百物語 ~Episode1~

桐谷 天羽

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勃発

消えた

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勇人がペンションを出て1時間が過ぎた。さすがに皆は戻ってこない勇人が気になりだした。

「・・・なんかあったのかな?」

巴は少し抑えたような声で俯きながら震えていた。

「でも・・・山はなれてるんでしょ?なら問題無いんじゃ・・・」

「いくら山になれていたとしても昨日は少しだけ雨も降っていた・・・今日は曇だったからまだ濡れてる部分はあったはずよ。その上今は夜中・・・つまり濡れていても気づけないわ。」

「っ・・・探しに行こう。山中に死体とか・・・そのままにしておくわけにはいかねぇ・・・」

綾の声を制し響子が論破する。それを聞いて一番焦ったのは親友の安彦では無く平次だった。

「落ち着けよ平次・・・」

安彦は案外落ち着いており淡々としていた。

「・・・・・・こんな話知ってる?」

突然話し始める響子に全員が注目した。

「昔ね。この山には祟神がいたんですって。力が強くて望んだ相手を殺すことが出来る。・・・それを聞いたある学生が山下にある祠に行ってお供えものを出して願ったそうよ。・・・〇〇を殺して・・・」

「止めろよ!!」
 
平次は響子の話を遮り息を荒げ肩を上下に動かしていた。

「大事な仲間が今行方不明になってるっていうのに・・・そんな不気味な話・・・っ」

「・・・やめる理由なんてないと思うけど。関係してるとしたら・・・この話も踏まえておかなきゃ・・・ね。」

響子は平次を横目に再度スマホを付け時間を確認した。只今の時刻午前3時。

「その祟神は力はとても強いけれど最強な訳では無かった。その祟神が力を発揮出来るのは午前2時。そう。丑三つ時だけ。そして・・・神は」

響子が話していた途中平次は立ち上がり響子の口を塞いだ。

場の空気が変わった。怯えから疑いに。
全員平次に視線を巡らせた。
気づいたのだ。響子が何に気づいたのか。
平次はその視線に気づき動揺し始め響子の口から手を離してしまった。

「先程私は雨が降っていたから濡れているかもしれない。夜だから気づかないかもって言っただけなのに何故あなたは【死体】だと決めつけたのかしら?おかしいわね。まだ死んだと決めつけた訳では無いのに。」

平次の背を汗が垂れる。

「・・・この山のペンションの下見をしたのは貴方だったわね?責任もって見に行くと・・・張り切ってた。付いていくと言った綾を止めたのも貴方だった。危ないかを見に行くんだから止めとけ。・・・って。」


「な、なんだよっそれ。俺が祟神に勇人を殺してくれ。って頼んだとでも言うのか?冗談だろ?大体っ動機だってねぇじゃねぇか!それに死体って言ったのはこの辺の崖は全部深かった・・・生きれるはずがねぇだろ!」

「・・・墓穴掘ったわね。ここら辺には小さく浅い井戸もあるわ。地埋めになっているから見なければ気づかない。つまりその井戸に落ちた可能性だってあるわ。それに滑っただけかもしれない。つまり落ちた可能性さえ無いと言うことよ。」

平次は落胆したように肩を落とし座り込んだ。

「・・・貴方は大人しく黙っていれば良かったのよ。嘘とか言い訳とか向いてないもの。」

「・・・平次・・・?」

怯えつつ綾は平次の肩に手を置いた。
平次は・・・・・・笑っていた。

「・・・ハハッ・・・んだよそれ。名探偵か?響子・・・」

笑いながら涙を零し俯いていた。

「・・・ねぇ。平次・・・どうして勇人を呪ったりしたの・・・?仲良かったじゃない。」

暫く・・・数分間黙っていた平次がふと声を絞り出すようにして話し始めた。

「・・・見たんだよ俺。数週間前に俺の誘いを断った綾と勇人が2人で買い物してるとこ・・・最初は2人を信用してたし尾けたりもしてなかった。でも・・・公園で2人をまた見つけてしまった時・・・綾を・・・隼人が抱き寄せるようにしてるのを見てたんだよ。」

綾は最初記憶にない。というような顔をしていたが思い返したのかハッとした。

「あれは抱き寄せられてたわけじゃないわ!あれは・・・いつもより高いヒールを履いてたから足痛くて転びそうになって・・・」

「・・・いつもより高いヒール?どうして?デートでもないのに?」

落ち着いた口調で巴が問いかけた。

「その前日にお姉ちゃんから貰って・・・早く履いてみたかったのよ。だから・・・」

綾は新しいものに目がなく,手に入れたらすぐ全員に見せていた。それをこのサークル仲間は知っていた為疑う余地は無かった。

「まず,どうして彼氏である平次の誘いを断って勇人と一緒に?」

今まで黙っていた千華がオロオロした様子で綾に聞いた。

「・・・明日。平次誕生日でしょ?前日とかだとこのペンションに居るし行く数日前とかだと準備で忙しくなるだろうからって勇人に好みとか聞いて選んでもらってたの。男の方が好みも同じかなって。」

「・・・なら俺は勘違いで勇人を・・・?じ・・・自首しねぇと・・・勇人は何も悪くなかったのに・・・」

平次は焦りだし携帯を取り出した。アンテナはたっていなかった。

「無駄よ。自首した所で呪いは信じられていないから罪には問われない。自首したらどうやって殺したんだって有ること無いこと言わされるのよ。」

「呪いは・・・裁かれねぇの・・・?」

響子の言葉に平次はビクビクしながら確かめた。

「ええ。呪いなんて信じる人と信じない人が居て信じない人が多いもの。私も昔は後者だったしね。呪いなんて罪に問われない。呪いなんて・・・」

響子は珍しく怒りなどの表情を露わにしていた。響子は普段からあまり表情を変わらすこと無く過ごしていた為,全員驚いていた。
響子は奥歯を噛み締め脳裏に走馬灯のような映像が流れ出した。
あの忌むべき記憶。あの目の前で起きた惨殺。
深呼吸をして落ち着きを取り戻した。

「取り敢えず,明るくなったら探しに行きましょう。貴方なら・・・分かるわよね?何処にいるのか。呪いは場所も決めなければならないから。」

響子は平次に目をやり平次はそれに対して頷いた。

「響子も平次の知ってる呪い知ってたの?」

綾は少し驚き気味に問い掛けた。

「・・・まぁね。母がこの村の出身だから。」

「へぇ・・・。」

綾は納得しその後平次を慰めるように背中に手を当てていた。

夜が明け,早めに朝食をとり平次が指定したという場所へ案内した。
その場所は落ちれば一発で死ねる様な崖で死体を見つけるには崖下へ降りなければならなかった。
3時間程かけて崖下へ降った。しかし,勇人の姿も死体も崖下には無かった。
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