱われて私の心はあっさりと喜びでうっとりとなった。
うぅ、私ってば毎度なんてチョロい‥‥
「しかしなんで風呂をそこまで嫌がった?ウサギは水が嫌いか?」
「違います!お風呂は好きです!でもアウル様と一緒はちょっと‥‥」
「ちょっと?」
真っ赤になってもじもじ言いよどめばアウル様が無遠慮にツっこんでくる。
そこは察して欲しかったのだが。恥ずかしいでしょ!はっきり言わせたいのか?どうせなら牽制のためにも言っておこうかな。
「だって‥浴室は声が響くし」
「うん?」
「広くてなんか色んなことできそうだし。明るいし。色々見えちゃって恥ずかしいし」
「‥‥‥‥‥」
「石鹸ぬるぬるだし。汚れてもすぐ洗えちゃうし。リラックスしてるから開放的だし」
「‥‥‥‥‥」
「百戦錬磨のアウル様のことだからどうせ色んなエロエロなことしたがるでしょ?絶対ダメですからね!!」
牽制成功!とばかりに鼻息荒いドヤ顔の私にアウル様の感心したような声が響く。
「‥‥そうか、風呂場はそんなにイイのか。知らなかった」
「はい?」
ぼそりとつぶやいたアウル様の言葉に耳を疑い、そしてギョッとする。
「え?今なんと?」
「風呂場の良さを初めて知った。言われてみれば確かにそうだな。良いことづくめだ。流石は俺のウサギだ。発想が柔軟だ」
「え?うそ?冗談‥ですよね?」
ぎゃぁぁ?!なんか私、余計なこと言った?!
アウル様のスイッチが入り粘るような色気がダダ漏れに溢れ出した。濃厚な色香にこっちが鼻血吹きそうだ。
「他は試したが風呂場はまだだったな、そういえば。こんなに素晴らしく誘われては乗るしかないじゃないか。んじゃ早速堪能するか」
「い!いやいやいや!違います!誘ってません!ここは滑りやすいですし危ないです!のぼせたり湯冷めの心配もあるんで!安全性と健康上の観点からやはり浴室は危険です!やめましょう!」
「ここでお約束の寸止め焦らしか?逆効果だ。誘ったのはお前だろ?危ないからお前はじっとしていればいい。俺が動く。長く浸からなければのぼせないだろうしな」
そう言うアウル様の手がウキウキと私の体を這い出した。脇の下から回された両手が私の乳房をゆっくりと揉みしだく。頂を同時にくすぐるように転がしてみせた。
私が悶え動けば湯がザバリと鳴って浴槽から溢れる。それでも私は必死で声を殺した。
浴室でなんて!意地でも叫ぶもんか!!
「———— ッ!!」
「気持ちイイだろ?声我慢するなよ?」
「———ダメッ‥‥響くッ」
「ふーん?いいのか?逆に燃えるぞ?絶対哭かせてやるってな」
ぎゃぁぁ?!そこでなぜに負けん気が出てきます?!
尖る乳首を擦りながらアウル様は私の耳にしゃぶりついた。舌を耳孔にねじ込んで舐め上げる。同時に弱いところを攻められて狂おしい快楽に暴れる私の動きで湯がさらにバシャバシャと乱れた。
「ハァ‥‥ッダ‥メ‥ッ!」
「どこまで耐えられるかな?」
アウル様が悶える私の体を膝上に持ち上げて石鹸を塗りつける。ひんやりとした石鹸でコリコリと胸の尖りを転がされれば気持ちよくってさらに硬くなってしまう。アウル様の手がぬるぬると胸や首筋を滑った。
「————ッ!!」
「お、ぬるぬるすっごいイイな」
私を湯から出して浴槽の縁に座らせアウル様が口づけてきた。深いキスに私の甘い声が飲み込まれる。同時に私の全身を石鹸を泡立てた手で愛撫してきた。
泡まみれの私にアウル様が硬い体を擦り付けてくる。抱き合いぬるりと滑りながら胸の頂が擦られてそれがとても気持ちがいい。
「ふぁァ‥‥‥ッ」
「さて、あとはどこを洗おうか?」
意地悪い囁きと共に私の体中を泡まみれにしてアウル様の手がぬるぬると撫で回す。その愛撫に悶えていれば手を取られアウル様の体に導かれた。
私もアウル様の胸板や頂に手を這わせればアウル様が嬉しそうに目を細める。
「気持ちいいですか?」
「ああ、でもくすぐったいな」
硬い胸板から見事に割れた腹筋をたどり手をそそり立つアウル様自身に這わせれば、アウル様から苦悶の声が聞こえた。
薄暗い閨では毎夜触れていたが、明るいところで見るのは初めてだ。初めてみるアウル様は少し浅黒くて他の筋肉同様に硬そうで大きい。これが私の中に入って気持ちよくしてくれてると思えばドキドキした。
震える両手で包み込んでぬるりと擦り上げれば手の中でさらに硬く大きくなり、生き物のようにびくんびくんと震える。アウル様の荒い息が聞こえた。
アウル様が感じていると思えばゾクゾクと歓喜の震えが駆け抜けた。泡のついた手に少し力をこめてぬるぬると扱いていれば、苦笑と共にアウル様に止められてしまった。
0
あなたにおすすめの小説
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる