【完結】わたしの大事な従姉妹を泣かしたのですから、覚悟してくださいませ

彩華(あやはな)

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21.レイチェル過去

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 毎日が楽しかった。
 ちやほやしてくれる。勉強より楽しかった。
 あたしを巡っての争いも起こることもあったが、涙目で『やめて』と言えば鼻の下を伸ばして謝りながら争いは収まる。

 見ていてドキドキした。飽きることはなかった。
 以前本で読んだような数人の男性が一人の女性を巡って争う恋愛ものの小説の世界がここに、現実にあるのだ。
 信じられない。
 あたしは小説の主人公みたいだわ。

 でも、少し物足りなかった。
 だって、あたしのではないもの。がない感じがしたからだ。


 そんな時素敵な男性に出会った。サージャス国の留学生のファルス様。
 今まで出会った方よりイケメン。シャンス国では見られないと色合いを纏い、背が高くて凛々しい佇まい。一目で恋に落ちてしまった。

 あたしは彼に近づいた。
 初めはそっけなかった。

 それが面白くなかった。
 毎月薬を飲んでいるのに・・・、なんであたしを見てくれないのだろう。

 どうしても振り向いて欲しかった。

 自国に婚約者がいるとは聞いていたが、あたしを見て欲しかった。
 
 どうしても・・・。


 あたしは薬を飲む回数を半月にした。

 あの男にはあれ以来会っていない。代わりにの店主があたしに薬を売ってくれていた。
 店主は好意的に薬を売ってくれるので買いやすかった。まとめて売ってくれる。

 だから・・・だから、増やした。

 もっともっとあたしを見てよ。
 あたしに気づいて。
 あたしに優しくして!!

 彼はあたしを見てくれるようになった。
 あぁっ・・・やった!!

 あたしに声をかけてくれた。優しく触れてくれる。
 幸せだ。
 最高に幸せだ。

 この幸せを逃したくない!


 なのに・・・。
 なのに、あたしの留学が決まった。

 それもいきなり『してこい』だというのだ?

 なんなの?

 父も兄もらしい。
 姉たちが憎しみのこもった目でみてきた。

 何よ!
 意味わかんないわ。
 やっぱりこいつら、あたしが妬ましいからこんなことするのね。

 意味不明なことばかり言ってきてわけがわからない。

 憎い!

 どうしてあたしの幸せを奪おうとするのよ。

 いいわよ!
 お望み通りにしてあげるわ。

 今のあたしは魅力ある女性だもの。
 誰もがあたしを振り返る。あたしを見てくれる。あんたたちはそれを羨ましがればいいんだわ!!



 あたしは帝国へと留学することになった。

 言葉がなかなか通じない。

 でも・・・あたしにはがある。
 やっていけるわ。

 そう思っていた。

 だが、思っていたのと違う。

 後見人である男性はあたしに優しくしてくれた。でも、他は・・・?

 屋敷の使用人たちは男女問わずあたしを見ると眉を顰める。なんで?

 薬が足らないの?

 薬を増やした。

 店主に手紙を書いて送ってもらった。

 薬・・・、薬を飲まなきゃ。
 あたしがあたしでなくなる。

 不安が押し寄せる。
 どうしよう・・・。

 不安に思いながら、帝国の学園に行く。

 そんな中、すごいカッコいい人に出会った。カルロ様。アゼルア国の公爵令息だという。

 帝国出身者はみんなあたしを遠巻きに見ている。

 初めはそれが不安だったが、しばらくするといつものようにあたしの元に群がってきた。

 良かった。

 ファルス様はあたしを追いかけてきてくれた。
 二人の王子様がいるのね。

 クラスの女子があたしに忠告してきた。

 『婚約者がいる方もおられますので距離をお考えになってください』と。

 だからなによ。

 彼らがあたしに近寄ってくるのだから、あたしの所為じゃないわ。
 いいじゃない。

 目線が鬱陶しい。
 嫉妬に狂った女の視線ほど醜いものはないわ。

 ・・・そうね。

 また・・・、誰かを嵌めてあげよう。
 そうすれば、あたしの見方も変わるだろうし・・・。
 誰に・・・。

 
 そんなことを考えているとカルロ様の婚約者のことを知った。まさか、ファルス様の元婚約者だってことも。

 なにそれ!?
 そんな偶然あるの?
 笑えるわ。

 どれだけダメ女なの!
 笑えてくるわ。

 そうだ。それならその女にしましょう。

 男に見向きもされなくなった哀れな女。醜い嫉妬であたしを虐めている。どんなに高貴な女性でも嫉妬するんだ。信用もガタ落ちするだろう。すごくいいストーリーじゃない。

 だから、取り巻きの男たちに泣いて訴えた。
 一番ファルス様とカルロ様が怒ってくれた。

 あたしのために怒る姿が嬉しかった。

 最高に気持ちよかった。




 なのに・・・、なんだろう?

 目の前にいる女は?

 どうして、笑っているの?
 

 

 
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