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始まり
─始まり─
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外は雨が降っていて雷も鳴っていた。雷雨で雨が大学サークルのメンバー計10人が宿泊しているペンションの窓や屋根を叩いていた。
広い部屋の中はテーブルや椅子は全て部屋の隅に寄せてあり部屋の中央にロウソクを100本立て一つのロウソクだけ火が灯っていた。
部屋の中では百物語が行われていた。
「・・・じゃあ最後の話・・・トリは誰が飾る?」
司会者のように仕切っていた佐藤 平次が少しの間を置いて全員に問い掛けた。
10人の男女がロウソクを囲うように円になり座っていた。
「俺はもう・・・話のネタは無いかな・・・。」
平次の問いかけに答えるように自身のピアスを触れながら相良 勇人 が言うと
「俺も。」「私も・・・」と声を発した。
しかしトリが無いと百物語が完成しない。どうしたものか・・・と平次が考えていると今までビクビクと怯えていた 狭山 千華が
「じゃあ・・・私が話す・・・?私の体験じゃないけど」
と目を伏せた様子で手を挙げた。
「勿論!他人から聞いた話でも大丈夫さ。」
平次は安堵の表情を見せ千華は"それじゃあ・・・"と語り始めた。
「これは・・・今日来るはずだった早苗から聞いた話なんだけどね・・・。早苗と私は高校から一緒なのね,それで高校2年の頃かな?早苗のおじいちゃんが亡くなってしまったの。もう歳だったし肺炎を患ってたって聞いたから死因は多分それね。そのお葬式に当たり前に早苗は出たんだけど,おじいちゃんが亡くなるまで使ってた病室のシーツがあって・・・病院で亡くなった場合,そのシーツを使うのは不吉だから・・・かな?捨ててしまうんだけどそのシーツ濡れてもいないのに重かったらしくて早苗のお父さんは仕事で腰を痛めていたから叔父さんが捨てるために袋に入れて持って行ったらしいの。」
全員が千華を向き話してる間も雨は止みそうにもなかった。
「したらね、叔父さんが台所に居た早苗と早苗のお母さんにゴミ袋をもう1枚くれないか。って言い出したんだって。まぁ別に変なことでもないけど早苗は少し怖い予感がして叔父さんに"どうして?"って問い掛けたそうなの。そしたら叔父さんは静かにこれを見てみろって自分の腕をスーツの袖を上げてみせたらしくて・・・」
千華は話してるうちに怖くなったのか目を伏せたまま身震いした。
「・・・腕に・・・何があったの?消えてたとか?」
恐る恐る千華の隣に座っていた秋月 巴が問い掛けた。
「・・・腕にね,手で掴まれたような跡があったんだって・・・。」
皆がゴクッと唾を飲み込んだ。
「・・・捨てる時におじいちゃんの手が叔父さんの腕を掴んだんだって。そして声が聞こえたらしくて・・・《おいで》って。多分・・・連れて行こうとしたのかも。って言ってた。」
話し終わると沈黙が訪れ数秒後,平次が我に返った様にロウソクの火を消した。
「・・・終わった・・・けど何も起こらないわね。」
少し濃いメイクに香水を身に纏った 星野 綾はあたりを見渡しつつ何も起こっていないかを確認した。
「なにも起こらないんじゃね?やっぱ迷信かもな~」
呆れた様子で唇を尖らせながら速見 安彦が安心した様な様子で伸びをした。
「まだ分からないわ。もしかしたらこれから起こるのかも。」
静かに淡々と怖がっている様子もなく 須田 響子
が時間を確かめる為電波の無いスマホを見た。時刻は1時30分。
「・・・朝までまだまだかな・・・外も暗いし」
「馬鹿だな。雨が降ってるから夜明けにしろ暗いだろうよ。冬だし。」
巴が心配そうにポツリと言うとそれに対し真宮 晴太がメガネを掛け直しながら巴を睨みつつ答えた。
「何も起こらないなら・・・何か夜食でも食べるか?気分転換にもなるよ。俺が作るからさ」
場の空気を明るくしようと,朝倉 大希が立ち上がりランタンに火をつけた。
「あ、私作るの手伝おうか?料理好きだし」
自分で話しながらも場の雰囲気に怯えていた千華も立ち上がった。
「んーラーメンで良くね?簡単だから手間もないだろ?」
「平次は本当にラーメンすきだよね~そんなに好き?」
「なんだよ・・・綾は嫌いなわけ?あんなに美味いのに。」
「別に嫌いってわけじゃ・・・」
平次と綾のそんなやり取りを見て周りはほんわかとした気持ちになった。2人は恋人同士かつ幼馴染みであり喧嘩もするがその分仲もいい。
然し,晴太はそんな2人を見て心底面白くない。とでも言うような表情だった。
晴太はメガネに少し太った体で顔もそばかすがありとてもモテるわけではなく【リア充爆発しろ】と心の中で思っていた。
「じゃ、大希達が作ってる間トランプかUNOでもしとくか?あ、花札もあるぜ!」
リュックの中から安彦はリュックの中から遊ぶ為にと持ってきた物を幾つか取り出した。
「あ、私花札強いわよ!」
綾が自慢げな顔で手を挙げた。
「お?俺も強いぜ♪よし、勝負しようぜ!」
「いいわよ。じゃあ勝った方には・・・夜食上げるってのでどう?私はラーメン2つは食べきれないからラーメンに入れる卵だけで良いわよ。」
「よし、乗った!」
と安彦と綾の花札対決が始まり皆はそれを見守った。ただ1人,勇人は眠たくなった。ということで散歩に行く事にした。全員にそれを告げ
「一緒に行こうか?夜は危ないかもだし・・・」と言う巴を制し
「1人で行きたい気分なんだ。巴だって危ないだろ?明日昼間にでも行こうぜ皆で。」
と言ってニカッと笑い1人ペンションを後にした。
巴は少し心配していたが,勇人の親友で綾と花札勝負している安彦に"あいつなら心配無いよ。山は慣れてるしね"と言われ花札観戦をする事にした。
──── 始まり【END】 ────
広い部屋の中はテーブルや椅子は全て部屋の隅に寄せてあり部屋の中央にロウソクを100本立て一つのロウソクだけ火が灯っていた。
部屋の中では百物語が行われていた。
「・・・じゃあ最後の話・・・トリは誰が飾る?」
司会者のように仕切っていた佐藤 平次が少しの間を置いて全員に問い掛けた。
10人の男女がロウソクを囲うように円になり座っていた。
「俺はもう・・・話のネタは無いかな・・・。」
平次の問いかけに答えるように自身のピアスを触れながら相良 勇人 が言うと
「俺も。」「私も・・・」と声を発した。
しかしトリが無いと百物語が完成しない。どうしたものか・・・と平次が考えていると今までビクビクと怯えていた 狭山 千華が
「じゃあ・・・私が話す・・・?私の体験じゃないけど」
と目を伏せた様子で手を挙げた。
「勿論!他人から聞いた話でも大丈夫さ。」
平次は安堵の表情を見せ千華は"それじゃあ・・・"と語り始めた。
「これは・・・今日来るはずだった早苗から聞いた話なんだけどね・・・。早苗と私は高校から一緒なのね,それで高校2年の頃かな?早苗のおじいちゃんが亡くなってしまったの。もう歳だったし肺炎を患ってたって聞いたから死因は多分それね。そのお葬式に当たり前に早苗は出たんだけど,おじいちゃんが亡くなるまで使ってた病室のシーツがあって・・・病院で亡くなった場合,そのシーツを使うのは不吉だから・・・かな?捨ててしまうんだけどそのシーツ濡れてもいないのに重かったらしくて早苗のお父さんは仕事で腰を痛めていたから叔父さんが捨てるために袋に入れて持って行ったらしいの。」
全員が千華を向き話してる間も雨は止みそうにもなかった。
「したらね、叔父さんが台所に居た早苗と早苗のお母さんにゴミ袋をもう1枚くれないか。って言い出したんだって。まぁ別に変なことでもないけど早苗は少し怖い予感がして叔父さんに"どうして?"って問い掛けたそうなの。そしたら叔父さんは静かにこれを見てみろって自分の腕をスーツの袖を上げてみせたらしくて・・・」
千華は話してるうちに怖くなったのか目を伏せたまま身震いした。
「・・・腕に・・・何があったの?消えてたとか?」
恐る恐る千華の隣に座っていた秋月 巴が問い掛けた。
「・・・腕にね,手で掴まれたような跡があったんだって・・・。」
皆がゴクッと唾を飲み込んだ。
「・・・捨てる時におじいちゃんの手が叔父さんの腕を掴んだんだって。そして声が聞こえたらしくて・・・《おいで》って。多分・・・連れて行こうとしたのかも。って言ってた。」
話し終わると沈黙が訪れ数秒後,平次が我に返った様にロウソクの火を消した。
「・・・終わった・・・けど何も起こらないわね。」
少し濃いメイクに香水を身に纏った 星野 綾はあたりを見渡しつつ何も起こっていないかを確認した。
「なにも起こらないんじゃね?やっぱ迷信かもな~」
呆れた様子で唇を尖らせながら速見 安彦が安心した様な様子で伸びをした。
「まだ分からないわ。もしかしたらこれから起こるのかも。」
静かに淡々と怖がっている様子もなく 須田 響子
が時間を確かめる為電波の無いスマホを見た。時刻は1時30分。
「・・・朝までまだまだかな・・・外も暗いし」
「馬鹿だな。雨が降ってるから夜明けにしろ暗いだろうよ。冬だし。」
巴が心配そうにポツリと言うとそれに対し真宮 晴太がメガネを掛け直しながら巴を睨みつつ答えた。
「何も起こらないなら・・・何か夜食でも食べるか?気分転換にもなるよ。俺が作るからさ」
場の空気を明るくしようと,朝倉 大希が立ち上がりランタンに火をつけた。
「あ、私作るの手伝おうか?料理好きだし」
自分で話しながらも場の雰囲気に怯えていた千華も立ち上がった。
「んーラーメンで良くね?簡単だから手間もないだろ?」
「平次は本当にラーメンすきだよね~そんなに好き?」
「なんだよ・・・綾は嫌いなわけ?あんなに美味いのに。」
「別に嫌いってわけじゃ・・・」
平次と綾のそんなやり取りを見て周りはほんわかとした気持ちになった。2人は恋人同士かつ幼馴染みであり喧嘩もするがその分仲もいい。
然し,晴太はそんな2人を見て心底面白くない。とでも言うような表情だった。
晴太はメガネに少し太った体で顔もそばかすがありとてもモテるわけではなく【リア充爆発しろ】と心の中で思っていた。
「じゃ、大希達が作ってる間トランプかUNOでもしとくか?あ、花札もあるぜ!」
リュックの中から安彦はリュックの中から遊ぶ為にと持ってきた物を幾つか取り出した。
「あ、私花札強いわよ!」
綾が自慢げな顔で手を挙げた。
「お?俺も強いぜ♪よし、勝負しようぜ!」
「いいわよ。じゃあ勝った方には・・・夜食上げるってのでどう?私はラーメン2つは食べきれないからラーメンに入れる卵だけで良いわよ。」
「よし、乗った!」
と安彦と綾の花札対決が始まり皆はそれを見守った。ただ1人,勇人は眠たくなった。ということで散歩に行く事にした。全員にそれを告げ
「一緒に行こうか?夜は危ないかもだし・・・」と言う巴を制し
「1人で行きたい気分なんだ。巴だって危ないだろ?明日昼間にでも行こうぜ皆で。」
と言ってニカッと笑い1人ペンションを後にした。
巴は少し心配していたが,勇人の親友で綾と花札勝負している安彦に"あいつなら心配無いよ。山は慣れてるしね"と言われ花札観戦をする事にした。
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