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第148話 まてまて!?
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変に拗《す》ねてしまった占いさんを放っておいて、元一はその古文書を読んでみる。
そこには先日聞かされた難陀《なんだ》の龍の物語について、さらに詳しく書かれた一文があった。
難陀《なんだ》は黄泉の口の門番なり。
かの龍が現れるとき生者は死に、死者は蘇る。
「……なるほどのう、占いさんが言ったのはこのことか」
「だったら、初めからこれを見せてくれればいいじゃない。わざわざこんな占い風にしなくても」
「わたしゃ占い師なんじゃ、雰囲気を作ってどこが悪い?」
「え~~でも、占いさんって陰陽術とかは本物だよね? だったら占いだってホントにできるんでしょ? こんなカンニングしなくても」
「阿呆を言え。物事を見通すなんて術、そうそう使えるもんかいな。あんな高度なものそれこそ僧旻《そうみん》 や吉備真備 、藤原刷雄《ふじわらのよしお》ほどの達人じゃなければ使えんわ」
「いや知らない知らない、誰それ? だったら占いさんってなんで占い師なんて名乗ってるの!?」
「儲かるからに決まっとるじゃろうが。昔はの、ちょっと陰陽の不思議を披露してやっただけでみなワシを信用しての、ザクザク金を落としていったもんよカカカカ」
「……ちょ、ちょっと待つでござる!? だったらこのあいだ僕がなけなしの貯金をはたいて占ってもらったルナたんとの相性占いは」
「若者よ。信じることが幸せの一歩じゃぞ」
ごちゃごちゃ言ってるが、とにかくあの龍が原因で開門揖盗《デモン・ザ・ホール》が使えなくなっていることだけはわかった。
アルテマと元一は相談する。
「……と言うことはやはりあの龍をどうにかしないと開門揖盗《デモン・ザ・ホール》は使えないってことか……」
「じゃな。しかしどうにかとはどうするんじゃ? ……退治するにしても勝てるのか? 無理じゃろう?」
「悔しいがいまの私では無理だな。しかしなにも正面切って戦わなくてもいいだろう?」
「……なるほど、祭りか?」
「そうだ。この書によると龍の悲しみを鎮めるために供犠《くぎ》の祭を開いたとある。その『鎮魂の祭り』とやらを復活させれば大人しくなるんじゃないか?」
「わかった。なら調べてみよう」
そして夕刻――――。
「待て待て待て!! やめろ、早・ま・る・な~~~~!!」
アルテマは、病んだ目をして裏山を登るクロードのズボンに引っかかっていた。
制止も聞かず、目指すは龍脈の祠。
単身駆け上がっていく馬鹿を見つけて、慌てて止めに入ったのだ。
「ええい……離せ離せアルテマ。俺は……俺はなんとしてでも聖王国に帰らねばならんのだ~~~~」
「だからって龍に喰われるなどと正気の沙汰じゃないぞ!?」
「……お前が言ったんだろう……俺たちはもう死んでいるって。死ぬことで世界を渡ったのだと。ならば死のう。死んで故郷に帰ろうではないか」
「だからあれはもしかしたらだって。なんの確証もない思いつきで言ったんだ!!」
「いいや、俺は合ってると思う。お前の推論は正しいぞアルテマ。……さらに言えば失った肉体もこの世界に飛ばされた時と同じく幼児体で復活するとみた。……だったらいい、全然いい。……その程度の代償で世界を渡れるのならば俺は喜んでこの身を生贄に授けよう……うわはははははははは!!」
馬鹿笑いを上げながら一気に坂を駆け上がる。
すぐに祠が見えてきた。
祠に龍はいなかったが、クロードたちが近寄ると輝きだした。
そして先日のように光が集まり、龍の形を作り出す。
「よ~~し、いいぞ!! さあ姿を現すがいい古の龍《ドラゴン》よ!! 我を喰らい、異世界へと導くのだ~~~~~~わはははははははははは」
ゴーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!
姿を現した難陀《なんだ》は何も語らず、いきなりブレスを吐き出した。
「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ~~~~~~~~~~っ!!!!」
直撃を受けるクロード。
アルテマはすんでのところで離れて回避している。
魔素の砲撃に吹き飛ばされたクロードはそのまま彼方へと消えていった。
「クロードーーーーーーーーーーっ!!!!」
「おのれーーーー!! この程度じゃ俺は死なんぞ~~~~~~~~!!」
前回とまったく同じ展開に、けっきょく何がしたかったのか、アルテマは口を開けそのバカを見送った。
残されたアルテマ。
背後から野太い声がかけられる。
背筋を震え上がらせ、ぎこちなく振り返る。
『……ヌシは違うと言ったはずだ……消え去れ……』
ごごごごごごごごごごご……。
圧倒的威圧感で、難陀《なんだ》はアルテマを見下ろした。
「え……と、ま……ま、まて……待て待て」
ブレスがくると思い、尻もちをついて後ずさるアルテマ。
あの馬鹿はわりと平気そうに飛んでいったが、自分にはあれほどの耐久力はない。
元の姿ならまだしも、この華奢な体でその一撃はさすがにキツすぎる。
しかし難陀《なんだ》は威圧しこそすれ、攻撃を仕掛けてくるようすはなかった。
「…………?」
なんとか木の陰に滑り込んで、そこからそっとようすを伺う。
すると難陀《なんだ》のほうもアルテマをジッと見つめ、ようすを伺っていた。
そこには先日聞かされた難陀《なんだ》の龍の物語について、さらに詳しく書かれた一文があった。
難陀《なんだ》は黄泉の口の門番なり。
かの龍が現れるとき生者は死に、死者は蘇る。
「……なるほどのう、占いさんが言ったのはこのことか」
「だったら、初めからこれを見せてくれればいいじゃない。わざわざこんな占い風にしなくても」
「わたしゃ占い師なんじゃ、雰囲気を作ってどこが悪い?」
「え~~でも、占いさんって陰陽術とかは本物だよね? だったら占いだってホントにできるんでしょ? こんなカンニングしなくても」
「阿呆を言え。物事を見通すなんて術、そうそう使えるもんかいな。あんな高度なものそれこそ僧旻《そうみん》 や吉備真備 、藤原刷雄《ふじわらのよしお》ほどの達人じゃなければ使えんわ」
「いや知らない知らない、誰それ? だったら占いさんってなんで占い師なんて名乗ってるの!?」
「儲かるからに決まっとるじゃろうが。昔はの、ちょっと陰陽の不思議を披露してやっただけでみなワシを信用しての、ザクザク金を落としていったもんよカカカカ」
「……ちょ、ちょっと待つでござる!? だったらこのあいだ僕がなけなしの貯金をはたいて占ってもらったルナたんとの相性占いは」
「若者よ。信じることが幸せの一歩じゃぞ」
ごちゃごちゃ言ってるが、とにかくあの龍が原因で開門揖盗《デモン・ザ・ホール》が使えなくなっていることだけはわかった。
アルテマと元一は相談する。
「……と言うことはやはりあの龍をどうにかしないと開門揖盗《デモン・ザ・ホール》は使えないってことか……」
「じゃな。しかしどうにかとはどうするんじゃ? ……退治するにしても勝てるのか? 無理じゃろう?」
「悔しいがいまの私では無理だな。しかしなにも正面切って戦わなくてもいいだろう?」
「……なるほど、祭りか?」
「そうだ。この書によると龍の悲しみを鎮めるために供犠《くぎ》の祭を開いたとある。その『鎮魂の祭り』とやらを復活させれば大人しくなるんじゃないか?」
「わかった。なら調べてみよう」
そして夕刻――――。
「待て待て待て!! やめろ、早・ま・る・な~~~~!!」
アルテマは、病んだ目をして裏山を登るクロードのズボンに引っかかっていた。
制止も聞かず、目指すは龍脈の祠。
単身駆け上がっていく馬鹿を見つけて、慌てて止めに入ったのだ。
「ええい……離せ離せアルテマ。俺は……俺はなんとしてでも聖王国に帰らねばならんのだ~~~~」
「だからって龍に喰われるなどと正気の沙汰じゃないぞ!?」
「……お前が言ったんだろう……俺たちはもう死んでいるって。死ぬことで世界を渡ったのだと。ならば死のう。死んで故郷に帰ろうではないか」
「だからあれはもしかしたらだって。なんの確証もない思いつきで言ったんだ!!」
「いいや、俺は合ってると思う。お前の推論は正しいぞアルテマ。……さらに言えば失った肉体もこの世界に飛ばされた時と同じく幼児体で復活するとみた。……だったらいい、全然いい。……その程度の代償で世界を渡れるのならば俺は喜んでこの身を生贄に授けよう……うわはははははははは!!」
馬鹿笑いを上げながら一気に坂を駆け上がる。
すぐに祠が見えてきた。
祠に龍はいなかったが、クロードたちが近寄ると輝きだした。
そして先日のように光が集まり、龍の形を作り出す。
「よ~~し、いいぞ!! さあ姿を現すがいい古の龍《ドラゴン》よ!! 我を喰らい、異世界へと導くのだ~~~~~~わはははははははははは」
ゴーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!
姿を現した難陀《なんだ》は何も語らず、いきなりブレスを吐き出した。
「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ~~~~~~~~~~っ!!!!」
直撃を受けるクロード。
アルテマはすんでのところで離れて回避している。
魔素の砲撃に吹き飛ばされたクロードはそのまま彼方へと消えていった。
「クロードーーーーーーーーーーっ!!!!」
「おのれーーーー!! この程度じゃ俺は死なんぞ~~~~~~~~!!」
前回とまったく同じ展開に、けっきょく何がしたかったのか、アルテマは口を開けそのバカを見送った。
残されたアルテマ。
背後から野太い声がかけられる。
背筋を震え上がらせ、ぎこちなく振り返る。
『……ヌシは違うと言ったはずだ……消え去れ……』
ごごごごごごごごごごご……。
圧倒的威圧感で、難陀《なんだ》はアルテマを見下ろした。
「え……と、ま……ま、まて……待て待て」
ブレスがくると思い、尻もちをついて後ずさるアルテマ。
あの馬鹿はわりと平気そうに飛んでいったが、自分にはあれほどの耐久力はない。
元の姿ならまだしも、この華奢な体でその一撃はさすがにキツすぎる。
しかし難陀《なんだ》は威圧しこそすれ、攻撃を仕掛けてくるようすはなかった。
「…………?」
なんとか木の陰に滑り込んで、そこからそっとようすを伺う。
すると難陀《なんだ》のほうもアルテマをジッと見つめ、ようすを伺っていた。
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