【完結】わたしの大事な従姉妹を泣かしたのですから、覚悟してくださいませ

彩華(あやはな)

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35.ミシェル視点

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 パーティー当日、私はダンス会場に向かった。
 上位貴族専用の入り口へと向かうとロディク殿下が迎えてくれた。

「綺麗だね。見立てた甲斐がある」

 うっとりと言ってくる。
 つい、顔を背けた。
 こんな真っ正面から賛辞を受けたことがないので、どう表情をすれば良いのかわからない。
 
「手を取っていただけますか?」
 
 すっと差し出された殿下の手をおずおずと取った時、背後から声がした。

「セシリア?」

 振り向くと、カルロがアフタル殿下とシェリナ様の背後に立っている。
 今日の従者としているのだろう。
 何事もなければ、セイラと共に入場できたはずだ。

「アフタル殿下。まだ影響がありますの?」

 私の問いにアフタル殿下は少し小さく息を吐いた。

「いや、正気だ。だが、後遺症があるようで思考判断が鈍いようだな。まだ真実が受けいられていないのか。
 今日をもって私の従者の任は解くことになっている。以後わが国に帰り身分剥奪にて平民になる予定だ」

 青い顔のカルロはよろよろとわたしの前に進み出て手を伸ばしてきた。

「セイラ。許して欲しい。僕が間違っていた。だからもう一度・・・」
「何を言ってますの?もう、遅いのですわ。それに私に言われてもどうしようもありませんわ」
「えっ・・・」

 カルロが私の声を聞いてさっと、血の気が引き真っ白な顔で固まった。

 ーやっと気がついたのかしら?

 そんな彼を見ながら私は言葉を並べる。

「だから、何もかも遅いのよ。すべてあなたの心が弱かったから。これはあなた自身が起こしたこと。今あなたができることは真実を受け入れて、懸命に一人で生きていくだけ」

「セイラじゃぁ・・・」

 カルロは涙を流し出した。

 私をセイラと勘違いしていたなら、ショックだったのかもしれない。
 
「セイラはどこにいるのですか?セイラに会いたい。アフタル殿下、お願いです。セイラに、会わせてください」

 跪き、子供のように泣く。

「この状況でまだ、会えると思っているの?声をかけないという約束をして、アフタル殿下の従者にしたのに?セイラとミシェルを間違えたのに?」

 冷たいシェリル様の言葉。

 隣のロディク殿下もゴミでも落ちているかのような反応。
 誰も慰めも同情の声もかけない。
 下を向き震えるカルロ。

「・・・はぁ、ついてくるだけだ。以後は何があっても口を開くな」

 しばらく無言のなか、アフタル殿下がため息混じりで声をかける。

「では、行きましょうか」

 私はそれだけ言った。

 そうもしなければ、進まないだろう。


 気を取り直して、私たちは会場に入った。

 煌びやかな会場。
 すでに多くの参加者がダンスや食事を楽しんでいるようだった。

 そんな中、目を引く二人を見つけた。
 この場には不似合いな色と形。ピンクのリボンと白色のフリルを使いすぎるほど使ったドレスをきたレイチェル。
 今やはりなのは大人可愛いというのをわかっているのだろうか?

 その隣にいるのは勿論ファルス。彼もまた、スパンコールでも縫い付けているのだろうかと思うほど輝いている。
 レイチェルに付き合うことで、貴族的スタイルを忘れたのかもしれない。

 私をエスコートしている手が小刻みに震えている。ロディク殿下を見れば、爆笑したいのを必死で堪えているようだった。

「大丈夫ですか?」
「む、り・・・。ぷっ、くくくっ」
「抑えてください」

 小さな声で言っていると、どぎつい二人が私たちの元に近づいてきた。
 そしてファルスが指を指して、私に向かって叫んできたのだ。

「アバスレ女が!不敬だろう。お前はシャーサス国のロディク殿下をたぶらかしたのか!!」

 
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