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最終話: 最後の恩返し発動!《アリス》②
しおりを挟む「みんな大はしゃぎだね?」
「こういう無礼講は滅多にないからね。街では一週間お祭りだよ」
「みんなにお祝いされて嬉しいな」
リオンがちらりと背後に視線を向ける。誰もいないバルコニー。喧騒がホールから聴これるがここは静かな二人だけの世界だ。
「えっと、ありす、渡したいものがあるんだ。受け取ってくれる?」
「ん?なあに?」
リオンが緊張したようにしっぽをそわそわと振る。そして胸ポケットを探り何やら取り出した。その一つをアリスに渡す。それは銀色の指輪だ。
「猫族には指輪を嵌める習慣はないからね。でもじいちゃんたちは嵌めてたからさ、理由を聞いたんだよ」
「え?」
驚くアリスの左手薬指にリオンがするりと指輪をはめる。それはリオンとツガイになれたという証。胸のドキドキが止まらない。
「人の姿限定になっちゃうけど。持っていてほしい」
「うん‥うん‥ありがとう。大事にするね」
アリスは愛おしげに指輪を撫でる。リオンの気遣いが嬉しい。式は猫族の国で行われた。人族の国でも披露宴は行う予定だったからアリスは全く気にしていなかった。
「ボクのもつけてくれる?」
アリスはお揃いの指輪をリオンの薬指に嵌めた。にっこり微笑んだリオンがアリスの両手をとった。
「あの日ボクのことを見つけてくれてありがとう。あの時ありすに助けてもらえたから今幸せになれたんだ」
「私も凄く幸せだよ。あの日市場で助けてくれてありがとう。恩返しの魔法を使ってくれてありがとう。ずっとずっと一緒にいてね」
リオンとずっと一緒にいたいと願った。
その望みが今形になって叶った。
すごいすごい‥願いが叶った。夢みたい‥
抱き寄せられたアリスがリオンの腕の中で涙ぐんだその時二人の耳に鐘の音が響く。驚く二人に天から降るような声が聞こえた。
———恩返しが成就しました
耳に囁かれる声は天から降ってくる声。今まで何度か聞こえた声、それが天の理の声だと半妖精になったアリスは理解していた。
「え?なんで?このタイミング?」
「え?これは?」
「恩返しが成功したんだよ」
リオンから恩返しの魔法のことは聞かされていた。アリスの探し物を見つけるという。だがこのタイミングで何が見つかったのだろう?
リオンは目を閉じて何やら集中していたがふと苦笑をこぼした。
「ボクは随分難しい恩返しを叶えようとしてたみたいだ。“望みを叶えて探し物を見つける”。ありすの探し物と望みは叶ったかな?」
探し物‥に望み‥?
そこでアリスは初めて自覚する。自分はずっとずっとリオンを探していたのだと。漠然と満たされない日々の中で取っ替え引っ替え猫を拾ってきた。でも見つからず何を探しているのかもわからず持て余した思いは見つけた猫がリオンではなかったから。だがようやくリオンを探し出して一緒にいたいという望みが叶った。
「うん、りおん君が見つかって一緒にいて欲しいと思ったから。私の望み、これからもずっと叶えてくれる?」
アリスの囁きにリオンが目を瞠る。そして眩しげに微笑んだ。
「じゃあありすの望みが叶う様におまじないをかけようね」
リオンがアリスの両手を取った。リオンはしっかりとアリスを見つめ口を開くが声は聞こえない。それは声なき魔法語。耳に響かない不思議な声だ。
———ありすのそばを離れません。一生かけてありすを幸せにします
———受け入れられました
ふわりと温かい魔力がアリスを包み込んだ。
「りおん君?」
「今、魔法をかけたんだよ。ありすのそばを離れません、一生幸せにしますって。望みが叶うまでボクはありすから離れられない魔法。ずっと一緒だっておまじない」
「りおん君‥すごい‥すごく嬉しい」
ステキなおまじない
ずっと一緒にいると約束してくれた
アリスの目から雫が溢れて流れ落ちた。リオンに抱き寄せられればさらに涙が溢れ出した。アリスを抱きしめたリオンから笑みが溢れた。
「あぁそうか。じいちゃんが最強だったわけがわかった気がする」
「え?」
「恩返しの魔法は魔力がとても強くなるんだ。きっとじいちゃんもこの魔法をばあちゃんに使ったんだよ。無敵の猫王が恩返しの魔法で最強になったんだ」
リオンが輝く笑顔を弾けさせた。
「カラバ家から貰ったのはただの長靴だったけど、もうじいちゃんは最強だったんだ。ただの長靴が神器と思えるほどに。最初にばあちゃんという宝物を貰ったから」
アリスがなるほどと納得する。カラバに返しきれない恩。伝説の魔物さえ倒しカラバ家を侯爵に導いた猫神さまのそばには優しいメリアがいたのだろう。
ならば今のアリスも最強だ。リオンに巡り会いこうして二人添えたのだから。
「あの二人は私の理想なの。すごく仲良しでしょ?りおん君、私もああなれる様に頑張るからこれからもよろしくね」
「え?もうボクたち仲良しになれてないかな?」
「もっともっとね!ずっと一緒だよ!」
「フフッそうだね、頑張ろうね」
満面の笑みを浮かべるアリスにリオンは目を細め、誓いを立てるように優しくそっと口づけた。
カラバ男爵家は妖精の猫神さまに愛され守られ末長く栄えた。カラバ家には長靴をはいた猫ともう一つ、新しい言い伝えが加えられた。
女の子に恋に落ちた黒猫と黒猫に恋に落ちた女の子。ツガイになった二人はそれからもずっと仲睦まじく暮らしたという。
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